シーン10 魔法大戦 急。
「サイクロンウィップ! かまいたち!」
「きゃあああっ!」
無数のかまいたちが智恵を襲う。
「智恵……っ!」
身動きできないホーキングの目の前で、智恵は傷付き倒れた。
動かなくなった智恵を見下ろし、黄仙が勝ち誇る。
「おーーーーっほっほっほっほ!
これでMSガールズの一人、撃破! だねえ」
黄仙は倒れた智恵に近づいて、足先でその身体をひっくり返した。
完全に意識を失っているのか、反応は全くない。
ホーキングが存在している以上、智恵は死んでいないのだろうが、戦闘に耐えうる状況でないのは明らかだ。
「ふん、馬鹿な小娘だよほんとに。自分のパートナーを自ら遠ざけるとはねぇ。
自分一人じゃ何にも出来ないくせに、ほーんとなにが天才科学者だい」
「智恵に……触んじゃねえ……っ」
ホーキングの声に、黄仙の足が止まった。
「……確かに……そいつはバカだ。
算数おたくで頭固くて、てめえの考えだけに固執して……。
てめえの作戦で自滅してる大馬鹿もんだよ。
……だがなぁ……!
世界中で、こいつにバカっつっていいのは……俺様だけだ!!」
ホーキングがそう言う間にも、その金色の身体はギリギリと震え始めていた。そして。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
ホーキングは咆哮とともに、彼の自由を奪う呪縛を打ち破った。
「なに……っ、ロックボディを自力で解きやがった……!?」
驚愕するアキラを尻目に、ホーキングは智恵のそばへ飛翔する。
黄仙はホーキングを避け、無言で鞭を構えた。が、ホーキングの視野は智恵に集中していて、黄仙の動きは意識の外だ。
「智恵! おいしっかりしろ! 智恵!」
智恵の上に浮遊して、大声で呼びかける。が、その意識の外から、鞭が彼を襲った。
「ぐあっ……!」
苦痛に声を上げるホーキング。黄仙は嵩にかかって鞭を振るい続けた。
「ふん、えらそうな事言ってくれるじゃないか。
ぶんぶん飛び回るだけのホウキのくせに!」
ホーキングはその攻撃を一身に受け続けていた。
無論、智恵を守れなければ自分は消える。逆に言えば智恵さえ守れれば、自分が消えることもない。
とは言え苦痛もダメージも本物だ。
それでもホーキングは、黄仙の攻撃が智恵に当たらないように、自分の身体で受け続けていた。
無論、それしかない方法だとは言え、いつか限界は到来する。
「ぐ……っ……」
ホーキングの意識が、ついに消し飛んだ。カランと音を立て、傷だらけの身体が智恵のそばに落下する。
アキラが一歩前に出て、黄仙に声をかけた。
「さぁて……そろそろとどめをさしていいかな?
俺様のイミテーション、こんなんでも取り込めば、俺様の力も増すかもしれねーし?」
黄仙は少し肩をすくめ、あっさりと答えた。
「いいよ、任せる。ほとんどあんたの手柄だしね」
「んじゃ、まずはホウキくんに、惨めに真っ二つに折れてもらうとすっかな。
光の粒子よ……我に集いて刃の輪を成せ。
光円斬!」
アキラが高々と差し上げた右手の上に光粒子が集まり渦を巻く。その渦は高速で回転し、大きな回転鋸を形成した。
アキラが右手をホーキングに向けて振り下ろす。
ブゥゥゥゥ……ンと重い音を発しながらホーキングに向かう光の円盤は、しかしその直前で弾き飛ばされた。
「何っ!?」
「マジックターンシールド……まさか!」
黄仙とアキラが同時に声を上げた時、ゆっくりと智恵が身体を起こした。
「……はぁ……っ……。
確かに……このホーキは役立たずの大馬鹿よ……。
口は悪いし無神経だし、自信家でえらそーで……。
自分じゃ何も出来ないくせに出しゃばる大馬鹿ホーキよ……。
だけどね……。
世界中でこのバカを馬鹿にして良いのは……あたしだけなのよ!」
智恵がそう叫んだ瞬間。智恵のスマホが無粋な呼び出し音を鳴らし始めた。
「この音……やっぱり……!」
音を聞いたアキラの目が鋭くなる。
智恵の足下では、ホーキングが身を起こしていた。
「ば……っ……! て、てめえ、聞いてやがったのか……っ」
先程智恵が言った言葉は、明らかに自分の言葉を真似たものだろう。
智恵に聞かれていない事を前提にわめいたのだ。それなのに。
「さぁ……ね?」
智恵は少し笑って、ホーキングを掴んで立ち上がった。
ポケットの中のスマホが鳴り続けているが、気にしている余裕はない。
黄仙が智恵の前に進み出て、鞭を鳴らした。
「ふん、何言ってんのさ。いくら仲良しになったからって、お前達の不利は変わらないんだよ!
イミテーションがオリジナルに敵うわけがないさね!」
智恵の手に握られたホーキングが、黄仙の言葉を鼻で笑って言い返す。
「はッ! 何言ってやがる……。
俺様はイミテーションのアキラ・ユーマじゃねえ……。
究極の大魔法使い……ホーキング様だ!」
その時、スマホの音が強くなり、そしてポケットの中でもわかるくらい強い光を放った。
「ホーキ……! 携帯が……!」
智恵がスマホを取り出すと、その強烈な光が周囲を照らす。
「なにっ……これは……!」
驚愕の声を残し、ホーキングは光に溶けるように、消えた。




