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【On Burnt Spring ・15】

聖都イグニア:イベント

11/4診断結果『【防衛戦】[劣勢]長期戦・心理戦・交渉。』


※あまねさんのカースライド戦に続くストーリーです。


『本隊、誘導、任せる』


 さらに合図すると、遠目に手信号を返そうという素振りが見えた。しかしそれも途中で止まる。『何があろうと上官エリアスの指示に従う』――その命令を完遂してくれるようだ。

 ほどなくフローレンスが身を翻し、エリアスの方は、小さく息を吸い込んだ。

「ゲアマーテル」

「はい!」

 急旋回。体の負荷に集中しドラゴンへは意識を向けないよう務める。

 せめてマイク達を逃がすまでは、このまま平静でいなければ。


ブレス!!」


 戦うためではなく、威嚇と、注意を引きつけるための炎。先に言葉を交わした際の感触では、連中の知能はさほど高くなさそうだった。わかりやすい挑発で目を眩ましてやるのは有効のはずだ。


『人間』

『戦うか、我らと』


 気色ばんだ声が脳裏に響いた。案の定だ。

 と――思った矢先のこと。


『だが、聞け』

『まずは聞け』

『話を』


 予想だにしなかったことを、かの野生ドラゴンが口にした。どうやらすぐさま戦闘ということにはならないようだ。


 ――それでも……そろそろまずいわね……


 手綱を引かれ減速、滞空しつつ、ゲアマーテルは内心で案じた。背に乗せたパートナーの気配が鋭さを増している。ドラゴン達との対峙を重ねるたびに彼の理性は磨り減っていた。それを文字通り肌で感じてきただけに、これ以上の無理はさせたくなかった。

「エリアス。わたしが話しましょうか」

 横目に様子を窺いながら努めて穏やかに声をかける。すると背後では小さな吐息が落ちた。

「たのみます」

「はい!」

 彼の声は比較的落ち着いている。どうやら大丈夫そうだ。まだ、今のところは。

 それにしても野生ドラゴン達から話とは。真意を量れぬままにどう切り出すかを思案していたところ、相手の方から口火を切った。


『お前』

『歌を』

『歌っていたか、あの時』


 あの時。歌。とっさになんのことやら理解できず、ゲアマーテルは言葉に詰まる。それでも相手はおかまいなしだ。


『歌え』

『我らの敵でないのなら』

『同胞のための歌』

『慰めの、歌』


「!」

 ひとつだけ思い当たる節があった。彼らが言っているのはおそらく、数ヶ月ばかり前にエリアスと共にカースライドを訪れたときのことだ。あの場では確かに、命を落とした同胞達に歌を手向けた。


『歌え』


 この切羽詰まった場面では唐突がすぎる要求だ。それでも、争いとは異なる方法で場が収まるのならば否やはない。

 ゲアマーテルは首をもたげ、のどの奥から古の言葉を紡ぎだした。

 ドラゴンの旧い言葉は人の耳には笛の音のように聞こえるという。自身にとってもその響きは心地よいものだし、他のドラゴンにも同様であろう。

 しかしだからといって。歌い終えるのを待たずして、泣かれるとは思わなかった。


『やはり』

『お前だったか』


 人間のように涙を流すわけではなく、ただ悲痛な感情が伝わってきて、ゲアマーテルの胸も痛んだ。

「……これでいいのかしら?」

 すぐには返答はなかった。少しの間頭を垂れ黙していた飛竜達は、再びこちらと目を合わせるなり、再度口を開いた。


『お前はなぜ、人間と共にある?』


 ドラゴンの言葉で問うてくる。心底不可解だとでも言いたげに。


『人間は我らと相容れぬ』

『なれど人間に与する同胞は少なくない』

『なぜだ』

『お前は、なぜだ』

『同胞との縁を断ち切るという』

『そのようなつもりもなさそうだというのに』


 これに対する答えならば、迷うことなどなかった。


「ええ。あなた方の言うとおり、わたしは同胞に背を向けたつもりはないし、この先もそうはしないでしょう。ただ、より強く望んだというだけ――彼と共にあることを」




【一部キャラクターをお借りしています】


【関連作品】

 あまねさん『Wheel of Fortune』『A Watershed Moment』

 『When I upon a Peridot』

 卯月朔さん『イグニアの休日』

 あまねさん『幕間』

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