シーン7 その頃のアラジンと客人。
アラジンの前に置かれた大きな棺桶。その大きさは普通の棺桶に比べて優に二回り三回り大きかった。相当重そうだが、ジンはこれを引きずってきたのだろうか。
「ジニー。これは一体、どういう事なのだ?」
少しイラっとしてアラジンが問う。ジニーはちょっと目を泳がせながら答えた。
「えっとー。どうしてもこの状態でないと外出したくないとおっしゃって……。
ほら、おとたまっ!」
わき腹に肘鉄を入れられて、ジンはいそいで棺桶の蓋に手をかける。
「ハイハァ~イ♬ アラジン様のお客人様のよそいき着様を~っ!!
オォ~~プンンっ!!」
ジンの大きな手が棺桶の分厚い蓋をぐいっと持ち上げた。
中には……棺桶。
「ジニー。これは一体、どういう事なのだ?」
「えっとー。
ん~もう、おとたまっ!!」
「ハイハァ~イ♬ アラジン様のお客人様のよそいき着様の、そのまた中身のおしゃれ着様を~っ!!
オォ~~プンンっ!!」
ジンの大きな手が棺桶の中の棺桶の蓋をぐいっと持ち上げた。
中には……棺桶。
少し小さめだが、金色に輝く装飾が施され、中におさめられた人物の身分の高さを表している。
「ジニー。これは一体、どういう事なのだ?」
アラジンはその棺桶を見つめたまま、もう一度言った。
「えっとー。宮殿にいらっしゃる時もこの状態でしたのでー……」
ジニーは少し肩をすくめて言った。
ジンとジニーがこの客人の宮殿についた時から、彼はこの棺桶の中に籠っていて、顔も見せてはいない。そもそもジンもジニーも客人の顔は知らされていなかったから、見たところで何の確認もできるものではなかったが。
「な、なるほど……」
アラジンはぎこちなくうなずくと、客人の棺桶に近づき、コンコン、とノックした。
「到着しましたぞ。是非、このフタを開けて、出てきて頂けませぬか」
だが棺桶は微動だにせず、中から物音も聞こえて来ない。
「ううむ……」
少し困り顔のアラジンに、音もなく近づいて、ジンはささやくように言った。
「ずいぶんと満を持しておられるようですなぁお客人は。
ふふん♪ 父は満を持す事からは卒業したのだよジニー?」
「おとたまうるさい。
アラジン様、実はあたしもお客人のお顔を見てはいないのです。
フタを閉めたまま少し会話をしただけで……」
その報告を聞き、アラジンは小さく何度もうなずいた。
「ふむ……。と言う事は、外の音は聞こえているのだな?
よしわかった。
友人である私が呼びかけているとわかれば出てきてもくれよう」
そう言ってアラジンは大きく息を吸い、気合を入れた。
「むんっ!
我が名はアラジン!! 出でよぉ~! ツタンカーメン王~~~~!!」
アラジンのあらん限りの声が宮殿に響き渡った。
そして。
「……出て来られませんね」
ジニーがちょっと言いにくそうな顔で言った。
アラジンはほとほと困ったという顔でぼやく。
「……折角、やっと友人の名を明かしたというのに……」
その時、棺桶の蓋が少し開いて、その隙間からか細い声が漏れて来た。すかさずジンがその隙間に聞き耳を立てる。
「ほほうなになに? な、なんと!!
アラジン様、少し蓋が開いて、その隙間からか細い声が!
って、我ながらなんて説明台詞なのだい!」
「良いからツタンカーメン王の言葉を聞け」
「ハイハァ~イ♪
……なになに? アラジンなどと言う奴は知らん。会った事もない。
しょーーーーうげきの! じーーー! じーーー! つーーーーー!!」
がばっと顔を上げ、アラジンの顔を見ながら大声を上げるジン。
ジニーは鋭く息を吐いた。
「……おとたまほんとうるさい」
アラジンはそれどころではなく、狼狽してジンの肩を掴む。
「な、何っ!?
そ、そんなことはないはずだ!
確かに面識はないが……私は彼の事を良く知っている!
彼も私の伝説を知らぬはずはあるまい。
お互いに知っているのだから、これはもう友だちだろう……!」
ジンをぐわんぐわんと揺さぶりながらそう言うと、アラジンはがらりと口調を変えて棺桶に語りかけた。
「……なぁ、どうしたんだよツーたん……」
その呼びかけに、棺桶がガタッと鳴った。
「ハイハァ~イ♪
……なになに? その呼び方はやめろ。私はお前など知らぬ……。
ショーーーーーーーック! アラジン様ショーーーー……ぐはっ」
「ほんっとにデリカシーのないっ!」
ジニーは赤くなった拳を撫でながら父親にそう言うと、アラジンを元気づけるように声をかけた。
「あ、アラジン様っ、でもでも、ツタンカーメン様は、アラジン様の助っ人は、して下さるそうです!」
アラジンはがっくりと肩を落とし、涙目で応えた。
「む……そうか。それは……なによりだ……」




