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02-16.元特務隊長、バイアランへ行く

木下ハジメ大統領は、最後に陸上自衛隊が建設中の最前線防衛拠点であるバイアラン駐屯地を目指した。

今のところ臨時駐屯地とされており、戦争が終了するか何事もなく数年が過ぎれば解体される可能性もあった。

この建設はトラホルン王国からの依頼と、方面の戦況予測に基づくもので、トラホルンから北東に位置するバルゴサからの侵攻軍はイサを経由してこの地域になだれ込んでくるとみられていた。


バイアランに向かう途中、ハジメはつぎはぎだらけの魔獣の皮でくるまれた、三つの小山のような何かを目にした。カリザトから馬で15分ほど北上したやや小高い丘の上にそれらは存在していた。

「あれ、もしかしてさ、人力であそこまで上げたの?」

「ほぼ、そうだと聞いております」

「ほぼ?」

「動かし始めの時だけ、白魔導士たちの力を借りたという話ですが」

「こけおどしに使うのかねえ。効果あるといいけどな」

ハジメは苦笑いをして言った。


それらのものを右手に見ながら丘の横を通過し、ハジメは王都ボルハンには立ち寄らずに直接バイアランに向かった。

バイアラン駐屯地は、駐屯地というよりはほぼ古代の要塞のような防御陣地として建設されていた。

バイアラン地方より北はカディールとの国境となっているディール山脈へと続く丘陵地帯であり、丘陵地帯を縫って伸びる街道は遠くイサへと続いている。


「カディール側からディール山脈を越えて攻めてくる、なーんてことはないんだろうな。ハンニバルみたいにさ」

「バイアランを回避して北西からボルハンを落としにかかる、ということでしょうか? 兵の損耗が大きすぎましょう」

ハジメの護衛隊長を務める2等陸尉の持田が少し考えて言った。中肉中背で地黒の男であるが、どこかかつての腹心だった押井に似た雰囲気の冷静で頭の回る男だった。


「アガシャー王は苛烈な気性で、直情的なお方ときいております。奇策のようなものは好まれないのではないかとも思います」

「45年前だかに、わずか6歳で反乱勢力討伐を命じて国内で大虐殺をやらかしたって野郎だろ? あぶねえオッサンだな」

「さすがにそれは本人の意向より当時のアガシャー竜太子を立てた勢力によるものでしょうが、そのような伝説を火消しないということは畏怖をもって国民を統御しようという意思の表れでしょうね」

「そのおっそろしいオッサンが、恐竜に乗って数年内に攻めてくることがほぼ確実ときた。カリザトを見る限り隊員の士気は低くないみたいだったが、バイアランはどうかねえ」


ハジメたちはバイアラン駐屯地入りし、駐屯地司令に歓待された。ハジメは突然の訪問を詫びた。

臨時に駐屯地昼礼が開かれ、ハジメはそこでも隊員たちを前に演説を行うことになった。

述べた内容はカリザトで話したこととほぼ同じであったが、国家元首が最前線を見舞ったことで隊員たちの士気は上がったように見受けられた。

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