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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第11話 「新生」

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シーン2 ブルーVSアキラ

「ぃよっしゃあ!」


 変身を完了したMSブルーのヘルメットから、ホーキングのはしゃいだ声が響いた。


「うん、これで……戦える!」


 ブルーの声も弾む。アキラは面白そうに、ブルーを上から下まで眺めた。


「ふーん、なかなかかっこいいじゃん?

 んで? 変身したらどうなるわけ?」


 ブルーはスマホを握り、アキラに向かって叫ぶ。


「ふん、そんな余裕を見せていられるのも今のうちよ!

 ……キングガン!」

「へーーーんけーーーーい! とぉっ!」


 ホーキングの声が響き、スマホがワイズ・オールマイティーガン――キングガンに変形した。

 ブルーは銃のセレクターを光に合わせる。


「キングガン! フォトンビュレットぉ!」


 光の弾丸がアキラに向けて放たれた。

 アキラは狙いを読んで余裕をもって避けた。


「うぉっとぉ!」


 だが弾丸は急角度に曲がり、アキラの右脇腹に食い込んだ。


「……んぐっ!

 何っ! 弾が……曲がった……!?」


 アキラはダメージが少ない事を確認すると、ブルーをニヤニヤ眺めながら、簡単に治癒魔法をかける。


「っへーぇ、《フォトン》魔法の弾か……。おもしれーな」


 アキラは面白がりながら、既に対策を考えていた。あの弾丸は軌道を操れるところが厄介だが、威力が弱すぎる。ピンポイントで弱点を突くには効果大だろうが、そうでなければ小さいダメージを蓄積させていくしかない。そうできるのであれば、だが。

 アキラはそこまで読み切ると、石を拾って飛んでくる弾丸をそれで受けた。石は破壊されるが、弾丸と相殺だ。面倒ではあるが、防御は完璧だった。石はそこら中に転がっている。

 石を拾っては防御しているだけのアキラに、黄仙は苛立っていた。


「何やってるんだい! 遊んでるんじゃないよ!」


 アキラはニヤニヤと笑いながら黄仙に言い返す。


「んじゃどーする? 俺様は爆乳姉ちゃんの援護に徹するか?

 そりゃ楽出来た方がいいけどな?

 それとも、俺様が魔法に集中出来るように、盾になってくれんのか?」


 黄仙は一瞬たじろいだが、ふっと笑って肩の力を抜いた。


「あたしだって楽出来た方がいいに決まってるさね。

 あんたが手ぬるい事やらなきゃ文句はないんだよ。

 さっきみたいに、すごい魔法がんがん撃ちなっての」


「バカ言うなよ。魔法ってのは魔力が尽きたら撃てなくなる事くれえわかってんだろ?

 切り札の呪文は、ここぞという時までとっとくのが、一流ってもんだぜ?」


 アキラの余裕たっぷりな態度に、黄仙は苦笑する。


「ふん、エラそーな事ばっかいって、ほんとあのホーキと同じにむかつく男だねえ」


 確かにムカつくし苛立ちもする。だが黄仙は少し、それが嫌いじゃない自分に気づいてもいた。


「いいねぇ~。そんなに俺様の事が気になるか?」


「ば……っ!

 余計な事言ってないで、とっととあいつをやっつけるんだよ!」


 何か図星を突かれたようにドギマギして、黄仙は誤魔化すように大声を上げた。


「へいへいっと……。

 おーい、おチビちゃん? 魔力の銃みてえだけど、そんな貧弱な威力じゃ俺様にはきかねーぜ?」


 もちろんブルー達は、そんな事は言われなくてもわかっていた。


「悔しいけど、あいつの言うとおりね……」


「おい智恵、魔法で攻めるぞ」


「でも、呪文はキャンセルされるじゃない!」


 そう。自分たちよりもずっと熟練した魔法使いであるアキラに魔法が通用しない事は明らかなのだ。

 だがホーキングには作戦があった。


「確かにさっきはそうだった。

 けどな、キャンセルってのは相手の呪文を見極めてからでしかできねえ。

 さっきは俺様の後について詠唱してたから余裕もってキャンセルされてたが……。

 今度はメットのゴーグルに呪文を表示させる。

 直接お前が呪文を唱えれば、奴が準備する時間は減るだろ?」


「なるほどね。キャンセルされるとしても、さっきみたいな余裕はないはず……。

 焦りが出れば、隙をつく事も……!」


「そういうこった! いくぞ!」


 ブルーがキングガンをホルダーに戻す。アキラはさらに面白そうな顔になって、拾った石を投げ捨てた。


「おーっとぉ? やる気が出てきたみてえだな!」


 バイザーに表示された呪文に視線を送り、ブルーは決意を込めてアキラを見据えた。


「必ずあんたを乗り越えてみせる……!

 集え! 光の矢! フォトンアロォーーーーーッ!」


 だが呪文は発動しない。


「へえ? おチビちゃんが直接ねえ。キャンセルする暇なくさせようってことか!

 だぁが! 無駄無駄!」


 アキラはからかうように言った。からかう程の余裕があるのだ。

 ホーキングは構わず呪文を表示させた。


「どんどんいけっ!」


「いでよ黒炎! 灼熱の炎嵐! 爆炎よ渦をまき天空へその牙跡を穿て!

 爆炎竜巻(ファイア・トルネード)!!」


「ほぉ、上級呪文ね、いつまで魔力が保つかねえ?」


 アキラの余裕はまだ崩れない。


「くっ……!

 極寒の氷の柩の中で永遠の眠りにつくがいい……安らかなる悪夢を……。

 獄凍氷撃(ヘルケルビン・レイ)!!」


「へぇ、そんな呪文まで知ってるのか、感心感心!」


 全く発動しない呪文。だが術者の消耗は変わらない。

 ブルーは一気に魔力を消費して、身体中から力の抜ける感覚を味わっていた。


「はぁ……はぁ……っ!」


「だいぶ疲れてきてんじゃね? だいじょうぶかー?」


 アキラがのんびりと声をかけてくる。ブルーは馬鹿にされたように感じて、頭に血が上ってきた。


「……ホーキ・・・! あんたも、なにか手伝いなさいよ……っ!」


「はぁ……はぁっ……。

 あぁ? ちゃんと……魔法発動させてんだ……ろーがっ……」


 言い返すホーキングも消耗は激しかった。ブルーはそれでも、ホーキングに怒りをぶつけた。それはホーキングを責めるのではない、怒りを共有したいという思いだった。


「なんか、あたし一人で、文字読んでるだけみたいで、むかつくのよっ!」


 ホーキングはひとつ苦笑して、穏やかに言った。


「……一人じゃ寂しいってか。

 ……わーったよ……っ。

 次の呪文は……っ……」


 ブルーがバイザーを見て唱える呪文に、ホーキングが声を重ねた。


「光の粒子よ……我に集いて刃の輪を成せ……っ。

 光円斬(フォトンソーサー)ーー!」


 二人の詠唱が終わった時、薄く小さいが、確かに光の円盤が生成された。

 ブルーはアキラに向けて、その円盤を投げつける。


「……! 何っ? シールドっ!」


 アキラが慌ててシールドを貼ると、円盤はあっさりと弾かれた。だが、今ここで重要なのは、ダメージを与えられたかどうかではない。


「で、出た……!?」


 驚くブルー。アキラの顔に初めて焦りの表情が浮かんだ。


「キャンセルしきれない……?」


「……ハーモニクス! そうかっ!」


 何が起きたのか、最初に理解したホーキングが声を上げる。


「ホーキ……! 次……っ!」

「……おうっ……!」


 ホーキングは残りの魔力、ハーモニクスとキャンセルの効果を計算して、呪文を選択した。


「フォトン・タイラント・バースト……」


 二人の詠唱に呼応して、周囲の空間がキラキラと輝きだす。

 アキラがキャンセルしきれない分だけでも、膨大な力が顕現しようとしていた。


「ハーモニクスかっ! しかもその呪文は……!

 おい! お前らやめとけ! その呪文はまだ……!」


「シューーーーーーートっ!」


 二人の声が混じり合い、その強大な呪文を発動させた。

 輝く空間から、その輝きだけが巨大な奔流となってアキラと黄仙に襲いかかった。

 いや、それだけではない。

 巨大なエネルギー流は、制御を失って暴走を始めたのだ。

 魔法はブルーもろとも周囲を巻き込み、大爆発を起こした。


 爆発が収まった後。

 最初に身体を起こしたのは、アキラ・ユーマだった。


「っかー……。やって……くれんじゃねえか……。

 未完成の呪文まで……んぐッ……」


 ふらつく足に力を込めてゆっくり立ち上がるアキラ。


「な、なんだい……いまの……」


 そう言いながら起き上がるのは黄仙だ。爆発の中心から少し離れていた事が彼女を救っていた。

 アキラは周囲の惨状を見渡して、呆れたように息を吐いた。


「出来るだけキャンセルしてマジックターンシールド張ってこれか……。

 こいつらもただじゃすまねえだろうけどな……。よくやるよ、全く」


 アキラは倒れたブルーを眺めた。暴走した魔力爆発の中心にいたのだ。ただではすむまい。

 しかし彼女の変身は解けていなかった。という事はホーキングも無事だという事だ。妄想領域自体も無事。つまりまだブルーは生きている。

 生殺与奪の権利が、アキラの手に移ってはいるが。


「まぁ、これで……、あとはとどめってわけだねえ?」


 動く気配のないブルーを見下ろして、黄仙が言った。


「そーだな。もうまともな呪文使える魔力は残ってねえだろうしな」


――アキラの声が聞こえる。黄仙の声もだ。身体中が痛い……。


 ゆっくりと、ブルーは意識を取り戻し始めていた。


――そっか。あたし達は無茶な魔法を使って……。


「はぁ……はぁ……っ、智恵……! おい智恵!!」


――アキラが呼んでる……? ホーキ? 紛らわしいわね……。


 ブルーの意識が少しずつはっきりしてくる。


「俺様がいるって事は……まだ死んでねえな? 智恵……」


 声の主がホーキングである事を確信するのと同時に、智恵の意識は完全に覚醒した。


「うっさいわねバカホーキ……当たり前でしょ……!」


「ならどうする? あいつの言うとーり……俺らにはもうまともな呪文を使う魔力は残ってねえ……

 ハーモニクスでも……簡単にキャンセルされちまうだろーな……」


 言葉の内容とは裏腹に、ホーキングは明るい。

 勝てる見込みはないのに、負ける気もないようだった。

 そして、それは智恵も同じだった。


「ふん……! なに弱気に……なってんのよ……!

 あたし達は魔法使い……だけど、もう一つ……忘れてない……?」


 ホーキングはハッとした。


「科学……か!」


 ホーキングは目を輝かせた。魔法ではアキラの方が専門家だ。魔法で勝つ事などできるわけがないのだ。

 だったら、こちらの専門分野に引き摺り込めばいい。


「キングガンのレーザー機構で、光を増幅すれば、光の呪文は……!」


「なるほど……っ、キングガンを魔力増幅装置にするわけか……!」


 ホーキングはもう全てを理解していた。科学と魔法の融合。それならばアキラに対しても有効のはずだ。


「呪文と、装置のボイスキーはあんたに任す!」


 ホーキングは既に呪文の構成とキングガンのアップデートに取り掛かっていた。智恵に言われなくても、自分が担当するべき仕事は理解していたのである。


「ぶっつけでか? っかー、キッツい事言うなァ!」


 無論、その言葉の意味は『お前のやりたい事は全部把握した! あとは任せとけ!』だ。


「文句あんの?」


 智恵はキングガンを睨みつけて言った。

 その言葉の意味は『任せたわ! 失敗するんじゃないわよ!』である。こちらはあまり変わらない。

 ブルーはゆっくりと立ち上がり、アキラ達にキングガンを向けた。


「あたし達にはできる……!

 人間が空想できる事は……必ず全て実現できるのよ!」


「なにをブツブツ言ってるんだい!

 どんな相談したって! あんた達の負けは変わらないよ!」


 黄仙が吠えた。あの銃はアキラには通用しない。勝ち目のないブルーが諦め悪く立っている光景には醜さしか感じなかった。

 アキラはニヤニヤ笑いを消すこともなく、ブルーに視線を投げた。


「そゆことー。

 んじゃ、こんどはこっちのターンだ。いいな?」


 ブルーからの返事はない。が、アキラに返事を待ってやる義理もなかった。


「ぶっ倒れてる間にトドメ刺しちまえば良かったのに、なんで起きるまで待つかねェ」


 黄仙が呆れて言った。

 どうもこの魔法使いは面白がって楽しんでいるだけに見える。失敗してケツ持ちしなきゃならなくなるのは願い下げだ。


「まぁほら、あんな格下相手なんだし、完全に完璧に、正面から力で踏み潰して、わからせてやんなきゃだろ?」


 アキラは黄仙にウインクして、ブルーに向き直った。


「……紫電! 雷光! 招来……裁きの稲妻……!」


 アキラがブルーにトドメを刺すべく、雷撃系最上級魔法を詠唱を唱え始めた時――。


「ザルクエルド・ラウガドゥセルク・スティン……!」


 ホーキングの声がアキラの耳に飛び込んできた。


「何……っ!?」


 それはアキラが聞いたこともない音の連なりだ。


「闇を滅する絶えざる光!! 来たれ輝煌竜……!!!」


 ブルーが紡ぐ言葉が、膨大な力を呼び覚ましてゆく。しかしその力も、アキラの知る『魔力』とは違っていた。


「な、なんだ、この詠唱は……!?」


 アキラが吐いたその言葉を聞いて、ホーキングがヒュッと口笛を吹いた。


「はっ! あんたにその台詞言わせるってのは快感だな!」


「これがあたし達の……切り開く未来!」


 精神を、心を全てを乗せたブルーの声。そして二人の声が溶け合い、その詠唱の最終節を奏でた。


極輝光竜(カイザー・ドラクロス)!!」


 ブルーの身体が黄金に輝き、天に昇る光の竜を生み出す。増幅された光粒子によって形作られた竜は咆哮をあげ、アキラに襲いかかった。


「これは……やべえな!

 旋風よ、四肢となれ(ソゥ・フェイ・ルー)! 高速飛翔(フェインビート)!」


 アキラは飛翔の呪文を唱え、竜の攻撃軸から身をかわした。が、無論光竜は攻撃をあきらめるわけもなく、アキラを追尾する。


「な、なんだ……? 光る……竜!?」


 呆然と見上げる黄仙にアキラは高速で急降下した。


「わりぃな、爆乳姉ちゃん!」


 アキラを追って光竜が接近してくる。


「な、なんだい! こっち来るんじゃないよ!」


 アキラは後ずさる黄仙の腕をつかんで、ぶん、と後ろに投げ飛ばした。


「へへ、わりぃな! 俺様の目的は、ほぼ達した!」


「な、何っ! お前、最初から……」


 放り出された黄仙が叫ぶ間に、迫って来る光竜の口が大きく開いた。


「あ、あ……ぎゃぁぁあああああ~~~~!!」


 黄仙を飲み込んだ光竜が、アキラに追いつき、その至近で爆発した。


「や、やった……? だけど……」


 ブルーは自分たちの放った技の威力に呆然としながら、それでもその結末に疑問を抱いていた。


「だけど最後にあいつ、黄仙を道連れにしたように見えたけど……」


 ブルーがつぶやいた時、光竜が爆発した場所で、ボロボロになったアキラが立ち上がった。


「ぐは……ッ……。

 ……っかーーー! お前らさ、それはシャレになんねっての……。

 純粋な魔法じゃねえから、シールドも大して効かねーしよぉ……。

 イタチ盾にしなかったらやばかったじゃんかよ、ったく……」


「うそだろ……。アレで立ちあがんのか……っ」


 ホーキングがつぶやいた。絶望的な状況だ。もう、なす術はない。


「だぁから……シールドはしてんだよ。

 ……ったく、あいつみてえに体力オバケじゃねんだから、こんなん食らわすなよなー……」


 ぶつくさ言いながら、身体をパンパンとはたいて砂埃を払うアキラ・ユーマ。

 ブルーは油断なくキングガンを構え直す。


「ホーキ……まだいける……?」

「ちみっと……しんどいけどな……」


 このウィザードを倒す方法は、まだあるはずだ……。

 ブルーとホーキングの意志は完全にシンクロしていた。

 アキラは慌てて手を振る。


「おいおいおいちょっと待て、戦闘はもう終わってるって!」


「まだ……、あんたが残ってるでしょ!」


 ブルーはキングガンをアキラの顔に向けた。

 弾丸ではなくXV=DaMの光なら、弱点を見つけ、その目をくらませる事も出来るはずだ。


「お前らさー、気付いてなかったわけ……?

 何度もこっそり助けてやったろーが……!」


 キングガンの照星の向こうで、アキラの呆れ顔がこちらを見つめていた。


「え、じゃあ……あの時の結界も……シールドも……?」


 自分の原点を見つめ直していた時に身を守ってくれた結界、そしてホーキングが復活した時のシールド……。

 危機に陥った時に守ってくれたのは、まさか……。


「あったりまえだろ、マンガじゃあるめーし、無意識で結界とかシールドとか出せるかっての。

 さっきの無茶な呪文で暴走した時も、俺様がシールド張ってやらなかったらお前ら死んでたぞ?」


 ブルーはキングガンの銃口をアキラから逸らした。


「じゃあ……」


「そーゆうこと。こうでもしねーと、ディスペアーに気付かれずにお前ら復活させるなんて無理だろが」


 ブルーはその言葉の正しさを認めざるを得なかったが、受け入れたくはなかった。受け入れなくていい理由を見つけたかった。


「でも、あんた……胸のフェチだって……」


 そんな言葉しか出てこない。声が不安定に揺れていた。

 ブルーは、このウィザードを受け入れたくない理由がわからなくなっていた。

 もしかしたら、魔法を受け入れられなかった自分の残滓なのかも知れない、とブルーは思った。


「あー。確かに俺様はおっぱいフェチだけどな? そんじょそこらのおっぱい好きと一緒にすんな!

 巨乳がいいとか貧乳が良いとか言ってる奴はまだまだだ!

 俺様は! どんな胸だろうが! 女子の身体のパーツとして! 胸が! ぐはっ……」


 ブルーのゲンコツが、アキラの頭にヒットした。


「……やっぱ最っ低!」


 ブルーの憤慨にかぶせて、ホーキングの笑い声が響いた。


「……ふっ……あはははははは!

 全く同感だ! あんた、ほんとよくわかってるじゃねえか!」


「……あんたも最低ね」


 ブルーは冷めた声で言うと、変身を解除する。智恵の横に、ホーキングが実体化した。

 アキラはそれを見届けて、ふっと肩の力を抜く。


「さてー? そろそろ頃合いだし? もう一つ、敵じゃねえ証拠、見せてやっか。

 あいつの方も、終わったみてえだしな……!」


「あいつって……?」


 智恵が戸惑う間に、アキラは指で空中に魔方陣を描いていた。


「むぅぅ……っ……。

 プル・ヴァイポートっ!」


 アキラの呪文に呼応して空間が歪んだ。その歪みから悲鳴が聞こえ……、歪んだ空間から人間が四人、落ちて来た。

 落ちて来たのは、あかりと弧次郎が二人、そして智恵は見た事のない大男だった。


「痛ぁ……っと……。あれ?」


 お尻をさすりながらあかりが立ち上がる。


「む……?」


 同時に同じ声を上げながら、二人の弧次郎が周囲を見回した。


「あ、あかり?」

「智恵?」


 あかりと智恵が顔を見合わせる。そして智恵が二人の弧次郎を見て声を上げた。


「ええええ! 弧次郎さんが二人?」


 混乱している智恵に、弧次郎たちは慌てて説明する。


「ええと、俺はお前が知ってる、MSガールズの弧次郎だ」


「俺はマスクドガイ雷牙の弧次郎だ。知っているか?」


――なるほど、こっちのアキラ・ユーマみたいに、あかりの方にも『本物』が現れたのね。


 智恵は状況を把握すると、『本物』の方に自己紹介した。


「あ、はい。あたしはMSブルーの鷹城智恵です。

 ……番組は見てなかったですけど、あかりからお噂はかねがね……」


 ちょっと言いにくそうに智恵が言うと、『本物』の弧次郎は少し表情を曇らせた。


「……そうか。見てなかったか……」


「あ、今度あかりにDVD借りて見ます!」


 大抵こういう場合、見ないのだろうなぁ、と『本物』の弧次郎が肩を落とす。

 アキラは落ちて来たまま座り込んでいるガンジョーに歩み寄った。


「よ、久しぶりだな、体力オバケ」

「お……おう」


 別の世界で共に冒険していた彼らの再会はあっさりしたものだった。

 お互いを知り尽くし、信頼しているからこそだろう。

 アキラは満身創痍のガンジョーを見て苦笑した。


「っはは、いつもながらぼろぼろなのな。

 今、俺様も魔力ちょっと使っちまってっからさ、便所スリッパ来るまで、もーちみっと我慢してくれな」

「予想はしていたから、気にすんな」


 ガンジョーもアキラに苦笑を返す。

 智恵がぱたぱたと走ってきて、アキラに聞いた。


「えっと……この方は……? なんかぼろぼろだけど……」


「おめー、ネットで俺様見つけた時、こいつもいたはずだけど……?」


 アキラが呆れるが、ガンジョーは少し寂しげに笑う。


「……まぁ、影が薄かったからな。

 俺は女子高生にふんづけれても死なない男、ジョー・ガンジョー」


「……普通死なないと思うけど」


 ガンジョーの名乗りに、素でツッコんでしまう智恵。


「それに、なんか怪しいプレイみてーだぞ?」


 アキラにまで言われて名乗り直すガンジョー。


「えーと。じゃあ、魔剣・カタストロフにふんづけれても死なない……」


 ……にくるりと背を向け、アキラはあかりに話しかけた。


「あーそうだ。そっちのひんにゅ……お嬢さんは初対面だったな。

 俺様はアキラ・ユーマ。究極の大魔法使いだ!」


 あかりは慌ててアキラに駆け寄って、元気に自己紹介をした。


「あ、あたしはMSレッドやってます、富士宮あかりです!」


 そしてアキラを興味津々の目で眺め回す。


「へー! 魔法使い! ホーキくんみたい! へー!」


「どーやら、俺様のモデルはこいつらしいからな」


 ホーキングがあかりのそばに飛んできて言った。


「え、じゃあ、ホーキくんは、本当はこんな顔してるんだ?

 へー! へええーー!」


 じろじろとアキラの顔を眺め回すあかり。


「……あんま見ないでくれる?」


 あかりの視線から逃れようと必死なアキラに、ガンジョーが声をかけた。


「……で、アキラ。ロックの方は呼べるのか?」


「それがよ、何でかしんねーけど、あいつの気配がおかしいんだ。

 ……こっちから行くしかねーようだな」


 ガンジョーとアキラはもう一人の仲間の事を話している。

 あかりは少し寂しさを感じていた。


「そっか、ジョーさん、仲間探してるんだもんね。

 ここでお別れかぁ」


 短い時間だったが、自分を守り、支えてくれたガンジョー。その別れは、やはり寂しい。


「いんや、お前らもいくぞ?」


 当たり前のようにアキラが言った。


「え?」


 驚いた智恵が声を上げる。アキラは智恵の方を向いて話を続けた。


「MSガールズって三人なんだろ?

 だから体力オバケと便所スリッパに行ってもらったんだよ。

 そばに集めて、回りの空間ごと引っ張れば、簡単に合流出来るからな」


「そういう事だったのか……」


 『本物』の弧次郎が納得してうなずく。予定外だったガンジョーの存在、そしてこうして合流できた事。

 彼の中で、そのすべてが符合したのだ。

 あかりが智恵に近寄り、小声で囁く。


「ねえねえ智恵、この人もしかして天才?」

「とりあえず自分ではそう言ってるわね」


 智恵も小声で返した。

 ガンジョー達の相談が続いている今、大きな声を出すのは憚られたのだ。


「で……、飛べるのか?」


 ガンジョーが言った。


「何とか、微弱だが存在はキャッチ出来てる。

 向こうの様子がわからねえから少々危険だがな」


 アキラが答える。弧次郎達を引っ張っように、美佳達を引っ張る事はできないらしい。

 こちらから行くとするなら……。

 ホーキングはアキラに尋ねた。


「転送……すんだよな?」

「あぁ、そーゆう事だ」


 ホーキングはくるっと後ろを向いて、弧次郎を呼んだ。


「弧次郎」

「なんだ?」


 二人の弧次郎が同時に答える。


「……MSガールズの方な。

 俺らは携帯に入ってた方が良さそうだ。

 向こうの状況がわかんねえからな。もし向こうが狭いところだったりしたら、壁の中とかに出かねない。出来るだけ人数を減らしといた方が良いだろ」


「ふむ……良い判断だな」


 『本物』弧次郎がうなずいた。

 ホーキングは苦笑いしながら付け加える。


「それに……紛らわしいしな?」


 弧次郎はふっと笑ってうなずいた。


「……了解した」


 ホーキングと弧次郎がスマホに戻る。

 アキラはもう一度転送するメンバーを数え、転送魔方陣の大きさを設定した。

 転送先の状況がわからない以上、魔方陣は最低限の大きさにしておくべきだろう。

 アキラは設定を完了すると、呪文を唱えた。


「よし……ヴァイポート・フィールド!」


 地面に浮かび上がる魔方陣。そこから円柱状に光の柱が立っていた。

 アキラは光の柱に入り、振り返った。


「よし、みんなフィールドに入って出来るだけ固まれ!」


 あかり、智恵、弧次郎、ガンジョーが光の柱の中に入る。


「転送ッ!」


 アキラの声とともに、あかり達は光の柱ごと消えた。

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