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夢幻戦隊MSガールズ  作者: 硫化鉄
第十話 「彷徨」

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シーン9 青いピンチ

 黄仙がムチを鳴らしながら近づいてくる。智恵はじりじりと後退りして距離を取っていた。

 全力で逃げ出したいのだが、すぐに追い付かれるのは目に見えていたし、走ることで体力を消耗するのも避けたかった。

 黄仙は焦らすようにゆっくり近づいて来る。その理由はわからなかったが、今はその状況に乗るしかなかった。


「どうしたら……どうしたらいいの……! このままじゃ……」


 しかし事態が好転する要素は全く無く、状況は絶望的と言って良い。

 智恵の悲壮感漂う表情に、黄仙は高笑いを浴びせた。


「おーーーーっほっほっほ!

 考えても無駄無駄!

 変身も出来ないくせに、この黄仙姐さんに対抗出来るわけないだろ?

 たっぷりと恐怖を楽しんでもらわなきゃねェ?」


 黄仙はゾクリとするような妖艶な笑みを浮かべて、また一歩、智恵に歩み寄った。


「そーそーそ。さっきから新しいパートナー考えてたみてえだけどさー。

 出来るわけねーじゃん?

 自分の妄想の原点すら忘れてる奴には、新しい妄想どころか妄想の再生すらできねーよ!」


 二人の様子を眺めていたアキラが馬鹿にしたように大声で嘲る。だが智恵はその言葉にハッとした。


「妄想の……原点……!」


 智恵の脳裏に引っかかっていた言葉が蘇る。


 ――その知恵と力と勇気を手に入れるには、絶対にあきらめずに今をしっかり生きることだ――


「諦めない……!

 あたしの原点……絶対に見つけてみせる……!」


 智恵の目に力が戻った。

 だがそれより早く、黄仙は一気に距離を詰めて、ムチを振り上げていた。


「無駄だって言ってんだろ!

 これで終わりさね!

 サイクロンウィップ!」


 しなるムチが空を斬り、いくつもの真空の刃を放った。かまいたちだ。

 放たれたかまいたちは正確に智恵を襲う。


「きゃぁぁっ!!」


 智恵が悲鳴を上げた途端、かまいたちは智恵に触れることなく、手前で弾かれ消滅した。


「な、なんだい!?」

「結界を張った……だと?」


 黄仙とアキラが同時に声を上げた。


「無意識に魔力を発揮したってのか……!?」


 信じられないという表情でアキラが呟く。黄仙は忌々しげにムチを智恵に振り下ろした。が、結界に弾かれてしまう。


「くぅぅ、いらつくねえ……!

 アキラ、こんな結界破れないのかい?」


「ここはこいつの妄想領域だ。そう簡単にはいかねーだろうな。

 結界を破るのが先か、こいつがパートナーを作り出すのが先か……。

 ま、結果は見えてるけどな」


 アキラはまだ余裕の顔で言った。多分それは事実なのだろう。智恵は自分に残された時間は少ないと感じていた。


「くっ……急がなきゃ……!」


 智恵は目を閉じた。結界がどれだけ持つのかわからないが、それまでにパートナーを作り出さなければならないのだ。


「よーし爆乳ねえちゃん、全力で結界、ぶっ壊すぜ!」


「あぁ。あんたこそ、手を抜くんじゃないよ!」


 智恵の頭上で黄仙のムチが、アキラの魔法が、耳をつんざく音を立てて結界に叩きつけられる。


「あたしの……原点……!」


 智恵がそう呟いた時、襲いかかる轟音が、智恵の意識から、消えた。

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