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正義の軍略家 ~自衛隊エリート、異世界で義勇軍を率いて腐敗を討つ~  作者: ローナ


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夜襲作戦と、補給線の破壊

夜の森は静まり返っていた。

月明かりだけが木々の隙間から差し込み、地面に淡い影を落としている。

神崎蓮は木陰に身を潜め、遠くに見える奴隷商人のキャンプを観察していた。

敵の規模は予想通り大きかった。馬車が二十台以上、護衛の傭兵とヴォルド男爵の兵を合わせて約八十名。

中央に大きな檻がいくつも並び、捕らわれた獣人たちがうずくまっている。

エリシアが隣で低く囁いた。

「蓮……本当に少数でやるのか?」

「ああ。

正面からぶつかれば勝てない。

現代のゲリラ戦術で、補給線を断つ。

目的は三つ——捕虜の解放、物資の奪取、そして敵の士気低下だ」

ルークとシオンが左右に控えていた。

狼族の少年と猫族の青年は、獣人の優れた夜目と敏捷性を最大限に活かせる斥候役として選ばれていた。

蓮は静かに作戦を最終確認した。

「ルークとシオンはまず、キャンプの反対側で火を起こして注意を引け。

大きな音と炎で混乱を誘う。

その隙に、俺とエリシアが中央の檻に接近。鎖を切り、捕虜を解放する。

解放した者はすぐに森へ逃がす。

物資は食料と武器を中心に、持ち運べる分だけインベントリに詰め込む」

簡易インベントリが少し拡大した今、蓮一人でかなりの量を運べるようになっていた。

「撤退は合図の笛で。

絶対に深追いするな。目的は村への直接攻撃を防ぐことだ」

全員が頷いた。

蓮の指揮はすでに、仲間たちにとって絶対的な信頼となっていた。

作戦開始の合図とともに、ルークとシオンが森の奥へ消えた。

数分後、キャンプの反対側で突然大きな炎が上がり、叫び声が響いた。

「火事だ! 魔物か!?」

「敵襲! 迎え撃て!」

傭兵たちが慌ててそちらへ移動する。

混乱の隙を突き、蓮とエリシアは低姿勢で素早く中央へ接近した。

エリシアの狼族の力で鉄の鎖をへし折り、蓮が檻の扉を開ける。

捕らわれていた獣人たちが、驚愕の目で二人を見上げた。

「静かに。俺たちは『秩序の盾』だ。

今、逃がす。森の奥へ一直線に走れ。

怪我人は背負ってでもいい、絶対に置いていくな」

解放された獣人は二十名近くいた。

怯えながらも、希望に満ちた足取りで森へ消えていく。

一方、蓮は馬車の荷物を素早く確認した。

食料の袋、武器の束、治療用のハーブ。

これらを次々と簡易インベントリに収めていく。

エリシアが横で剣を構え、近づいてくる敵を牽制した。

「蓮、時間がない!」

「もう少し……これで十分だ」

蓮が最後の袋を収めた瞬間、敵の斥候に発見された。

「そこだ! 侵入者!」

傭兵たちが殺到してくる。

蓮は即座に声を上げた。

「撤退! 合図の笛を吹け!」

エリシアが短い笛を吹き鳴らす。

ルークとシオンが遠くで応答の合図を返した。

撤退戦が始まった。

蓮とエリシアは森の中を駆けながら、追ってくる敵を最小限に引きずる。

自衛隊で学んだ「遅滞戦術」を簡易的に再現——木の根や茂みを活かして足止めし、決して深追いさせない。

エリシアが後ろを振り返りながら言った。

「本当にすごい……ただの人間なのに、夜の森でこれだけの作戦を完遂するなんて」

「経験だ。

そして、お前たちの力があるからこそ」

二人は合流地点でルーク、シオンと再会した。

解放した獣人たちはすでにエルム村方面へ逃げ始めていた。

しかし、敵も黙ってはいなかった。

「待て! あの若造が首謀者だ!

捕まえろ!」

ヴォルド男爵の兵の一部が、執拗に追いかけてきた。

十名ほどの小部隊だ。

蓮は木陰で足を止め、冷静に判断した。

「ここで迎え撃つ。

少数戦なら勝てる。

エリシア、左から回り込め。

ルークとシオンは援護」

即席の待ち伏せ陣形が完成した。

敵が近づいた瞬間、蓮が先頭に飛び出した。

レベル19の身体能力が、暗闇の中で敵を翻弄する。

ナイフで急所を的確に打ち、殺さずに戦闘不能にする。

エリシアの強力な一撃が、横から傭兵を吹き飛ばした。

ルークとシオンの投石が、敵の視界を乱す。

戦いは短時間で決着した。

追ってきた敵は全員倒れ、蓮たちは無傷で撤退に成功した。

【スキル『ゲリラ戦指揮』 レベル1を取得しました】

【クエスト『補給線を乱せ』 完了!】

【経験値大量獲得】

【現在のレベル:21】

村へ帰還した時、解放された獣人たちがすでに到着し、村人たちに温かく迎えられていた。

総勢は一気に67名に増えていた。

広場で、蓮は皆の前に立った。

「今夜の作戦は成功だ。

敵の食料と武器を奪い、捕虜を解放した。

これで当面の直接攻撃は遅れるはずだ。

しかし、ヴォルド男爵はさらに大軍を繰り出すだろう。

俺たちはこれを機に、軍団をさらに組織化する。

分隊制を導入し、役割を明確にする。

前衛、中衛、斥候、補給、後方支援——それぞれに責任者を選ぶ」

エリシアが即座に名乗り出た。

「前衛を任せてくれ。

獣人の力で、敵の突撃を止める」

シオンも続いた。

「斥候と工作は猫族の俺がまとめる。

夜の偵察は任せろ」

ルークが元気よく手を挙げた。

「僕も斥候チームに入る!」

蓮は満足げに頷いた。

「いいだろう。

これで『秩序の盾』は、ただの集団ではなく、本物の軍団の形になりつつある。

俺は全体の戦略と指揮を担う。

皆で協力して、腐敗した支配を打ち破ろう」

焚き火の周りで、獣人と人間が肩を並べ、興奮と希望に満ちた話し声が上がっていた。

蓮は少し離れた場所で、静かに考えていた。

現代の軍事知識が、少しずつこの世界に根を張り始めている。

まだチートらしい大規模な力は目覚めていないが、仲間たちの成長と結束が、確かな力になっていた。

しかし、遠くから聞こえる馬の蹄の音は、

次なる大規模な報復を予感させていた。

ヴォルド男爵の本気は、まだこれからだ。

蓮は拳を握り、夜空を見上げた。

「来るなら来い。

俺はここで、正義の軍団を育て上げる。

どんな敵が来ても、戦略で勝つ」

『秩序の盾』の炎は、

辺境の闇の中で、静かに、しかし確実に大きくなり続けていた。

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