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短編A-①『御前会議 ―物語創生記録―』 ~「彼女の時空」が繋がるまで~  作者: Taku


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【御前会議_03】伝線という名のバグ

時空の狭間。円卓は依然として浮かんでいる。


中央の空席は、前回よりもわずかに気配を濃くしている。


誰も座っていない。


でも、誰かが「もうすぐ来る」ことを知っているかのように。


長老、隊長、博士、青年が座っている。


女将はカップを片付けながら、自分の席に戻った。


雇い主は立ったまま——今日はメモを持っている。


壁際ではカノジョがラムネを食べ、カレシが手帳にメモをしている。



女将(席に着きながら)



「では、続きを始めましょうか。雇い主さん、前回は代案を求められていましたね」


雇い主(咳払いを一つ)


「うむ。……考えてきた」


長老「ほう」


雇い主「……で、だ。現代と未来をどう繋ぐか——地面を現代、空を未来。そこに落雷。そして時空に僅かなズレ。そのズレを『バグ』が繋ぐ——こういう構想だ」




一同、ポカーン。





長老(小声で隊長に)


「……バグとは何だ」


隊長(小声で)


「犬の種類ではないでしょうか」


長老(大きくため息)


「安易だ」


雇い主「……は?」


長老「最近の作り手は、赤ちゃんと動物を出せばいいと思っておる」


雇い主「バ、バブー? 」


博士(メガネを押し上げて)


「待ってください。バグと言いましたね——それは現代と未来の人間を繋ぐ熱量になるかもしれませんぞ」


青年「バグだったら、未来のシステムとも相性いいっすね」


隊長(小声で長老に)


「すみません、なんか勘違……」


長老(構わず)


「そのバブーとは何だ。和語で伝えたまえ」




雇い主「…………」




その時だった。壁際で手帳を開いていたカレシが、素早く何かを書き、雇い主に向けて掲げた。


カレシ(無言で)


手帳には大きな文字で——『伝線』


雇い主(ハッとする。額に二本指を当てる)


「んー、いいでしょう。少し回り道をしてみました。そう、『伝線』。ストッキング!」


カレシ(頭を抱える)





一同、沈黙。





長老「…………拓か」


隊長「…………仰る通り」


博士「なるほど。伝線——現代の拓が遺した『stocking_night_0612』——あれも一種の伝線と言える」


青年「その記号、使えますよ」


女将(微笑みながら)


「つまり、現代と未来が『伝線』を受け継ぐのかしら?」


雇い主(あれ、話が進んでる)


「ふふ、女将、その通り。お目が高い」





長老(長い沈黙の後)


「……伝線か。わしの世界にも、それはあるぞ。なあ、隊長?」


隊長「もちろん……電線ありますよ」


長老「だが——その伝線が、未来にどう繋がるのか。まだ見えんな。考えはあるのか?」



雇い主「……ある」

(またカレシの方を見る。ん?いない?)



カノジョ(カレシの手帳に急いで大きな文字で——『トイレ』と書いて掲げる。



雇い主「そう、トイ、ん?。トイ・ストーリー?」





一同、空を見上げる。





博士「問い、を読者に与えるか。なるほど」



青年「余白ってやつでしょ」



長老(小声で隊長に)「分かるか?」



隊長「はい。その方向で」



女将「雇い主さん、カフェあおい。その『問い』の場とぴったりね。いいと思うわ」



雇い主「……女将」



長老「よし、次回はカフェあおいを使って、どんな問いを残すか、だ」



その時、空席の気配が微かに変わった。


誰もいない。


でも、その席だけが、まるで「面白そうだ」と言っているように温かくなった気がした。



学生(小さく呟く)


「……あの席、こっち見てる」


会議は続く。まだ何も決まっていない。でも——空席の気配は、確かに誰かを待っている。


監査役(会議室の外から、端末を手に)


「記録します。第2回創生会議——『伝線』を接続の鍵とすることで合意。ただし、具体案は未確定。次回、持ち越し」




――セッション確立。


(会議後の中継セクター)



雇い主は背筋を伸ばしていた。ネクタイも曲がっていない。今回は珍しく、完全な勝利感を漂わせている。


カノジョ「おかえりー! なんか今回はスッキリした顔だね」


雇い主「うむ。私の『問い』が会議を動かしたのだよ。当然だ」


カレシ(手帳を開く。ん?)


「この汚い字は?」


カノジョ「あっ、それ?雇い主に見せたの。カレシ、いま『トイレ』って……」


カレシ「雇い主はなんと?」



(間)



雇い主「…………トイ・ストーリーと」



カレシ(手帳を閉じて)


「なるほど。「トイレ」を誤読し、トイ・ストーリーと誤爆し、『問い』という誤解を生んだ、という訳ですね」


雇い主「……うむ」

(説明しなくても。誤読じゃなく機転で乗り切ったのだが)


カノジョ「でも、いいじゃん。幕の内弁当美味しかったしー」


カレシ「はい、結果オーライです。次回の議題は、カフェあおいにどんな『問い』を残すか、ですね。何か構想は?」



雇い主「……勿論、



(沈黙)


        ない」


(ま、まずいな。なにか)


そこにカノジョが差し出す。


いつもの展開。


カノジョ「これあげる。キットカット」


雇い主 「キットカット……キ、キ、キ……」


(二人が期待する)


カノジョ 「?」


カレシ 「?」


雇い主 「…………」


「ふー。今日は、来ない」



(落雷?)



雇い主 「来ないか」



――セッション終了。



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