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水玉さんの話、やっと終わる

「えーと、ではですね、どうとくの教科書の残りの説明をさせてください。


 【幸せポイント】の話は半分くらいまでで、後半は【幸せポイント】の考え方を踏まえて、『相手の気持ちを想像しよう』というタイトルで、一緒に遊んでいる相手だったり、一緒に生活している親や兄弟だったり、結婚して一緒に生活を始めた相手だったり、生まれた赤ちゃんだったり、とにかく相手の気持ちを考えようという流れになっています。


「親しき仲にも礼儀あり」という諺もあります。身近な人にこそ、気遣いは必要なのです。


 で、この赤ちゃんからの流れで、赤ちゃんを育てるのは物凄く大変ですよという話や、どう接するのがいいかなどが沢山書かれています。


 まるで育児書のようなんですが、何故どうとくで育児を取り上げたかというと、今までこういう学校全体で育児について、育児マニュアル的な物を学ぶ機会はありませんでした。


 何というか、専門的に自分の意志で学ぶ人以外は、基本的に母性本能で何とかなるでしょうみたいな、皆それぞれ自由に考えてやってくださいっていうスタンスで放任されている状態です。


 昔なら3世代同居が当たり前で、どういうふうにするといいよとか教えてくれるおばあちゃんがいたりしましたが、今は核家族が当たり前。教えてくれる存在がいないのが普通です。


 だから、子供が生まれる人は、慌てて育児書で各自調べてくださいという感じです。


 しかし、どんなに調べたところで、大体の人が物心ついた頃から赤ちゃんと接したことすら無い状態で、突然生まれたばかりの赤ちゃんの面倒を見るという最難関ミッションに突入することになります。一人でも大変ですが、双子や三つ子だったりしたら、もう想像を絶する大変さでしょう。


 赤ちゃんが生まれるということは、もちろん赤ちゃんを産むまでも大変ですが、産んだ後も更に大変だと予め心の準備をしておけば、何も知らなかった場合と比べてぜんぜん違ってくると思うのです。

 

 とにかく、ものすごく大変なのが当たり前ということを、子供の頃から知識として知ってもらうことで、将来の虐待や育児放棄から子供たちを守りたいと考えています。


 虐待する親を処罰し、刑を重くするだけでは、何も変わりません。かえって、世間に隠して、分からない様に悪質な虐待が繰り返されるだけだと思うのです。そうならないためには、まず、教育です。そのための学校なのです。


 難しい方程式を教えるだけではなく、人として、将来のために知らなくてはならないことをキチンと教えておいてあげるのが、大人の責任だと思います。


 そして、自分が育てる立場の場合だけでなく、赤ちゃんを見かけたらその子を連れているお父さんお母さんは今大変だなあと、皆が自然に気遣ってあげられる社会になるといいなあと思うんです。


 泣いている声がうるさいとか、子供が外で遊んでいる声がうるさいとか、そういう意見を聞くとがっかりします。そう言う人にだって、子供の頃はあったはずだし、そうやって泣いていたはずなのですから。


 子供は国の宝です。子供が元気でいてくれれば、その国は元気に発展するのです。


 そのためにも、全ての子供たちに自信に満ちて元気にのびのび育って欲しいと願っています。


 というわけで、ここでは赤ちゃんに対する思いやりと育てるという責任を、子供の頃から頭の片隅にしっかり残しておいて貰えたらいいなあと思っています。


 そして中学になったらもっと詳しく細かく育児について、ああ、もちろん性教育と一緒に学んで貰います。自分が親になるという責任について、生活面と金銭面とを現実的に解説し、しっかり理解してもらいたいですね。


 妊娠についても、母体の負担の重さや、中絶の残酷さについても、男女ともに学んでもらうことで、それぞれが自分の行動に責任をとるということについて、そして、性交そのものについても、しっかり真剣に考えて貰いたいと思います。


 個人的には、生涯のパートナーはお互い一人が理想と考えていますが、その辺は多様な考えがあるので、私がどうこう言えるものでもないかとは思いつつ、そのうち意見を言える機会があったら嬉しいなあと思います。


 あとですね、もし自分が子供を育てることになったらどうしたらいいかな、とか先に考えておくのも面白いですよ。私もよく20歳前くらいの頃など、まっさらな赤ちゃんの脳みそに一から世の中の全てを教えるにはどうしたら良いのかと真剣に悩んだものです。


 とにかく自分の知っている限り世の中の基本からしっかり教えようとか、鼻息も荒く考えていました。その頃ってまだ誰かとお付き合いとか、したことすら無かったんですけどね。はっはっは。


 えーと、そんなもんですかね。


 長い時間のお付き合い、どうも有難うございました。今回を以って、私がこうして出しゃばって話をするという機会は最後になります。


 まあ、何かとんでもない事件があったりした場合は責任者として引っ張り出されることもあるかもしれませんが、それが無いことを願っていますので、たぶん、最後です。


 まあ、私の言いたいことは、だいたいこの『新・どうとく』の教科書にぶつけさせて頂きましたし、今後も加筆、修正を続ける予定ですので、皆さんがこれをしっかり読んでくれると、私はとても嬉しいです。


 では、皆さんの今後の成長と発展を大いに期待しています。ご清聴、有難うございました」


 水玉さんは、深々と頭を下げ、そのまま画面は真っ暗になった。今回の水玉さんの話は、マジ長かった。





 その後、たっぷり時間を取って書かされた〈ひとりずつを良く知ろう(仮)〉では、日比野大好き女子の8人による『いいわけ』がびっしり書き込まれていた。


 あれは、いじめではない、と。


 水玉さんの幸せポイントの話によれば、彼女らは自分たちの中に悪意を幾重にも重ねてしまった状態なんだから、どちらか言えば、言い訳よりもキチンと認めてごめんなさいをして、反省するのが正しいと思うけど。


 いじめっ子の親が、「自分の子供がいじめっ子で良かった」とネットに書き込んでいたという話を聞いたことがある。

 たぶんその親は、いじめっ子は何も損をするところがないと思っての発言だったと、オレは思う。それを、水玉さんは全部ひっくり返してくれたのだ。


 いじめっ子は損をするのだ、と。


 たぶん水玉さんは本来、幸せをポイント制で考えるとか、損とか得とか、そういう次元で物を考える人ではないと思う。


 だから幸せポイントは、損とか得とか、そういう次元でしか物事を判断できない人たちに向かって説明するために考えた、分かりやすい表現方法だったのかなとか、オレはそんな風に思った。


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