02-18.元特務隊長、連隊長と語らう
ハジメはバイアラン周辺の地形や防御陣地の配置を頭に叩き込んだ。
「噂の竜騎兵ってのが、いったいどれほどの数をそろえてくるのかが問題だな」
「調査隊からの報告では100を超えるという話です」
「まじかよ。国民を飢えさせてでも、それだけのドラゴンを養ってるってわけか」
「竜戦士っていう歩兵部隊もいるんだろ? そいつらについてはなにか分かってんの?」
「剣と盾と鎧で武装した重装歩兵と思われます。戦の名誉を重んじて死を恐れないとか」
「あー、なんか、勇敢に死んだら転生して、さらに強い戦士に生まれ変われるんだっけ?」
「伝説によればそのようです」
「戦って死んで生まれ変わって、また戦って死んで生まれ変わるのかー。ご苦労さんなこって」
駐屯地というよりは砦、といった風情のバイアラン駐屯地の物見やぐらから周囲を見下ろしつつ、ハジメははるか遠くのバルゴサを思った。
南原連隊長はハジメの物思いを邪魔することなく、黙って傍らに立っていた。
「連隊長、俺さあ、この世界に転移してきたときには命知らずのハジメちゃんだったのね」
「はあ。そのように伺っております。勇猛さによって前期教育時代にはすでに1士に昇進されていたと」
「でもさあ、特務隊で大切な部下――仲間って言ってもいいかな――ができたりするうちに、なんか死ぬのが怖くなってきてさあ」
「ご心情は、お察しいたします。守るものができれば人はそうなるかと思います」
「バルゴサの奴らだって死にたくはねえだろうし、守りたいものはあるんだと思うんだけどさあ」
ハジメは北東の方角を見つめたまま、南原2佐に言った。
「次の戦い、負けるわけにはいかねえんだよなあ」
「そのように心得ております。ことはもう、すでに話し合いなどで解決できる段階ではないのだと認識しています」
「だよねー」
ハジメは南原の顔を見てうなずいた。
「戦いに臨む人たちの士気を削ぎたくはないんだけどさ、俺達ってこの異世界の人たちが知らない色々なことを知っているわけじゃん? 科学技術とかの詳しいことは分かんないわけだけど」
「はあ。この世界の人々が受けていない教育を受けてきましたからね」
「世界にはいろいろな可能性があるとか、人類にはいろいろなことができるんだぞってことを知ってる。だからさ、この世界にそういう知識を広めて、人々の暮らしをもっと豊かにできるんじゃねえかなーって思うんだよね」
「食料などを巡って人同士が争いあわなくても良い世界。そのような理想世界を築きたいとおっしゃるのですか?」
「んー、そうね。そんなとこ。甘いかなあ俺」
南原連隊長は、しばしの間考えていたが、言った。
「理想ばかりを語る人を私は信用しませんが、一方で政治家が理想の追求をあきらめたなら、それは職責に値しないと考えます」




