18 精霊と覚悟
それから数日間マリクさんの元で魔法の修行をした。
「いやー。2人とも早いのぅ。もう基本的な魔法なら問題ないのぅ。」
マリクさんに教わったことで、
2人ともいくつかの魔法を使えるようになった。
俺は…
ウインドカッター
言葉通り風の刃を飛ばす。
ウインドウォール
風の壁を出して飛んでくるものを防ぐ。
イメージはとてつもなく強いエアカーテン。
フライ
風の力で宙に浮く。あくまで浮くだけと言った所。
飛び回るようなことは出来ない。
マリクさんはそのうち出来るようになるとは言われたけれど…。コントロールが苦手なんだよなぁ。
トルネード
練習初日に出したアレ。習得出来たと言っていいのか…。まぁ多分やろうと思えばまた出せる。
ルーナさんの視線が怖くて練習しなかったけど。
ハルの方は…
ファイヤーボール
文字通り火の玉を飛ばす。
込める魔力の量で大きさ威力が変わる。
この子コントロールもお上手でした。
ファイヤーアロー
細かい火の矢的なものを飛ばす。
ファイヤーボールより威力は弱いけど広範囲。
ショットガン的な感じかな。
ハルはこの2つをとりあえず完璧にしてた。
他にもイメージはあったようだけど、
マリクさん、ルーナさんから室内で火の魔法の上位なものは危険だからと。
この先旅立ってからでもいいだろうと。この2つでもハルは魔力のコントロールがとても上手く色々と応用できていた。
きっと上位の魔法も簡単に出来そうだな。
…天才なんだな。こんなに可愛いのに。
「さて。これで魔力、魔法については教えることはないのぅ。後は精霊について…かのぅ。」
「精霊について?」
「うむ。この世界には多数の精霊がおる。ワシのような魔力の精霊…は珍しいが、火の精霊、水の精霊…などなどな。」
精霊の話は聞いていたし、目の前にいるし。だけどなんか異世界感が上がるな。ファンタジー!的な。
「それでその精霊についてって言うのは?」
「精霊は中々人間の前に姿を現したりするのを苦手にしてる者が多い。だが信頼関係を築くことが出来れば、その力を貸して貰うことができる。」
「力を借りる?」
「うむ。2人の適性はそれぞれ風と火になるが、他の属性の精霊の力を借りれば適性がない属性も操りやすくなるのぅ。もちろん今でも適性のない属性を使うことはできなくはないがのぅ。ただコントロールが難しくそもそもイメージが上手くできなくて発動しない可能性が高いのぅ。発動しないだけなら良いが暴走の恐れもあるのぅ。」
なるほど。俺は絶対風以外使ってはダメなやつだな。
「その精霊さん達と仲良くなるにはどうしたらいいのー?」
とハルが聞く。
「そーだのぅ。これをすれば!と言うのは正直ないのぅ。そもそも出会えるかどうか。姿を現してくれるかどうかという所だからのぅ。ただ、ハルちゃんの優しい魔力に惹かれて出てくる可能性はあるかもしれんのぅ。」
「そういうものなのか?」
「精霊は言ってみれば魔力そのもの。魔力生命体とも言われるのぅ。なので魔力に惹かれる可能性は高いのぅ。」
「マリクさんもそうなのか?」
「ワシはここでルーナと共に居るのでな。惹かれる惹かれないを別にしてルーナから頼まれたら魔力、魔法の手ほどきをするのだよ。」
「チュートリアル要員ってことか。」
「チュートリアル?」
「あぁすまん。こっちの話だ。」
魔力の好き嫌いで対応されてたら俺は教えて貰えなかったかもな。チュートリアル要員で助かったな。
「…ユウキ殿。」
いきなりマリクさんが神妙な顔つきになる。
「なんだ?」
「ユウキ殿の役割について少し話をしたい。…2人の方がよろしいと思うのだか。」
話し方まで変わるほど真面目な感じか。
「わかった。でも部屋変えると多分あのお姫様が怒るから、この部屋の中で少し離れようか。」
「それで構わぬ。」
「ハル、少しマリクさんと話してくるな。」
「はーい。」
ハルに一応断りを入れ部屋の隅の方へ移動する。
「念の為…ほい。」
マリクさんと俺の2人の外側にうっすらと何か光の壁のようなものが現れる。…ラップみたいだな。
「これは?」
「音をある程度遮断する魔法だのぅ。その名もミュートラップだのぅ。」
…ラップだった。
「それで話って言うのは?」
「うむ。ワシは魔力の精霊ということもあり、魔力を見ることができる。ハルちゃんの魔力が優しいのも見ることが出来るわけだのぅ。」
「魔力の精霊だもんな。それぐらいは簡単か。」
「うむ。そして話というのはな、ユウキ殿。ユウキ殿の役割について詳しく聞く気はない。だがユウキ殿の魔力が…な。」
なるほど。何となく言いたいことがわかったな。
「気にしないで言ってくれ。大丈夫だ。」
「…うむ。今まで見た中でここまでトゲトゲしいのを見たことがないのだ。」
そりゃ世界を破滅させるモノだからな。
「そうか。そのマリクさんの感覚は多分間違ってないな。」
「そうか…。まぁだから何だと言うわけでは無いのだが…。ユウキ殿の役割はわからん。聞く気もない。だが、あまりにも…。」
「トゲトゲしいというよりもっとって感じか?」
「うむ。正直に言うと…な。」
魔力の精霊が言うほどなんだな。
「ユウキ殿と話していてもそんな禍々しい感じは無い。なので戸惑っているのが本音…だのう。」
あ、口調戻した。これ多分わざとそれっぽい話し方にしてるな?突っ込まないほうが…良さそうだな。
「それについて俺の役割を話すことはできない。ルーナさんとも約束してるしな。ただ一つだけ約束できることはある。」
「約束?それはいったい?」
「俺はハルの味方でどこまで行ってもハルの役割を終わらせて元の世界へ帰す。それだけは絶対だ。」
「なるほど。ハルちゃんは世界を救う事で帰れる…か。ユウキ殿の役割は聞かぬが、それは一緒に帰れるものなのか?あの子は一緒でないと怒るのではないか?」
痛いところをピンポイントでついてくるな…。
「わからん。いや正直一緒には帰れないと思う。俺の役割とハルの役割は違いすぎる。だけど、いやだからこそハルの役割が絶対だ。この世界を救う。それだけだ。」
「ふむ。わかった。ユウキ殿の決意は固く強いものなのだな。であればその言葉信じよう。魔力の禍々しさはワシの胸に秘めておこう。」
「ありがとう。マリクさん。」
「気にするでない。ただ何となくだが、ユウキ殿の道は辛い道になりそうな予感がするのぅ。」
何となくで多分勘づいてるんだろうなこの人…いやこの精霊は。
「あぁ。それも覚悟の上だよ。さて、2人のところに戻ろうか。」
「うむ。そうだのぅ。」




