02-17.元特務隊長、バイアランを視察する
異世界自衛隊第5の駐屯地、臨時駐屯地という位置づけのバイアラン駐屯地は北部から続く丘陵地帯の、その丘の上に建設されていた。
北東から街道を通ってやってくると思われる軍勢を待ち受ける位置にあり、駐屯地から左右にはいくつもの守備陣地、塹壕などが建設されてもいた。
主力部隊は第5普通科臨時連隊。新日本共和国が擁する4つの普通科連隊から人員を集めて編成された最前線部隊であった。
2割増しの給与を約束し、さきがけの名誉を得られることをかかげて希望者たちを募ったために、隊員たちの士気は総じて高い。
異世界自衛隊の中には人と人との殺し合いの場に臨むことを忌避する者ももちろんいたのだったが、そういう考えの人間は最前線を退いて技官に職を変えることが多かった。
このころになるといつか元の世界に帰れるかもしれないという望みを持つものも少なくなっており、新たに異世界転移してきた隊員たちにも「この世界で生きていく」という覚悟が先輩隊員たちから叩き込まれるようになっていた。
新日本共和国にとってトラホルンは唯一無二の同盟国であり、かつまた運命共同体であった。バイアランの防衛線が崩されれば敵軍は王都ボルハンになだれ込む。ボルハン自体にもトラホルン軍や王宮警護隊などの軍備はあったが、万が一騎竜の軍団に防衛線を突破された場合にはどこまで持ちこたえられるか疑問であった。
「前王ヘンギスはトラホルン軍を弱体化させてまで農業国、商業国としての充実をはかっていたみてえだからな」
「いざとなれば自衛隊を防衛力としてあてにする心づもりであったのでしょうか」
「なし崩し的に同盟を成立させるってか。刈谷の一件が無くてもそういう流れにはなっていたかもな」
ハジメはうなずいた。
「トラホルン軍の主力っていうのは槍兵なんだろ? そいつらはどこに配置される予定なの?」
「バイアランの南西で待機してもらうことになります」
第5普通科連隊長、南原2佐はハジメに向かって言った。ラガーマンみたいに体格のいい色黒の若い男だ。転生組なのだろう。
「小銃や機関銃で戦う我々の前に立たれたら正直邪魔ですからね。万が一バイアランを突破された場合の後詰めと説明してあります」
「弾薬は十分に用意できるのかい?」
「異世界自衛隊が保有している弾薬を可能な限りバイアランに集めてあります。貴重な機関銃は12門確保してあります」
(12門かあ。俺、特務隊時代に結構機関銃ダメにしちゃったけど、悪いことしたなあ)
黒竜討伐の際には緊急脱出のためとはいえ、2門の機関銃をその場に捨てて逃走した記憶があった。




