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正義の軍略家 ~自衛隊エリート、異世界で義勇軍を率いて腐敗を討つ~  作者: ローナ


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拠点拡大と、新たな仲間

ヴォルド男爵の報復軍を退けてから三日が経った。

エルム村は、傷ついた者たちの手当てと防衛強化で慌ただしい日々を送っていた。

木柵は修復され、落とし穴はさらに増やされ、見張り台は二つ追加された。

神崎蓮は朝から晩まで村を駆け回り、訓練と内政の両方を指揮していた。

「衛生が最優先だ。

傷口は必ず煮沸した布で消毒。

水は井戸から汲む前に一度沸かしてから飲め。

病人が出れば、戦う前に負ける」

蓮は女性たちに現代の基礎衛生知識を繰り返し教えていた。

この世界では魔法で治せると思われがちだが、辺境では魔法使いが少なく、日常の予防が命を救う。

エリシアが汗を拭きながら近づいてきた。

「蓮、訓練の成果が出始めている。

獣人の若者たちが前衛でかなり粘れるようになった。

でも……食料が心許ない。

この人数だと、畑だけではすぐに底をつく」

「わかっている。

だから今日は、拠点を広げる」

蓮は地図代わりの羊皮紙を広げた。

「エルム村だけに留まっていると、包囲された時に終わる。

近くの廃村『ミスト村』を第二拠点にする。

そこを修復し、農地を増やし、逃げてきた者たちの受け入れ態勢を整える。

今日から作業隊を編成する」

ルークが耳をピクピクさせて駆け寄ってきた。

「僕も行く! 斥候として道を安全に確認するよ!」

「ああ、頼む。

エリシアは村の防衛を固めつつ、作業隊の護衛を。

俺は両方を回る」

午後、『秩序の盾』の二十名がミスト村へと移動した。

廃村は森の少し奥にあり、魔物の被害で三年前に放棄されていた。

家屋は半壊しているが、井戸と石の基礎は残っていた。

蓮は到着するなり、即座に指示を出した。

「まずは周囲の魔物掃討。

次に主要な建物の修復。

畑の雑草を刈り、水路を復旧させる。

現代の知識で効率を上げる。

分業を徹底しろ。一人一人が無駄な動きをしないように」

自衛隊で学んだ「作業効率化」の考え方を、ファンタジー世界に持ち込んだ。

道具の使い方、休憩のタイミング、役割分担——どれもこの世界では新鮮だった。

作業が進む中、ルークが森から慌てて戻ってきた。

「蓮さん! 近くの森に、獣人の集団が隠れている!

十名くらい。怪我人が多くて、動けないみたい……」

蓮はすぐに作業を中断させた。

「エリシア、護衛を連れて行け。

俺もついていく」

森の奥で発見したのは、ボロボロの獣人たちだった。

猫族と狐族が中心で、老人と子供が半数以上を占めていた。

奴隷商人に村を襲われ、逃げ惑ううちにここまで来たという。

リーダー格の猫族の青年、シオンが弱々しく頭を下げた。

「人間の村に……助けを求めるのは、危険だとわかっている。

だが、もう限界だ……」

蓮は青年の肩に手を置いた。

「危険ではない。

ここは『秩序の盾』の拠点だ。

種族は関係ない。力になりたいと思う者なら、誰でも受け入れる。

まずは怪我の手当てを。食料も分ける」

シオンが驚いた顔で蓮を見上げた。

「本当に……いいのか?」

「ああ。

一緒に強くなろう。腐敗した貴族と奴隷商人から、この大陸の弱い者を守るために」

その言葉を聞いた獣人たちの目に、初めて希望の光が宿った。

夕方までに、十名の獣人がミスト村に収容された。

『秩序の盾』の総勢は55名に膨れ上がった。

夜、焚き火を囲んで簡単な歓迎の場が設けられた。

蓮は皆の前に立ち、静かに語りかけた。

「これから俺たちは、二つの村を拠点に活動する。

エルム村を軍事拠点、ミスト村を食料・後方支援拠点とする。

訓練は両村で並行して行い、情報はルーク率いる斥候隊が繋ぐ。

目標は明確だ。

奴隷商人の壊滅、ヴォルド男爵の打倒、そして魔王軍の脅威への備え。

すべては、正義と秩序のために」

エリシアが力強く頷いた。

「私も全力で支える。

前線で戦うだけでなく、獣人たちの士気を保つ役目も担う」

シオンも立ち上がり、控えめに言った。

「俺は猫族の敏捷性を活かして、偵察や工作をやる。

恩返しをさせてくれ」

ルークが尻尾を振って笑った。

「みんなが増えて、嬉しいよ! 僕ももっと頑張る!」

蓮は内心で満足していた。

多種族が混ざり合い、役割分担が生まれ始めている。

これは単なる村の自警団ではなく、軍団の原型になりつつあった。

作業の合間に、蓮の頭に新たな通知が浮かんだ。

【スキル『拠点開発指導』 レベル1を取得しました】

【称号『多村の統治者』を取得しました】

【現在のレベル:19】

力は着実に増え続けている。

しかし、蓮はまだ慎重だった。

チートらしい大規模な力はまだ目覚めていない。

すべては自分の経験と、仲間たちの成長で勝ち取るつもりだった。

翌朝、斥候から重要な報告が入った。

「西の方から、大きな馬車隊が近づいている。

奴隷商人の本隊らしい。

護衛は五十名以上。

どうやら、ヴォルド男爵の兵と合同で動いている模様です」

蓮は地図を睨みながら静かに言った。

「ついに本格的に来たか……

ここで迎え撃つ。

だが、ただ守るだけではない。

奇襲を仕掛け、敵の補給を断つ。

現代のゲリラ戦術を、この世界で初めて試す時だ」

エリシアが目を鋭くした。

「具体的な作戦は?」

「夜襲だ。

ルークとシオンで敵の動きを監視。

俺とエリシアを中心に、少数で敵の後方を突く。

目的は捕虜の解放と、物資の奪取。

村を直接攻めさせない」

ルークとシオンが同時に頷いた。

「了解!」

蓮は拳を軽く握った。

「『秩序の盾』はもう、ただの村の集団ではない。

俺たちが正義の軍団として、最初の一歩を踏み出す。

皆、準備を。

勝つのは俺たちだ」

ミスト村の空に、朝日が昇っていた。

二つの村を拠点に、

神崎蓮率いる『秩序の盾』は、

辺境の小さな抵抗から、

本格的な成り上がりへの道を歩み始めていた。

遠くで、敵の馬車隊がゆっくりと近づいてくる気配がした。

しかし、蓮の瞳には迷いなど微塵もなかった。

正義の軍略家は、静かに次の戦いの準備を整えていた。

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