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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第四話 「幸せの黄色い……」

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シーン9 @夜の教室

 10万人もの人々を開放し終えた時、時計は既に21時を回っていた。


「ふ~、さすがに疲れたわね」


 智恵が息をついて、イチゴオレを飲んだ。

 三人と水上は、教室で一息ついていた。机には、約束通りジュースやお茶の類が大量に用意されている。

 紅いひょうたんのストラップ――ひょうタンは、ホウキから取り外され、机の上に置かれていた。


「先生、ここまで付き合ってくれてありがとうございました! 家にも連絡してくれて……」


 あかりがぴょこんと頭を下げた。


「教師として当たり前の事をしただけだ。

 さぁ、あとはそのひょうたんを壊すだけだな」


 水上はゴミ袋を机の上に置いて、三人を見回す。


「ゴミ袋を三枚重ねにして、中にひょうたんを入れてから叩いて壊す。いいな?」


 あかりがうなずいて、ゴミ袋をとった。


「待て、あかり。本体以外にもコピーが大量にばらまかれているはずだ。それらを見つけるために、本体が必要になるかも知れない」


「いーーーーーーーーーえ、だいじょぶでーーーーーーーーーーーす」


 間延びした、少しイラッとする声で、紅いひょうたんのストラップ――ひょうタンが言った。


「ほーーーーーんたいが壊されれーーーーーーーーーばぁ、

 ぼーーーーーーーーくたちのちーーーーーーからもーーーーーーーーぉ、

 なーーーーーーーーくなってしまいまーーーーーーーーーす」


「力がなくなる……って、大丈夫なの? ひょうタン」


 美佳がストラップを取り上げ、描かれた顔を見つめる。


「そーーーーーうですねーーーーーぇ、

 ぼーーーーーーーくたちは、ほーーーーーーーーんたいのちーーーーーーからで

 出ーーーーーー来てますからーーーーーー、

 下ーーーーー手をするとーーーーー、どーーーーーうじに壊れまーーーーーーす」


「えっ、そんな……」


「でーーーーもぉ? おーーーーーじょうさまのおかげでーーーーーーーーぇ、

 わーーーーるい赤ひょうたんからーーーーーー、

 せーーーーいぎのひょうタンにーーーーーー、なーーーーれたのでーーーーーす」


 ひょうタンの表情は、あくまでも爽やかな笑顔だった。

 自分が大切な人たちを吸い込んだせいで、美佳を苦しめていた。だが美佳の力のおかげで、少しでもその罪滅ぼしが出来たのだ。

 ひょうタンは満足だった。


「ほーーーーんたいがあるとーーーーぉ、

 まーーーーたわるいことがーーーーー、おーーーーこるかもしれませーーーーん。

 だーーーーーからーーーーーーー……」


「うん……壊さなきゃ……だね……」


 智恵がうつむいて、言った。


「でも……でも……っ!!」


「那須野……これは、彼の意志なんだ。もう二度と、お前を苦しめないために……」


 涙で滲む美佳が見つめる先で、ひょうタンは曇りのない笑顔のまま口を開いた。


「ありがとう……お嬢様……」


「ひょうタン……っ」


 美佳はひょうタンを握りしめて、肩を震わせた。


「なんだよ……普通に喋れんじゃねーか……。最後だけかっこつけやがって……」


 ホーキングはそう言うと、携帯の中に消えた。


「あかり、本体を……破壊するんだ……」

「うん……」


 あかりは本体のひょうたんを袋の中に入れて、金づちを握りしめた。


「あかりちゃん、ちょっと待って……!」


 金づちを振りあげたあかりを、美佳の声が止めた。


「せめて……最後は、悪い事した本体の色じゃなくて……。

 ひょうタンの色、塗り直してあげたい……」


「お嬢様……」


 あかりはうん、とうなずいて、金づちを下ろした。


「……わかった。

 ねぇ美佳、何色に塗るの?」


「うん、ひょうタンが幸せになれるように……幸せの色……」



 こうして、大量失踪事件は幕を閉じた。

 紫金紅葫蘆の本体を破壊すると、コピーたちは力を失い消滅したが、幸せの色に塗られた美佳のコピーストラップは力を失っても消えることはなかった。

 ウォルフの宿った美佳の携帯には、今でも黄色いひょうたんのストラップが揺れている。

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