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戦国最弱・小田家、外資コンサルがV字回復させます――九度落城でも倒産しない会社の作り方【完結済/続編有/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第4章:FIREへのエグジット

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第31話:江戸幕府の「顧問(高家)」内定 ―― 領主から「文化の守護者」への業態転換に成功。

1. ブラックCEOからの「再雇用」通知


江戸・日本橋。


建設中の小田邸の広間で、政貞は目の前の書状を二度見し、三度見した。


それは、天下人・豊臣秀吉からの直筆(あるいは筆頭右筆の手によるもの)の「辞令」であった。


『小田氏治の類まれなる叡智、並びに菅谷政貞の算術の才、捨て置くには忍びない。来るべき「唐入り」の兵站総督として、京への出頭を命ず』


「……笑えない。全く笑えないぞ、これは」


政貞は、こめかみを押さえた。


ようやく領主という「無限責任」を負う立場を脱し、顧問という名の「不労所得層」へエグジットしたばかりだというのに、秀吉は彼らを「専門職の高度プロフェッショナル」として、再雇用のリストに載せてきたのだ。


しかも、そのプロジェクトは「唐入り」。


歴史上、最もコストパフォーマンスが悪く、多くの大名を破滅に追い込んだ「超大型の不採算事業」である。


「政貞、京へ行くのか? 京には美味い団子があると聞くが、わしは江戸の釣りに慣れてきたところなんだ。今さら長旅は、腰にくるぞ」


氏治が、新調した高級な絹の直垂(もちろん顧問料で購入したもの)を揺らしながら、暢気に欠伸をしている。


「殿、団子どころの話ではありません。……一度京へ行けば、秀吉公に文字通り『使い潰され』ます。兵糧の計算、船の手配、異国の地のロジスティクス……。そんな過酷な労働に戻ったら、我々のFIRE計画は崩壊です」


政貞は、冷徹な判断を下した。


「……秀吉公の命令を真正面から断れば『不敬』。だが、従えば『過労死』。……ここは、契約の『書き換え』を仕掛けるしかありません」



2. 「二重契約」スキームの構築


翌日。


政貞は徳川家康の居城となった江戸城(旧・太田道灌築城)へと急いだ。


秀吉の命令を覆すには、秀吉と同等の「大株主」である家康の力を借りるのが最も効率的だからだ。


「……家康殿。折り入って、ご相談がございます。……例の『江戸・水利都市化計画』の進捗についてですが、私と殿が京へ召喚されることになり、すべてがストップする恐れが出てまいりました」


家康は、政貞が持参した江戸の将来図――神田山を削り、日比谷入江を埋め立てる壮大な設計図を眺め、深く溜息をついた。


家康にとっても、政貞の知恵は「関東経営」という困難なミッションにおける、唯一の羅針盤である。


「政貞殿、それは困る。……秀吉公の『唐入り』は天下の公事だが、この江戸が立ち行かぬことには、徳川は関白殿下をお支えする基盤を失う。……だが、関白殿下の辞令を、私の一存で止めるわけにはいかぬ」


「……そこで、ご提案です。……『小田家はすでに、徳川家の専属顧問として長期契約を結んでいる』という事実にしていただけないでしょうか。……いわゆる『先約優先』の論理です」


政貞は、現代の「業務委託契約」の概念を、家康に説いた。


小田家は、徳川家の「関東開発プロジェクト」のPMOプロジェクト・マネジメント・オフィスとして、二十四時間体制で稼働している。


その貴重な人材を京へ引き抜くことは、徳川家、ひいては豊臣政権全体の「関東安定化」という重要KPIを阻害する行為である――と、秀吉に上奏してもらうのだ。


「……なるほど。小田家を、徳川の『重要な子会社』として位置付け、秀吉公には『外注費(顧問料)』を納めることで納得させる、というわけか」


「左様です。……実務は江戸で行い、京には『報告書』だけを送る。……いわゆる『リモートワーク(遠隔業務)』の形を認めさせるのです」



3. 文化の守護者への「業態転換」


政貞の戦略は、単なる労働拒否ではない。


彼は、氏治のキャラクターを最大限に活用した「新しいブランド戦略」を秀吉に提示した。


一ヶ月後。


京・聚楽第。


政貞は、家康からの推薦状を携え、再び秀吉の前に立っていた。


「……殿下。……小田氏治は、戦の才には欠けますが、九度も城を奪われながら生き抜いた『生存の化身』にございます。……そんな縁起の良い男を、殺伐とした戦場(朝鮮)へ送るなど、縁起が悪すぎるとは思いませんか?」


秀吉は、不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「……へ理屈を。……ならば、氏治をどこで使うというのだ」


「……『文化の守護者』としてです。……殿下、天下を統一された今、次に必要なのは『権威』にございます。……足利将軍家に繋がり、関東の古き礼法を正しく継承する小田家を、殿下の側近として『高家(格式高い家柄)』に列し、朝廷や諸大名への儀礼を司らせるのです。……いわば、豊臣政権の『プロトコル(典礼)部門』のトップです」


政貞は、氏治を「軍事アセット」から「文化アセット」へと、完全に再定義リブランディングしてみせた。


文化の番人であれば、前線へ行く必要はない。


京や江戸の屋敷で、古記録を調べ、優雅に茶会を催していればいい。


それは秀吉にとっても、自身の政権に「伝統」という箔を付ける、極めて安い投資コストに思えた。


「……氏治に、古儀を教えさせるだと? ……あの阿呆に、そんなことができるのか?」


「……殿は、阿呆ゆえに、誰に対しても物怖じせず、古き良き伝統を『そのまま』保存しております。……その純粋さこそが、飾らない権威を生むのです」


秀吉は、しばらく政貞の顔をじっと見ていたが、やがて呆れたように笑い出した。


「……わかった、わかった。……お前の勝ちだ、政貞。……氏治を『高家』に任ずる。……江戸に残り、家康の街造りを手伝いながら、わしが必要な時だけ古儀の相談に乗れ。……その代わり、江戸の開発状況、逐一わしにも報告しろよ」



4. FIREの最終防衛線、突破


聚楽第の門をくぐり抜けた時、政貞は思わず膝を突きそうになった。


「……勝った。……いや、売り抜けた」


それは、小田家という組織が、戦国大名という「労働集約型の産業」から、高家・顧問という「知識集約型の産業」へ、完全に業態転換を完了させた瞬間だった。


江戸へ戻る道中。


政貞は氏治に、これからの生活について語った。


「……殿。……これからは、幕府や朝廷から『教えてください』と頭を下げられる立場です。……我々はもう、誰からも奪われません。……江戸の街造りという、一生終わらない『楽しい趣味』を仕事にしながら、配当で暮らしていく。……これが、真の顧問(高家)の姿です」


「……ほう。それなら、わしが釣ったハゼの捌き方も、古儀として教えればよいのだな?」


「……ハハッ、それも良いかもしれませんね。……殿が教えれば、それが新しい『伝統』になりますから」



5. 江戸の「顧問」としての第一歩


江戸へ帰還した小田一行を、本多正信らが驚きを持って迎えた。


「……まさか、本当に関白殿下を説得して戻ってくるとは。……政貞殿、貴殿は一体何者だ」


「……ただの、効率を愛するコンサルタントですよ。……さて、正信殿。……お約束通り、江戸の『地価上昇スキーム』の話をしましょうか。……小田家はこの日本橋の土地を基点に、新たな経済圏を構築します」


政貞は、自身の屋敷の図面を広げた。


そこには、戦うための土塁や堀はない。


代わりに、多くの商人が集まる「サロン」と、最新の情報を収集するための「図書室」が、広大な敷地の中に贅沢に配置されていた。


「……ここが、我々のFIRE(安息)の城です」


政貞は、氏治とともに、造成が進む江戸の街を一望した。


かつての土浦城で、九度の落城に怯えていた日々は、もう遠い過去のことだ。


これからは、自分たちが作った「システム」が、寝ている間も富と安全を生み出してくれる。



6. 見えない「影」の接近


数ヶ月後。


江戸の生活が軌道に乗り始めたある秋の夕暮れ。


政貞は、屋敷の庭で氏治と「投壺とうこ」に興じていた。


離れた場所から細長い矢を壺へ投げ入れる、古来の雅な遊戯である。


「おお、入った! ……見ろ政貞! わしの勝ちだ!」


「……殿、投げる前に壺の近くまで歩いていくのは反則です」


「細かいことを言うな。勝ちは勝ちだ」


氏治が子供のように笑う。


平和そのものの光景。


だが、門番が、見慣れぬ身なりの男を連れてきた。


男は、政貞の顔を見るなり、地べたに這いつくばって声を殺して泣いた。


「……お、お探しいたしました。……菅谷政貞様。……私は、常陸の……かつて小田家が統治していた地の、名もなき百姓にございます」


政貞は、眉をひそめた。


「……土浦の者か。……小田家はもう土地を離れた。……何か困りごとがあるなら、今の領主に――」


「……違うのです! ……今の領主(秀吉の代官)の下で、あまりの増税と検地の厳しさに、村が全滅しかけております! ……殿様! 氏治様! ……どうか、もう一度、我々の『経営』を助けてはいただけませぬか! ……このままでは、冬を越せませぬ!」


氏治が、手にしていた矢を止め、悲しそうな顔で百姓を見つめる。


政貞の心臓が、ドクンと跳ねた。


(……まずい。……せっかく『エグジット』したのに、これは……『元クライアントからの、深刻なクレームと再建依頼』だ。……しかも、人道的な感情という、ロジックでは斬り捨てられない最悪のコストを伴う……!)


百姓の背後には、彼らを見守る、不穏な影があった。


さて、まず最初にやるべきことは――。


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第31話・ステータス報告


・ステータス:

豊臣政権下での「高家(典礼顧問)」の地位を確立。江戸残留に成功。


・主要成果:

「唐入り」への実戦動員を完全回避。徳川・豊臣との「二重顧問契約」締結。


・KPI:

自由時間:80%確保。社会的信用:最高ランク(AAA)。旧領地からの期待値:オーバーフロー(危険)。


・政貞のメモ:


「権威という名の『無形資産』を築き上げることで、肉体労働(戦)からの脱却に成功した。……だが、エグジットしたはずの『過去の資産(旧領地)』から、予期せぬ負債(救援要請)が舞い込んできた。……無視すれば、殿の『愛されブランド』が傷つく。……かといって、今の立場を捨てて助けに行けば、FIREは台無しだ。……このジレンマ、どう解決する……?」


【次号:第32話:最強の事業承継 ―― 政貞から次代への、ロジックに基づいた権限委譲。】


―― 旧領地の危機。政貞は、自分が動くのではなく、自分が作った「システムと人材」を現地へ派遣する、初の『フランチャイズ型』の救済スキームを考案する。自らの手を汚さず、ブランドを守る、最強の事業承継が今始まる!

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


突然ですが、作者からコンサル的お願いがございます。


「ブックマーク・評価」という施策を打てていない読者様、費用対効果は最高です。ワンクリック・5秒・無料。これ以上のROIはありません。


次話の更新速度というKPIに直結しますので、何卒ご支援のほどよろしくお願いいたします!


また、歴史ものである本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も書いており、戦記物としての熱量はそのままに、ファンタジーならではの逆転劇を描いています。


『魔剣に選ばれた王女 〜亡国から始まる反逆の戦記〜』

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n9418lx/

王女セリスと魔剣ノイエジールの戦いも、あわせて応援いただけると嬉しいです!


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