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332 町はずれで薬屋を営むずぼらな彼女は我が子たる薬を商人に託して売り上げを伸ばしてたが

「(バタッ)

…いらっしゃーい………

おー、商人君じゃん。

こっち戻ってたんだ。

確か、海の方の街に行ってたんだっけ?

どう?あたしんとこの薬高く売れた?

………

…おー、さすが商人君。相変わらず商売上手いね。

こんな辺鄙な店で売るより、何倍も売り上げ出しちゃうんだから。

………褒めても何も出ないよ。

まあ、うちの薬が一級品なのは間違いないけどね。

あたしの魔力を込めに込めて作った薬はどんな病気も一晩で治っちゃうから。

………えー、またその話?

下の町でお店だすって言っても、町の中ってうるさいんだもん。

薬作るのには結構集中力必要だから、こういう静かな場所の方がいいの。

あとあたし、人込みとか嫌いだし。

…まあ?こんな場所の店でも買いに来てくれる商人が目の前にいるんだし、今のままでいいかな。

………

それで、今日も薬仕入れていくの?

たくさん仕入れてくつもりなら、少しくらいまけてあげてもいいよ」




「………へー、そんな料理ははじめて聞いたな。

世の中にはいろんな料理があるんだね。

………

…んー、パス。

わざわざ食べに行くのも面倒だし。

………

…まあ、あたしは別にそこまで美味しいものを食べたいっていうのはないかな。

美味しい食べ物って言っても、一度食べちゃえばそれで終わりだからね。

そういうところに足を運ぶのも、頼んで持ってきてもらうのも手間がかかるし。

………はっはっは。

そうだよね。確かにそれ、商人の考えとは全く逆だよね。

………でも、今日はいつにもましてたくさんの薬仕入れてるけど、本当に売れるの?

いつもより2、3倍の量だけど。

………

…え、北国の街に?

確か北国って今、戦争をやってる最中なんじゃ………

………いや、だから商売時っていうのはわかるけどさ。

………

…ねえ、行くのはやめておいたら?

そりゃ、たくさん薬売ってくれるのはありがたいけど、そんな危ないところに行くくらいだったら………

………

…君って変わらないね、孤児院の時から。

一度決めたことは曲げないというか、ずっとずっと突っ走るというか。

………あー、はいはいもう何も言いませんってば。

商売頑張ってきてね。

あたしの薬もちゃーんと全部売って、売上持ってこのお店に帰ってくるんだからね」




「………はあ。

もう半年か…

こんなに長い間あいつと会ってないの、初めてだな………

ちゃんと元気にやってるのかな。

それこそ病気で倒れたり………って、そういう時はあたしの薬使えばいいだけか。

…いやいや、商人が自分の商品使ってどうすんだって話じゃん。

まあどうせあいつのことだから、そのうちひょっこり戻ってきたりして…

(バタッ)

…いらっしゃーい………

って、配達の人か…

…あっ、ううん、何でもないです。配達ご苦労様でーす。

………あ、知り合いの薬屋からの手紙だ。

わざわざ手紙なんてよこすのなんて何年振り………

………え。

(バサバサ)

………あいつが、死んだ………?」




「(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

………死んだ。

死んだ。

死んだ。

死んだ。

あいつは戦争に巻き込まれて、死んだ………

孤児院で仲良かったあいつは、死んだ………

………

………

………

…はっはっは。

やだなあたし。

死んでから、あいつの存在が大きかったことが分かるなんて…

………

………

………

………あいつはもういない。

店には来ない。

薬を仕入れに来ない。

あいつの顔は見れない。

あいつとは話せない。

あいつに会えない………

………

………

………

どうして?

どうしてもう会えないの?

あたしが止めなかったから?

あたしが、薬を作って売ってたから?

………はっはっは。

………

………

………

…じゃあ、あたしのせいだ。

あたしのせいで、あいつは死んだ。

あいつに会えないのは、あたしのせい………

………

………

………

…なら、あいつを生き返らせるのは、あたしだけ。

あたしが、あいつを生き返らせなきゃならない。

あたしが、あたしが、あたしが、あたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしがあたしが。

………

………

………

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

…禁断の秘薬。

ずーっと昔に作られていた、秘密裏の薬。

死んだ人間を生き返らせるという、薬。

………

………

………

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

…でも、その薬を作るには大量の魔力が必要。

普通の薬を作るよりも何倍も何倍も何倍も、必要になる。

………

………

………

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

…けど、何人分もの魔力が集まれば………

何人もの命と引き換えにあたる魔力があれば………

きっと、足りるはず。

………

………

………

今頃、下町は大騒ぎかもね。

一夜にして、何人もの人が消えてるんだから。

でもそれも、関係ない。

あいつが、生き返って来れば。

あいつに、また会えるのなら。

………

………

………

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

…もうすぐ、完成する。

今度あいつに会ったら、どんな顔して会おうかな。

きっと泣いちゃうけど、あたしらしくないよね。

涙はこらえて、笑顔で会わなくちゃね。

大好きなあいつと、もう一度、会えるんだから。

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)

(グツグツグツグツ)」

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