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――ケース2・泉尾 輝の場合――
泉尾 輝は、32才、保母、独身。
職場は、ひまわり保育園に所属していた。
短大卒業後、ひまわり保育園に保母として働く。
勤務年10年、合コンに積極的に参加していて結婚に焦っていた。
彼女は、2歳児クラスの『りんご組』を担当していた。
副担任には、大黒 弓。
だが、この二人は共同して一つの問題を起こしていた。
「泉尾 輝は、残念ながら保育園児に暴行を行なっていた。
その泉尾に、大黒も共同で関与していた」
「暴行した理由は?」
「勝手にスマホを、見られたのが原因です。
昼寝の時間に、何気なく起きた保育園児『怜央』は不在の泉尾の置かれたスマホを見てしまう。
それを見つけてしまった泉尾は、怜央を連れて倉庫に向かったのです。
その倉庫で、怜央に対して頭を逆さ吊りにされて、暴言を言ったのです」
「それが、暴言と暴力の原因ね」
「しかし、それを見ていた人物がいました」
「副担任で、後輩の大黒。彼女は、泉尾に逆らえなかった。
お金を貸していたようだし、他にもいろいろ面倒を見ていた。
そこで、大黒も仕方なく共同で暴力に加担したのです」
どこか、悲しそうな顔で言っていたエイレネー。
彼女にしては、珍しく落ち込んでいるようにも見えた。
「エイレネーは、この保育園の調査を続けていたんでしょ」
「そうですね。でも子供を大事にする保育園で、あるまじき行為です」
「エイレネー、怒っている?」
「いいえ、哀しいだけです」
エイレネーは、少し変っていた。
彼女はなぜか、小さい子が好きなようだ。
エイレネーの趣味嗜好は、分かっていて……背が低い私のことも好きなのはそういう理由だろう。
「でも、どうして暴行なんかしたの?スマホを見ただけでしょ」
「彼女の性格が、短気だからではないでしょうか?」
「いえ、それは無いです」否定するのはメタトロン。
「メタトロン、泉尾は短気です」
「いいえ、彼女は短気ではありません。
性格分類的に見ても、彼女は短気ではありません」
「でも、スマホを見ただけで起るとか……」
「この時代のスマホは、人間の全ての情報とみてもいいです。
怜央が見たのは、泉尾のスマホ……ではなく秘密を見ました。
それが、彼女の怒りに火をつけた。
それは、まるでエイレネー様がエウノミア様を大好きであるのと同じです。
エイレネー様も、エウノミア様が傷つけられたら怒るでしょう」
「それは、エウノミアちゃんが傷ついたら……消し去るかもです」
目を細めて、恐ろしいことを言ってくるエイレネー。
だけど、エイレネーより私の方が年上だけど。
「大事なモノを傷つけられて、彼女は激高した。
泉尾の中にある大事なモノは、スマホの中にあるモノでそれが子供であっても勝手に見られて許せなかった」
「じゃあ、この子も最高の人材にはふさわしくないわね」
「感情的なのはいいけど、無抵抗な人間に暴力を振るう事を躊躇わない人間はふさわしくない」
私は、そう結論づけていた。
「では、三人目の人間……柴島 栄五郎の報告をするわ」
私はそういいながら、三人目の話をしていた。




