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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
二話:独身保母・『泉尾 |輝《あきら》』
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あたしの家族は、普通の家族だ。

両親とあたし、三人の家族。

だけど両親の喧嘩を見て、あたしは両親に対する考えが変わってしまった。


それまで、取り繕われた両親の寵愛を素直に受けられなくなった。

両親が怖いとさえ、感じるようになった。


「優しくない……効くなぁ」

「ごめん、マジで」再び謝罪する海。

だけど、あたしは分かっていたのかもしれない。

保母という職業をやっていて、みんながあたしを優しい人間だと思っていた。

子供を相手にする仕事でありつつも、どこかに愛を感じられなかった。


「それはその……」

「誤魔化さなくていいよ。本当に、あたしも思っていたし……それが今の結果だ」

強くありたい、それ故に忘れてしまったこと。

それは、あたしの性格の全てだ。

言いながらも、あたしは泣き出した。

れおに対して、申し訳ない気持ちがわき上がったからだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

「何、泣いているんだ?」

「だって、あたし……取り返しのつかないことをした」

れおを、いじめた。

儀式ということで、あたしは彼を虐待した。

パパと同じで、それ以上に酷いことをした。

まだ小さいれおは、逃げることも声を出すことも出来ないのだから。


「やっぱり、あたしには保母も無理かな?」

「そんなことは無い。まだ30代だろ、やり直せるよ」

「でも、あたし……」

「大丈夫、それを認めて罪を償えばいい」

泣き出すあたしを、優しく抱きしめた海。

その顔は、少し汗臭かったけど温かい。

久しぶりに感じた海のぬくもりに、あたしは涙が溢れていた。


「うん、優しいよ。海は。ズルいほどに」

そう、あたしは海の優しさに触れて好きになったんだ。

こういう所が、気が利く彼があたしは好きだった。


だが、そんなあたしと海のベンチの雰囲気を一つの言葉が切り裂いた。


「こら、そこの若いの。夜中に、公園で騒いでいるんじゃ無い!」

それは、公園の入口から聞こえた声。

立っていたのは、一人の老人。

険しい顔であたし達を睨んで、大きな声で叫んでいた。



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