精霊と獣人の国②
俺は何も見てない俺は何も見てない俺は……。
「はっ!!」
目の前でアネッテの狐耳がぴこぴこと俺を心配していた。
「お嬢ちゃん、狐耳をモフモフさせてくれたらこいつをやろう」
太刀「凪」を差し出しながら言う。
変態がここに爆誕した。
アクアが無言でコークスクリューブロー、俺のレバーを打ち抜いた。
「その太刀をあげますから、今のは無かったことにしてください」
アネッテに頭を下げる。
俺は太刀を取り落とし蹲りながら
「アクアちゃん…今の冗談…」
「冗談は顔…私にだけお願いします」
独占欲の強いことで。
俺が○ゲに意識を刈り取られている間に、出発の準備が整っていたらしい。
「昨日と同じ馬車にお願いします」
アネッテが催促してきた。
「蒼騎士様も一緒に私の馬車に乗ってください!!」
スティナが俺に向かって懇願してきた。
「駄目です姫様。いくら大恩があるとはいえ緊急時でもないのに、王族の乗る馬車に乗っていただく訳には」
「もっともですね」
アクアが俺を馬車に押し込みながら言った。
俺も流石にあのテンションのスティナを、夕方まで相手にするのは厳しかったので、最初から乗る気もなかったのだが。
「ささ、姫様、私と一緒に乗りましょう」
「蒼騎士様あぁ…」
ハ○がスティナの手をとり馬車に乗り込んで行った。
アネッテは俺達と同じ馬車に乗るそうだ。
ようやく馬車はアルムに向かって走りだした。
しばらく街道に沿って草原を横断していると森林が見えてきた。
馬車が一旦停止する。
馬車が野営地から出発してからこっち、ずっと尻尾をふりふりしながら楽しそうに、太刀を見ていたアネッテが、少し名残惜しそうに鞘に太刀をもどす。
「ここで30分昼休憩したら森に入ります」
アネッテが俺達に干肉とパンを差し出しながら言った。
アクアと俺はもそもそとかじりながらアルムについてアネッテに聞く。
「アルムには図書館はありますか?あれば利用させていただきたいのですが」
「当然ありますよ?我が国の大図書館は、あまり利用者はいないのですがかなりの蔵書量を誇っております」
アネッテはそういいながら、兵士を1人呼びつけ何かを言いつけた。
兵士が「わかりました」と言い退出する。
「どうも、補修が必要な馬車の車輪があるようですあと、そうですね…一時間ほど休憩してから出発します」
何か水面下で物事が動いているような気がしたが、まあそんなに面倒なことにはならないだろうと、俺は判断しやたらと硬い干肉との格闘を続けるのだった。