01-05.元特務隊長、帰国する
飛び領地である自衛隊駐屯地を慰問し、王都ボルハンで会談を行って、主要な街を通過してハジメは外遊を終えた。
トラホルン王国の西に流れる大河、イェルベ川を渡って西岸より向こう側は、ハジメが国家元首を務める新興国<新日本共和国>の領土である。
ハジメたち一団は大型船でイェルベ川を渡り、イムルダール駐屯地に隣接する首都<イズモ>に戻ってきた。
首都と言っても今のところまだ建設中で、政府施設の大半はイムルダール駐屯地に間借りしている。
「完全に見切り発車ってところだな」
イズモの建物を整備している施設隊の働きぶりを見ながらハジメは自嘲気味に言った。
「やむをえませんでした。トラホルン王国からの提案で、王国歴501年と新日本歴元年を合わせて欲しいとありましたので」
「王国歴の節目に大きな祭りを催して、そこで新たな友好国の成立を発表。トラホルン国民は盛り上がったな」
「ギスリム王にはスター性がおありです。いや、イベントの仕掛人というべきでしょうか」
新日本共和国初代首相である森本モトイが面白そうに笑った。
「聞くところによると、大統領とは馬が合うとのことでしたが」
「ん-? まあそうかもなあ。嫌いじゃねえよあの人のことは」
ハジメは過去に第4王子だった時代のギスリムと、一緒に催し物の共同司会みたいなことをしたことがあった。
それは友人の沖沢タモツが、当時ガールフレンドだった上官の戸田冴子を伴って王都を散策中に、冴子を見初めたギスリムがタモツに決闘を申し込むというイベントであった。
(懐かしいな。あれは、もう何年前のことになるんだ?)
ハジメはもう、今年で38歳になる。もう2年もすれば転移前の現実世界と転移後のこちらの世界とで過ごした人生の時間が同じになってしまう。ハジメはあちらの世界に特に未練はなかったから、現実世界の日本に帰りたいと思ったことは一度もなかったのだが。
妻のカナデは34歳になるが、転移者ではなく転生者なのでもう34年間この世界で暮らしていることになる。
ハジメはカナデの前世をほぼ全く知らない。鎌倉生まれだというのは聞いたことがあった。
本人が話したがらないので、ハジメは無理に聞こうとは思っていなかったし、特に知りたいわけでもなかった。
(過去がどうだろうとカナデはカナデだからな)
「……ところで森本さん、あんたは今年でもういくつになる?」
「私ですか? 76になりますな」
「そうか。俺が4年を務めた後には80になるけど、2代目大統領をやれそうか?」
「それを務めあげるまでは死ねませんな」
森本モトイ首相はそう言って笑った。




