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「ウィルヘルム公爵令嬢とエイブンローズ伯爵令嬢にポーションを盛った!?」
防音の魔法を執務室にかけて正解だった。目を大きく開いた王太子の声が部屋に響く。
「あのまま様子見をすれば精神が崩壊する可能性もありました。正直に話して飲んで貰えるとも思えませんでしたので」
我ながら苦しい言い訳である。
精神崩壊の可能性が高いのも、正直に話しても飲んで貰えないのも事実。けれど、王太子や陛下に相談すれば正規ルートで飲ませる事も不可能ではなかっただろうと冷静になればわかる。
「信頼できる鑑定士を呼んで、公爵と伯爵に直接見て貰う他ないな」
善意を押売するより物的証拠の方が有効だろうな、と陛下も続いた。二人とも額を押さえている。
「申し訳ありません」
「いや、責めている訳じゃない。報告を受けて公爵や伯爵に根回ししている間に精神が崩壊していなかった保証もないからな」
「先に第二王子で効果を証明しておいてよかった」
確かに、最初の被検体が王族で安全性が保証されているものだったと説明できるのは大きい。
公爵家と伯爵家へ連絡を入れるというのでザラは一度自分の離宮へと戻った。
《オソーイ》
《マッテタ》
《チョット、プンスカ》
「ごめん。調べてくれてありがとう」
公爵令嬢と伯爵令嬢を放置する訳にもいかず、部屋で待って貰っていた。謝罪と礼を言って報酬の魔石を渡すと一気に機嫌が良くなった。よかった。他の精霊達は魔石を受け取るとどこかに行ってしまった。まあ、怒ってはなさそうだったから大丈夫かな。
「…うーん…結構洗脳されてる……同学年の影響が大きいのは建物が同じだからとしても…影響下にいないのが私だけってそんな事ある?学年別で校舎違うのに?」
いや、でも確かに私はペネロペの名前も顔も知らなかったけど。
「助けるのは令嬢が優先かな…」
食堂で令息令嬢を鑑定した時から思ってはいたけれど、魅了の度合いと精神負担度って比例しないんだよね。
魅了が進んでいるのが男子生徒が多くて、精神負担度が高いのは女子生徒が多いのは、ペネロペへの感情=精神負担度だから?やってる事は同性に嫌われる見本みたいな事が多いし。
「生徒の六割は信者っていうのはかなり不味いけど、初対面の保護者相手に魅了を使ってもすぐに効果がでないのにどうするつもりなんだろう」
《ナカヨシ、ウツール》
《シンライシテル、ミリョウ、ウツール》
《モウ、ミリョウ、サレテルカモ?》
「待って!?どういう事!?」
精霊達から説明をしてもらった。カタコトだから理解するのに時間がかかったが、彼らのもたらした情報は恐ろしいものだった。
ペネロペの魅了の力は最初こそ弱いが、使えば使う程力が増していくタイプである事。力が増すと使用できる範囲も強くなり、好意がある相手限定からはじまり、感情の好嫌に関係なく接触頻度の高い者、同じ空間に一定時間いる者…という感じで影響範囲が広がっていくらしい。病原菌じゃあるまいし勘弁して欲しい。
そして、もっとも厄介なのが、洗脳レベルAの人数が一定数を越えると、洗脳されている家族にも直接ペネロペと会った事がなくても彼女に好印象を抱くというのだ。
いや、なんで!?
精霊に問いただしても《コンカイハ、ソウイウタイプ》と返されるのみ。いや、そうなんだろうけど…そうじゃないんだよ。
家族への影響は洗脳されている者との関係性によって差が出るらしい。家族仲が良いほど強い影響を受けるとか。
「……あれ、公爵って子煩悩で有名だったような…」
王太子に押し付けたけど、もしかして悪手だった?
解毒剤とはいえ薬を盛ったのは事実だ。
もしかして、世界を救う前に私が滅ぶ感じ?
そんな事を考えたのがいけなかったのか、顔色を悪くした王太子から公爵から謁見の申し込みが入ったと伝令が届いた。タイミング的に魅了の説明ができていないと思われる……オワッタ。




