【御前会議_09(最終話)】時空の門に、スター来る。円卓は落ちる
(中継セクター)
カレシ「今日は承認式。いよいよ誕生ですね」
雇い主(ネクタイを整えながら)「緊張するな」
カノジョ「また、あの堅苦しい会議室行くの?」
雇い主「うむ。今日は式典だ。二人は初めてだな」
カレシ「はい。楽しみにしていました」
カノジョ(部屋をうろちょろしながら)
「えーっ、パーティーなの!?衣装どうしよう!みんなのお菓子持ってくの?」
雇い主・カレシ「………」
(会議室)
時空の狭間。円卓は今日も浮かんでいる。
長老、隊長、博士、青年、女将が着席。中央の空席は、今日はいつもより静かだ——まるで、その時を待っているかのように。壁際にはカノジョとカレシ。監査役は無表情に端末を構え、学生は空席を見つめている。
女将「では、承認式を始めます。『彼女の』シリーズ共通の紋章が入った盾——これを以て、『彼女の時空』の正式な創生を承認します」
長老が立ち上がり、盾を手に取る。銀色の盾には、八つの光点が線で結ばれた紋章が刻まれている。そして、中央には一つの空席を象徴する円。
長老「この盾は、全ての作品が一本の線で繋がった証だ。今回の創生で光点が一つ増えたことになる——」
彼は盾を雇い主へと差し出す。
隊長「現場はこれで繋がった。後は俺が盾になる」
博士「中央の空席は読者がその先を想像するための『余白』。光点の接続は完成であり、同時に始まりなのです」
青年「やっと俺たちの未来に繋がりましたね」
雇い主(盾を受け取り、深く頭を下げる)「……ありがとうございます。必ず、この盾に恥じない物語を紡ぎます」
女将「さあ、皆さん。お迎えしましょう」
空席——光と、静けさ
その時——空席が光った。これまでにない強さで。
学生「……あ、あの席」
監査役「エネルギーの逆流。来ますよ」
青年「ついにっすね……!」
雇い主「……来るか」
カレシ(手帳を閉じて)「……来ます」
光が収束する。スポットライトが落ちるように、空席だけが明るく照らされる。
そこに、一人の人物が立っていた。
ドレッシーなロングジャケットを身に纏う。
だが堅苦しくない。
ハリウッドスターを思わせる洗練された佇まいで大袈裟に両腕を広げている。
全員が立ち上がる。
スター、登場!
スターはゆっくりと会議室を見渡す。円卓。コーヒーカップ。ホワイトボード。そして、全員の顔。彼は輝くような笑みを浮かべた。
スター「お待たせしました。スターです」
その一言で、張り詰めていた緊張がふと解ける。圧倒的な存在感——だが、ポップスターのような圧倒的な軽さ。
長老「……君が、そうか」
スター(目を見開いて、長老の方に歩み寄りながら)
「長老、いやぁ、お会いしたかった。噂に違わぬ流石の熱量だ……この部屋の温度、あなたお一人で2度、いや3度は上げていますよ」
(長老が思わず苦笑するのを見逃さず、ニカッと輝く笑みを向ける)
隊長(背筋を伸ばして固まっている)「き、君が、新しく……」
スター(隊長の分厚い大胸筋を、手のひらでポンポンと小気味よく叩く)
「隊長、今度、僕と現場ランしません? いやあ惚れ惚れする仕上がりだ。最前線、任せましたよ」
(隊長がドギマギするのを横目に、隣に移る)
博士(震える声で)「……あなたは」
スター「おー、博士。『読者地図』、あれは芸術だ。僕なんか五ページで離脱でした」
博士「……五ページで? はあ——」
スター(首をかしげて、いたずらっぽく笑う)
「それだけ凄いってことです。天才の考えることはやっぱり美しいなぁ。……頼りにしてますよ、先生」
博士(完全に毒気を抜かれる)「…………」
青年「スター……っすか」
スター(手をパチンと合わせて、青年を指差す)「よう、マイブロ!今度さ、教えてよ。俺、未来の自分にまだ追いつけてないんだよね」
女将(穏やかに深くお辞儀をして)「お待ちしておりました」
スター(後ろ手から手品のように深紅のバラの花束を取り出し、軽くハグしながら)「女将さん、今度コーヒーご一緒に。『喫茶店』のあの落ち着いた空気感、好きなんですよね」
そして、雇い主の前へ。
スター(両手を差し出し、力強く微笑む)
「とうとうきましたよ! ご苦労様でした。後は派手にやりますから、お任せください」
雇い主はガッツリ手を握られ、やや圧倒される。
(ふと、横で目を丸くしているカノジョとカレシに気づく)
スター「君がカレシか。頭いいらしいね! 俺、記憶力弱いんで、記録頼むよ」
カレシ(一瞬呆気にとられ、すぐに背筋を伸ばして)
「……はい。記録は、私の役割です」
そして、カノジョの前。スターはロングジャケットの右のポケットからポッキーを差し出す。
カノジョ「わあ、ポッキー! スターもお菓子好きなの?」
スター「うん。でも、僕が一番好きなのはそれ。君の持ってる緑の森永ラムネ」
カノジョ「えっ、これ?いいよ! はい!」
スター(ラムネを受け取り、一粒口に入れて)「……この味、最高だね。君とは気が合いそうだ」
スター(円卓の真ん中に飛び乗るようにして)
「さあ、皆さん、そろそろ行こうか。ここからが本番なんでしょ」
雇い主「本番……?」
スター「これから——旅って聞いてますよ。ジャーマネはここいないの?」
監査役(会議室の外から冷ややかに)「そのような予算はございません」
異変——会議室、動く
その時だった。
スター「――おっと、来たか」
轟音。いや——轟音というより、世界そのものが「ズレた」ような感覚。円卓が傾き、コーヒーカップが宙を舞う。壁に浮かんでいた各作品の象徴が激しく明滅し、時空の狭間そのものが歪み始める。
そして会議室は落ちていった。
円卓も、盾も、コーヒーカップも。
誰一人席を立たないまま、
会議室そのものが旅立っていった。
どこかへ。
まだ名前のない時空へ。——旅は、ここから始まる。
監査役と学生は会議室の外。
崩壊する空間の手前で、取り残された。
監査役(乱れる前髪を気にせず、端末に猛烈な速度で打ち込みながら)
「記録します。『彼女の時空』創生を承認。スター、合流。全接続完了——そして、会議室はどこかへ。未知の世界へ、旅立つことを確認」
学生(窓の外、落ちていく光の軌跡を見つめて、小さく呟く)
「……ずっと、待ってた。私たちの、本当の物語を」
―――エピローグ―――
――セッション確立。
(中継セクター……ではない場所)
スターは現れた。
承認の盾は授与された。
そして――会議室は時空の彼方へ落ちた。
気づくと、彼らは見知らぬ場所にいた。会議室は無事だが、窓の外は見たことのない風景。
雇い主「……はて。ここはどこだ?」
カレシ(手帳を開いて)「時空座標、特定できません。どこかに落ちたようですね」
雇い主「……また知らない世界を書き始めるのか」
カノジョ(バッグを漁りながら)「ラムネあった! あっ、スターもいる!」
スター(何事もなかったかのように)「やあ。 いい景色じゃない。ここが新しいステージか。歌っちゃう?」
雇い主「中継セクターは繋がるのか?」
カレシ(端末を確認して)「なんとか、繋がりますね。これまで通り、発信は可能です」
雇い主「そうか。……ここから引き続き、中継セクターとして、読者様に旅を発信をしていこう」
カレシ「承知しました」
向こうでは、カノジョがスターとお菓子を囲んで仲良く話をしている。
会議は終わった。 これからは、旅の時間だ。
――セッション終了。
(=^ェ^=)(=^ェ^=)(会議は終わったけど、 私たちの旅はまだまだ続くよ。 次は『物語紀行』で会おうね!)
──会議室メンバーの新たな旅が始まる──
新章『物語紀行』に続く。
https://ncode.syosetu.com/n7682ml/1/
――今後の予定――
最終話までお読み頂きありがとうございます。
本作品での「彼女の」シリーズ接続計画に沿って以下の展開を予定。
・短編A-② 無名な人 『カフェあおい』最後の日
『彼女の喫茶店』・『彼女の計画外伝』・独立短編
・短編A-③ 光莉の旅路
『彼女の計画』・『彼女の計画外伝』・独立短編
・短編A-④ 彼女の不在
『読者地図』・『彼女の計画』・『彼女の計画外伝』・独立短編
・短編A-⑤ 神様がただの人間になるまで
『観測者の時空』・『読者地図』・『彼女の計画』・『彼女の計画外伝』・独立短編
これらにより『彼女の時空』の他作品への繋がりが承認された。
尚、この旅の続きは引き続き『観測者の時空番外編』で発信していきます。
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