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13杯目 冬を告げる紅茶 ②

 鈴は自分のティーカップをじっくりと観察しながら手に取る。湾曲した持ち手に帯びるじんわりとした熱が、かじかんだ手を温めてくれる。

 それからティーカップをゆっくりと口元に運び、クリスマスティーの香りを楽しんだ。

 オレンジピールやジンジャーの豊かな香りが鼻をくすぐり、一口飲むとまろやかなコクと、シナモンやクローブの甘さがほのかに感じられた。

 思わずホッと息が溢れる。冬の寒さを忘れさせてくれるような一杯だ。

「なんだか身体の中から温めてくれる感じがするよ」

 鈴はまるで冬の寒さを忘れたかのように、惚けた表情で紅茶を楽しんでいた。

「ブレンドしたスパイスには、身体を温める効果がありますからね。寒い日にぴったりなんです」

 ミアは目を細めて、微笑みながら言った。

「毎年、冬になると各ブランドが独自のブレンドで味や香りにこだわったクリスマスティーを販売しているんです」

 それから和美もティーカップを手に取り、一口飲んで微笑んだ。

「いつもの紅茶よりも甘さが感じられて美味しいわ。まるでお菓子を食べている気分になるわね」

 仲睦まじく紅茶を楽しむ様子は、まさしく祖母と孫であり、つい数週間前に再会したとは思えないほど、すっかりと打ち解けた様子だった。


「最近は、2人で会うことが多いんですか?」

 ミアは耳を傾けて、興味深く訊ねる。 

「うん。よく学校終わりに行くようになったの。今は冬休みだから学校がないけれど、朝からおばあちゃんの家まで行くのが習慣になってるの」

 鈴は嬉しそうに話し、和美も満足そうに頷いた。

「遠いのにわざわざバスで来てくれてね」

 和美の家は何処かは分からないが、佐藤さんが営む『匠海茶園』が近いと言っていたから、ここからはかなり遠いだろう。

 小学生がたった1人で移動するには、難しい距離だ。

「それはとても大変ですね」

 ミアがそう言うと、鈴はすぐに首を横に振った。

「ううん。おばあちゃんの作ってくれるお菓子と紅茶を飲んで、一緒に過ごす時間がすごく好きだから平気だよ」

 和美の顔に、嬉しそうな表情が浮かぶ。

「そう言ってくれて嬉しいわ。私も鈴ちゃんが来るのを楽しみにしているのよ」

 鈴は和美の言葉を聞き、顔を輝かせた。

「いつかおばあちゃんと一緒に住みたいな。サンタさんは、もう一緒に住んでいると思ってくれているよ」

「うん!」

 鈴は元気よく頷き、さらに話し始めた。

「このティーセットのプレゼントは、サンタさんがおばあちゃんの家に届けてくれたんだよ。今朝、おばあちゃんからもらったんだ」

「なるほど…」

ミアは驚きながらも納得した様子で頷いた。

「サンタさんはずいぶんと粋なことをしますね」

 そして、感心したように喉を鳴らして、深く頷いた。

 鈴がプレゼントを貰えなかった理由は、決して悪い子だったわけではないと、ミアには分かっていた。鈴の日常からすぐにそのことは伝わってくる。 だとすれば、お母さんが渡してくれなかったのだろう。

 それならおばあちゃんの元へ届けたほうが、鈴の手に渡ると考えたのだ。ミアはその合理的な判断に感心した。

「世界中の子供たちにプレゼントを届けるだけでなく、こんな気配りもできるなんて、サンタさんは素晴らしい人物ですね」

ミアは尊敬の念を込めて、サンタさんを賞賛する声を漏らした。


「サンタさんのトナカイたちがとっても賢いんだよ。すごい速さで空を飛べるし、ちゃんと道を覚えていて、迷わずに行けるからね」

ミアは、うれしそうに続けた。

「なるほど、すごい動物がいるんですね」

 鈴からトナカイの話を聞いたミアは、ますますその物語に引き込まれていった。彼らは寒い冬の夜、サンタクロースのソリを引いて、世界中の子どもたちにプレゼントを届けるという。その献身的な働きぶりに、ミアは深く感銘を受けていた。


 しばらくして、クリスマスティーを楽しんだ後、和美は優しく鈴に問いかけた。

「鈴ちゃん、来年も一緒にクリスマスを過ごせるかしら?」

 鈴は、満面の笑みを浮かべ、ティーカップを手に取りながら答えた。

「もちろんだよ、おばあちゃん」

 鈴は優しい声でそう言うと、和美に笑顔を向けた。

 和美の顔にも、安心と喜びの表情が広がった。

 2人の温かい会話はクリスマスティーがなくなるまで続いた。

 窓の外では雪が静かに降り積もり、世界を柔らかく包み込んでいた。

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