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正義の軍略家 ~自衛隊エリート、異世界で義勇軍を率いて腐敗を討つ~  作者: ローナ


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魔王軍の先遣隊と、黒の将軍の影

盾の牙要塞は、夜通し灯りが消えなかった。

王国軍の監視部隊が28km地点に留まり、魔王軍の黒い霧が北東の森で急速に勢力を拡大している。

総勢330名に達した『秩序の盾』は、最大レベルの警戒態勢に入っていた。

神崎蓮は司令室で、地図を前に幹部たちと緊急会議を続けていた。

疲労の色が濃いが、誰も欠席しなかった。

エリシアが声を低くして報告した。

「魔王軍の先遣隊がさらに増強されました。

黒い霧の魔物は現在300体を超え、森の奥で明確な陣形を取っています。

大型の黒霧オークや、霧を操る魔導型の魔物も確認されました。

このままでは三日以内に要塞周辺の村が襲われます」

シオンが地図に印を付けながら続けた。

「王国軍の動きも連動しています。

彼らは魔王軍の接近を察知しつつ、俺たちを牽制する位置を維持。

黒鉄商会の残党が王国軍に情報を流している可能性が高いです」

ルークが拳を握りしめて言った。

「王国軍が邪魔しなければ、僕たちだけで魔王軍を叩けるのに……」

ガルムが重々しく頷いた。

「二正面は限界だ。

魔王軍に集中すれば王国軍が背後を突き、王国軍に集中すれば魔王軍が村を蹂躙する」

ミアも声を震わせた。

「食料と矢の備蓄が急激に減っています。

この状態で長期戦になれば……」

蓮は皆の顔をゆっくりと見回し、静かに、しかし力強く言った。

「ここで決断する。

魔王軍の先遣隊を優先的に叩く。

王国軍に対しては、直接衝突を避けつつ『共同の敵』として認識させる。

魔王軍をある程度弱体化させれば、王国軍も俺たちを無視できなくなるはずだ」

彼は地図に指を置き、具体的な作戦を説明した。

「作戦名『霧払い』。

主力90名で魔王軍の先遣隊を奇襲する。

第一波:エリシアとガルム率いる前衛40名が正面から圧力をかけ、敵の注意を引く。

第二波:シオンとルーク率いる斥候・側面攻撃隊30名が、森の奥から回り込み、指揮系統を乱す。

第三波:俺が率いる精鋭20名が、黒い霧の中心にある指揮官級の魔物を狙う。

目的は完全殲滅ではなく、指揮官の排除と、魔王軍の進出を遅らせること。

王国軍には、討伐後に『魔王軍対策に貢献した』という事実を伝える」

エリシアが即座に頷いた。

「了解。前衛は任せて。

ルーク、お前は私の横で戦え。 お前の速さが鍵になる」

ルークの目が強く光った。

「うん! 僕、絶対に頑張る!」

作戦決行は翌日の夜明け前。

要塞を出発した討伐隊は、森の奥深くへ静かに進んだ。

黒い霧が濃くなるにつれ、空気が重く淀んでいった。

森の中心部に到達した瞬間、黒い霧が一気に渦を巻いた。

「来るぞ!」

エリシアの号令とともに、前衛が突撃した。

彼女の狼族の力強い一撃が、黒霧オークを吹き飛ばす。

ガルムが重い棍棒で周囲を薙ぎ払い、ルークは素早い動きで敵の隙を突いた。

「蓮さん! 奥に大きいのがいる!」

ルークの叫び声に、蓮は即座に反応した。

「全軍、陣形を維持! 俺が中心を突く!」

蓮は精鋭隊を率いて黒い霧の最深部へ突入した。

そこにいたのは、黒い甲冑のような外殻を持つ大型の魔物——黒の将軍の分身と思われる存在だった。

体長は3メートルを超え、赤い目が不気味に輝いている。

【鑑定(低級)強化版】が発動し、情報が浮かんだ。

黒霧の将軍分身 LV42

特殊能力:霧支配・指揮強化

蓮は冷静に指示を飛ばした。

「エリシア、左翼を抑えろ! ルーク、右から注意を引け!

俺が本体を狙う!」

激しい戦闘が始まった。

黒い霧が触手のように伸び、隊員たちを絡め取ろうとする。

エリシアが力任せに霧を切り裂き、ルークが高速で霧の隙間を縫って攻撃を加えた。

蓮は自衛隊の戦術を基にした最小限の動きで霧をかわし、将軍分身の急所へ迫った。

ナイフを握る手に力がこもる。

「ここだ!」

一瞬の隙を突き、蓮は将軍分身の胸部に深くナイフを突き刺した。

黒い霧が激しく暴れ、将軍分身が咆哮を上げた。

【スキル『指揮官討伐』 レベル1を取得しました】

【現在のレベル:41】

将軍分身が崩れ始めると、周囲の黒い霧が一気に薄れた。

魔物たちの連携が乱れ、討伐隊の反撃が加速した。

戦いは一時間半で決着した。

魔物200体以上を討伐し、将軍分身を撃破。

討伐隊の損害は軽傷者12名と、予想を大幅に下回る結果となった。

要塞へ凱旋した一行は、広場で大きな歓声に迎えられた。

蓮は皆の前に立ち、声を張った。

「魔王軍の先遣隊に大きな打撃を与えた!

これで当面の村への脅威は遠ざかった。

しかし、油断は禁物だ。

王国軍への報告も同時に行う。

俺たちが魔王軍と戦っている事実を、しっかり伝える」

その夜、王国軍の監視部隊に使者を送った。

翌朝、カイル中尉が単身で要塞にやってきた。

彼の表情は複雑だった。

「神崎蓮……お前たちが魔王軍の先遣隊を撃破したという報告は本当か?」

「ああ。本当だ。

詳細な戦果はここにまとめてある。

王国軍も魔王軍対策に本腰を入れるべきだ。

俺たちは独自に戦うが、必要なら情報共有もする」

カイルは書類を受け取り、しばらく沈黙した後、ため息をついた。

「第三王子殿下は、お前たちを『利用価値あり』と判断しているようだ。

当面は監視を継続するが、即時討伐は見送る。

ただし……王国への忠誠は依然として求められている」

蓮は静かに答えた。

「理解した。

俺たちは王国と敵対するつもりはない。

しかし、辺境の民を守るという信念は曲げない」

カイルが去った後、エリシアが蓮の横に立った。

「よくやった、蓮。

王国軍を完全に敵に回さず、魔王軍に打撃を与えた。

あなたの戦略は本当に素晴らしい」

ルークが笑顔で飛びついてきた。

「蓮さん! 僕、今日も戦えたよ! みんなを守れた!」

蓮は皆の顔を見て、静かに微笑んだ。

「ありがとう。

お前たちのおかげだ。

しかし、これで終わりではない。

魔王軍の本隊はまだ遠くにいる。

王国との関係も、いつ崩れるかわからない。

これからも領地を固め、軍団を強くし続ける。

正義の軍略家として、俺は道を切り開く」

その夜、蓮は要塞の屋上で星空を見上げながら、静かに誓った。

「二つの脅威の間でバランスを取りながら、力を蓄える。

王国、魔王軍、そしてすべての理不尽に立ち向かう。

仲間たちとともに、この世界に真の秩序を築くまで——」

遠くの森では、新たな黒い霧がゆっくりと生まれ始めていた。

王国軍の野営地では、火が静かに燃え続け、

『秩序の盾』の動きを、慎重に観察していた。

神崎蓮の戦いは、

二正面の危機を乗り越え、

さらなる大きな舞台へと、

確実に進もうとしていた。

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