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01-09.元駐屯地司令、姫たちと出会う2

バルゴサ人の血筋が色濃く表れた、褐色の肌のシーリン王女は挑むように父王を見上げた。

「お父様にもお考えあってのことと理解いたします。王家の娘に生まれた以上、政略の道具となるのはさだめと思っております」

「うむ」

ギスリム国王はややひるんだようだったが、うなずいて言った。

「よくぞ申したシーリン。余とて娘の父として子の幸せを願わぬではない。ただ、王としてトラホルンの民の安寧をなによりも優先せねばならない。国家と国民とを守るのが王族の務めであると心得よ」

「承知いたしております」

シーリンはうっそりと答えて、軽くうつむいた。


その後、サルヴァから日本人についての質問攻めにあった後、解放された冴子は後宮から王宮へ至る道を国王と歩いた。

「サルヴァ様はとてもかわいらしいお姫様でございますね」

「ああ、あの子は誰にでも分け隔て無いし、誰からも愛されるたちでな。一方でシーリンは人嫌いで、めったに人を寄せ付けぬ」

「そうでしたか。わたくしはてっきり、わたくし個人が嫌われているものかと思いました」

「人にそう感じさせてしまうところがあの娘にはあってな。なかなか人に慕われぬ。付き合いの長い侍女たちには心を開いているようだが」

「恐れながら、シーリン様は少しわたくしに似ているのかもしれません」

「そうか? ならばぜひ、あの娘とも仲良くしてやってくれ」


ギスリム国王の少し後ろを歩きながら、冴子は言うべきか言わざるべきかを考えていた。

「ん? どうしたサエコ。黙り込んで」

「あ、いえ。ちょっと気になったことがございました」

「なんだ、申してみよ」

「シーリン様には、その……。もしかして、好いた殿方がおられるのではないかと思いまして」

「シーリンに? 余は計略的にあの娘とシーリンの従兄弟に近づけておったが、お互いにあまり好きあってはおらなかったぞ」

「そうでしたか。私の考え違いであるかもしれません」

「もしそのような相手がいるにせよ、並大抵の相手ではこの余が婚姻相手として認めたりはせぬがな」

ふん、とギスリム国王は鼻息荒くそう言った。


「姫様のご意向をご優先なされるお気持ちはおありになりませんか?」

「ないな。姫たちの前でも言ったが、王族の結婚は第一に国家の利と民の幸せを優先するものでなくてならぬ。そなたら日本人の間では好きあう男女が自由に婚姻を結べるのか?」

「たいていの場合は。特に婚姻関係においては女の意思が優先されます」

「そうか。それは女たちにとっては幸せな世界だな。だが、トラホルンに限らずこの大陸のどこにもそんな風習はないのだ。ことに王族にとってはな」

ギスリム国王はそれっきり話を打ち切った。

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