第二十話 作戦会議
正臣さんからの作戦参加要請から五日。
俺達は今、GAT支部のグリーフィングルームに集まっていた。
今日、作戦概要についての説明及び会議が行われる。
「では、作戦概要について説明する」
プロジェクターにより地図が写し出された。
太平洋沖にある小さい島。
赤色の凸と青色の凸が表示されている。
GATの将校と思わしき男性が説明を始める。
「まず、作戦開始地点はここ太平洋沖の篠神島。
エレメントはこの島に集結しつつある。
その数は、正確に把握出来てはいないが二百を越えると予想される。
敵の数は多いが、作戦通り行動すれば勝利できるだろ」
に、二百って…………。
こちら側の戦力は、GATの第一から第六小隊そして第零小隊と俺達GAT特殊遊撃小隊の五人を含めた総勢四十名だぞ。戦力差ありすぎだろう。
「始め、先行部隊の第一、第三、第五小隊が敵の正面を襲撃。
その間、第二、第四、第六の混成部隊が左右に回り込み戦力の分散を図る」
以外と単純な作戦だ。
先行部隊を囮にして、主力を左右からぶつける。
単純だからこそ、有効的な事もある。が、果たしてこの作戦うまく行くのだろうか?
敵に指揮官クラスのエレメントがいるとしたら、こちら側の動きを予期して陣を組むだろうし、何よりも回りを海で囲まれている島に集まっているてのが気になる。何か罠があるんじゃ…………。
「そして、上空から第零部隊が突入し島内部にある遺跡へ進行、遺跡内部にも相当のエレメントが潜伏している可能性がある。十分警戒するように。
特殊遊撃小隊は第零小隊に随行しバックアップ。第零小隊並び特殊遊撃小隊は目的を果たした後、遺跡外部の戦闘に参加、エレメントを一掃せよ」
ん? 周りで仲間が戦ってるのになぜ遺跡なんかに…………。
同じ疑問を感じたのか、クリスさんが挙手する。
「質問宜しいでしょうか?」
「君は?」
訝しげな顔をする将校。
「お初にお目見え致します。ヴォークライ家が長女、クリス・ヴォークライと申します。以後良しなに」
名乗りを上げた途端、周囲がざわめく。
「なっ…………十二聖騎士団の銀狼」
「あら、その名をご存知でしたか」
「ええ、それはもう。貴女の御高名は海を越え極東の地、ここ日本まで届くほど。十二聖騎士団の一員である貴女がなぜこの場に?」
またかと呆れた顔をするクリスさん。
ちょうど、隣の席に座っていた日下部さんに視線を送る。日下部さんはその視線に苦笑いで答えた。
やれやれと、クリスが説明にはいる。
「今日この場にいるのは、協力要請を受け参った次第。他に理由はありませんわ。何の通達もありませんでしたの?」
「いえ、そう言った通達は特に…………」
「来ていないのなら、確認をとりなさい!」
脂汗を額に浮かべる将校のオッサン。
手にしている資料をチラチラと覗きいては、顔をしかめている。
この人、作戦の責任者じゃないのか。普通、作戦に参加する人員は把握しているものだろう。
「まったく、日本のGATは組織運営が杜撰すぎますわ」
クリスさんが小言を呟く。
確かに、情報通達の悪さにこの将校の対応能力の無さ。人手が足りないと言うことは無いだろうし、ただ無能な奴等が上層部に居座ってるだけの形骸組織。今までよく組織として成り立っていたな。
あの噂、本当だったのかもしれないな。GAT上層部は汚職で汚れきっており、防衛組織として機能していないってのは。
「コホン…………話が脱線してしまいましたわね。質問に戻らせて貰いますが宜しいですか?」
「え、…………は、はい」
完全にペースを持っていかれ、おたつき始める将校。
みっともないねぇ。少女におたおたするオッサン、哀れを通り越して惨めにすら見えてくる。
「その遺跡には何があるのです? 周囲のエレメント殲滅よりも優先しなければならないものがあると言うのですか? それも政府直轄部隊第零小隊を向かわせる程の何かが…………」
「そ、それは…………」
問い詰められ言いどもる将校。
「…………はぁ、機密事項と言うわけですか」
「はい、いくら貴女が十二聖騎士団の一員とはいえ詳細をお伝えすることは出来ません」
「そうですか…………分かりました。これ以上訊いても無駄のようですし」
納得が行かないまま、クリスさんは質問を切り上げた。
その後、作戦会議は滞りなく進み俺の胸の内にある靄が晴れないまま会議は終わりを告げた。




