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03-20.魔導少女、誘惑を試みる3

「10回に一回でも成功したならすごいじゃないですか」

イルマは演技ではなく、素直にそう言った。

「完成した魔晶石にどんな魔導を込めたんですか?」

「いやあ、そこまでたどり着かなかったんだ」

ライラスは恥ずかしそうに言った。


「魔晶石は結実して魔素はこもったけど、魔導の力を付与できなかった。割れた魔晶石から魔素が解放されたのを自分の身に戻すことができただけ。まあ、作り置きをしておけば大量に魔素を必要とする術式を行う時の予備にはなったかもしれないけど」

ライラスは続けた。

「もし僕にもっと才能があったら、魔晶石から魔素を開放したとき、あらかじめ込められた術式が発動するように仕掛けることができたはずなんだ。これは何度か繰り返しても成功しなかったから諦めた。代わりにこんなものを作ったよ」

ライラスは研究所の棚の奥から、台に据え付けられた、握りこぶしより小さい木製の小鳥のおもちゃを取り出してきた。

小鳥のしっぽの部分にはごく小さい、大人の小指の先くらいの大きさの魔晶石が薄青い光を放っていた。


ライラスが小鳥の頭に手をかざすと、木製の小鳥は台の上で体を傾かせて水を飲むような動きをして、また元に戻り、それを繰り返した。

「かわいい!」

イルマに褒められて、ライラスはあからさまに気をよくしたようだった。

「術式は込めることができなかったけど、魔晶石を動力源としてこんなおもちゃは動かすことができた。研究次第ではもっと大きなもの……例えば風が吹かないときに風車小屋の風車を魔晶石で動かして粉を引くとかもできるかもしれない」


「そういうことができたら人々の役に立ちますね!」

イルマは今度は意識的に、ライラスの自尊心をくすぐりにかかった。

「ライラス先生、すごいです! わたし、尊敬します!」

「あ、いやそんな」

あからさまなお世辞と思われないように熱を込めてイルマは言い、ライラスはもじもじした。

どうやら普段から褒められ慣れてはいないようだった。


「先生に師事して錬金術を学んだら、私も魔晶石を作ることができるようになりますか?」

「ええっ?」

「もちろん、自分に才能があるかどうかは分かりませんけど、わたしやってみたいです!」

「ああ、いや、その……」

「お願いします! これから毎日、授業の後には先生の研究所に通わせていただきます」

イルマは椅子から立ち上がって、両手で相手の手を取って熱っぽくライラスの顔を見上げた。

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