47話 真の覚醒
ダイアログの件ですが、書いていてちょっとこの小説内で箸休め程度に書く内容では無いなと思い、別の形で書くことにしました。申し訳有りませんが、出来たらこの中でもお知らせしますので、改めて入り直して頂けるようお願いします。
アリスはようやく本当の意味で女性となった。今更だがアリスは聖女の真の力と言う物を理解したのだった。今までは頭では何となく解ってはいた物の、どうしてもそれを認めたく無かった。自分は男で居たかったからだ。
だがその意地よりも、大切な物にアリスは気が付いてしまったのだ。これはアリスの魂に刻み込まれていた本当の自分、つまりアリスフィーネの思いから来るものであった。今までの表面上の物では無い、真の魂に刻み込まれている思い、心の葛藤だ。
『ようやく気づいたのね、本当に遅いわ。だから嫌いなのよ』
『五月蝿えよ!! 俺だってお前は嫌いだ!! 愛だの何だのって、何で俺がそんな物に振り回されなきゃならねえんだよ』
『仕方無いでしょう、それが私の本質何だから』
『そんなもん俺はいらねえんだよ』
『まだ解らないの? 一体何時になったら気が付くのよ、貴女が幾ら私を否定しても、貴女は私なの。そして貴女の本体は私なのよ? 貴女は単なる人として生きて来た記憶に過ぎないの』
『く! ・・・・ああそうだよ!! 俺はお前だ!! だけとよ、今まで生きて来たこの記憶だって俺自信なんだよ!! かってに否定すんじゃねえよ!』
『巫山戯ないで! 否定何かしてないでしょう!? 何時私が貴女を否定したのよ!! 私にだって解っているわ、貴女は私、そして私は貴女なの。だけどいい加減気が付いてよ!! 貴女が守りたい物は、貴女が私を肯定しなければ守れないのよ!?』
解っていた、だけどそれは俺が俺自身を否定する事に他ならない。人として生きて来た、今までの俺が間違いだったと・・・・・それがどうしても今の俺には出来なかった。
『解ってよ? 貴女のこれまでを私は否定しないわ。だけど私を肯定しなければ、あの子達を守れないのよ!? もう本当に馬鹿過ぎ、こうなったら貴女に私の記憶の一部を見せるわ、これでもそれが出来ないなら、私はもう貴女を本当に否定するわよ!!』
『んな!?』
そこはフィーネが死んだ直ぐ後の、言わばアリスフィーネの記憶の世界だった。俺の心の葛藤が、俺を再びあの世界に連れて行った。
「父さん!! どう言う事だよ!? 何で母さんがこんな事になってるんだ!!」
「ねえママ!! 目を開けてよ! ママァぁぁぁ!!」
「母さん!! 母さん!! 嘘だろう!? こんなの無いよ!!」
う! こうやって改めて見ると・・・・かなりキツイな。
「お前達・・・この子は僕とフィーネの子だ。だけど、この子はフィーネでもある」
「え!? 母さん?」
「ファム様が教えてくれた、この子が鍵になって、フィーネはまたこの世界に戻って来る」
「母さんが、母さんがまた?」
「戻って来るの!? 母さんが」
「戻るさ、だけどそれは何年、いや、何千年も先かもしれない」
「それじゃ意味ないよ!!」
「あるんだ!! ただ、それを僕はお前達に強制は出来ない。死ね事よりも辛い事かもしれないからだ。だから今から言う事は、自分達で考えて決めるんだ。良いかい? もしお前達がこのフィーネの血を飲めば、闘う為の力と永遠の命が手に入る。だがそれは、死ぬ事が出来なくなると言う事だ。仮にフィーネが蘇ったとしても、老いて死ぬフィーネを再び見なければいけない事になる。だから死ぬより辛い、だが僕はそれでもフィーネを再びこの手に抱きしめたい、だから僕はその道を選んだ。だからお前達は自分で決めるんだ、フィーネと」
「聞かれるまでも有りませんよ、父上、俺は母上を待ちます」
アーサーはフィーネの血を迷うこと無く飲んだ。
「アーサー・・・・」
「僕だって同じだ!! あの優しい母さんをこの手に必ず取り戻して見せる」
「ガウェイン、お前・・・」
「ガウェインの言う通りだよ、僕だって母さんを待つ、もう一度母さんの料理を食べるんだ」
「トリスタン・・・本当に良いんだな?」
「当たり前だよ、僕だってまた母さんに」
「パーシヴァル」
結局子供達は全員フィーネを待つ決意をした。そしてそこからはアリスが思わず目を逸らしてしまう程の事の連続だった。ランスロットも子供達も、何度も死ぬ程の怪我をしながら、ゾンビの様に立ち上がって恐ろしい程の大軍と死闘を演じていた。
だがそれは、アリスフィーネにとっては地獄以外の何物でもなかった。
「もう止めて!! パパ!! お兄ちゃん!! お姉ちゃん!! こんなのおかしいよ!! 何でそこまでして闘うの!? もう止めて!!」
「アリスフィーネ、フィーネを取り戻すんだ、大丈夫、絶対にフィーネを取り戻すから」
「そうだよアリスフィーネ、お兄ちゃん達が絶対母さんを取り戻すからね」
「もう良いよ! こんな闘い何時迄も続けてたら死んじゃうよ!!」
「私達は死なないわ。アリスフィーネ、だから大丈夫」
そうか・・・・彼奴は、ずっとこんな死闘を見続けていたのか・・・・
俺の事が嫌いになったのはこれか・・・そりゃ嫌いになるよな。だから今度こそ守りたいのか、コイツラガキ共の事と、ランスロットを・・・・・なら嫌いな俺の事も肯定するのか・・・・
もう見ていられなかった。ランスロットも、アーサーも、ガウェインも、モルドレッドも、ガレスも、トリスタンも・・・・ガキ共は血みどろになりながらひたすら俺の帰りを待って闘い続けていた。
そしてアリスフィーネは老衰で死ぬまで、ずっとそれを見続けて泣いていた。俺も何度目を背けたか、だがそれを彼奴は絶対に許さなかった。俺が目を背ける度に、それを阻止し続けた。最後までそれを俺に見続けさせた。
『アリス、許さないわ、貴女はこれを全て見続ける義務が有るのよ。絶対に目を逸らさせないわよ』
地獄すら生温い、俺はランスロット様とガキ共のそんな死闘を・・・アリスフィーネが見てきた物全てを強制的に見させられた。
『本当は貴女にこれを見せたくわ無かった。パパとお兄ちゃんお姉ちゃん達との記憶は私の宝だから、あんたに何か絶対に見せたく無かったわ。だけど貴女がこんなわからず屋だった何て思いもしなかった。だから見せて上げる、そのかわり目を逸らす事なんて絶対に許さない。見なさいアリス、パパやお兄ちゃんお姉ちゃん達は、貴女の帰りを信じてこんな地獄の様な世界でずっと生きて来たの、一万年もよ。貴女がくだらないプライドを何時迄も抱えている時に、パパやお兄ちゃんお姉ちゃん達は、貴女の帰りを信じて、貴女の理想とした世界を作る為に、こんな地獄をずっと過ごして来たの』
俺はもう我慢出来なくなっていた。涙が後から後から溢れて来る。だがそれすらもアリスフィーネは許さない。
『泣いて済む問題じゃないわ!! 貴女は自ら私と自分を分けたの、それはここに戻って来る為にね。それは良いわ、だけど貴女はその間何をしていたの!? 貴女はそんな事も』
『五月蝿えよ!! 仕方ねえだろう!! 俺だって記憶を持っていたら、だけどその記憶は全部お前が持ったんだ!!』
『だからって許される訳がないでしょ!! これを見てまだ解らないの!?』
『解ってるよ・・・わかってるよ!! じゃあどうすりゃ良いんだよ!! どうすりゃ俺は許されるんだよ!!』
『何度も言っているじゃない!! 私を肯定しなさい!! 私だって貴女と再び一つになる何て反吐が出るわ!! だけどこうしなければパパやお兄ちゃん、お姉ちゃん達を守れないの!! 確かにパパ達は強いわ! だけどルシフェルを倒すのは無理、だってルシフェルを倒す事が出来るのは、私達だけなんだから!!』
あ!?? ・・・・・・そうだよな、全く、どうしちまったんだ俺は。男とか女とか、そんなん元からどうでも良かったじゃないか。ただ俺は、目的の為に何も考えずに進みゃ良かったんだ。俺は俺だ、男だろうが女だろうが、そんなのはただの見た目に過ぎねえ。俺は俺だ、性別何てどうだって良い。好きな事をやって、守りたい物を守る。それが俺が俺であるって事じゃねえか!!
『解ったよ、本当に俺はどうにかしてたぜ、お前の言う通りだ。くだらねえ事を色々と考えて、本当に大切な事を見失ってたぜ。そうだ、俺は俺だ!! もう迷わねえ、お前も俺だ。決めたぜ!! 俺はもう他の事には気を取られねえ、俺はやりたい事を思いっきりやるだけだ!!』
『え!? あのね、ちゃんと社会的に正しい事を』
『ホラ! どうした!! お前は俺だ!! 俺はもうお前を認めたぞ!! さあ! 一緒に好きな事をやろうぜ!!』
『だからちょっと!! あぁぁぁぁ!!』
アリスフィーネはアリスと再び同一化した。思い残す事はかなり多そうだったが、アリスがアリスフィーネを真の意味で自分だと認めた以上、アリスフィーネにはそれに抗う事が出来なかったのである。
そしてこの時、アリスは皆に囲まれていた。中々起きないアリスに皆は心配していたのだ。だが突然アリスが光り出した。そしてアリスの黒髪が、突然ブルーに変わったのだ。そう、それはフィーネが復活した事を意味していた。
「え!?」
「フィーネ!!」
「母さんだ!! 髪の毛の色が母さんに戻って行く」
そしてフィーネが起きた。だが・・・・
「ん? ・・・な!? 何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁ」
フィーネがかかっていた掛け布団を勢いよく捲った。
「足が、俺の足がねえ!!」
「フィーネ!! うぉぉぉぉ!!」
「五月蝿え!!」
バキ!!
「グハッ!!」
ん!? ランスロット様が良けれなかった!? 俺のパンチをまともに食らってやがる。
「母さんのパンチがあの時の速さに戻っている!?」
「本当だわ、お母様のパンチ、今見えなかったわ!!」
「み、見事なパンチ力だったよ、フィーネ」
鼻血をダラダラ垂らしながら、ランスロット様は俺を褒めていた・・・
「いや待て、そんな事よりも、俺の足が魚の尻尾になってやがる、この後どうすりゃ良いんだよ!?」
「大丈夫よ」
「へ? 何故? エリザベート」
「これも師匠が言っていたわ、本当の力を貴女か取り戻した時、それはフィーネに戻る事だって。時期に元に戻るわ」
「そうかそうか、それならこのフィーネを今のうちに僕が」
と言ってランスロット様は俺を抱きかかえた。
「てめえ!! 人の弱みにつけ込みやがって!!」
「ゲハ! グホ!? フグぅ!!」
相当俺の攻撃が効いてるみたいだが、ランスロット様は執念で俺を抱きしめ続けていた。俺は顔面ボコボコになっても根性で抱きしめ続けているランスロット様に、まあ良いかと思って諦めた。
そして俺は、自分に全ての記憶が蘇った事を確信した。俺はガキ共を見渡した。そして、凄くコイツらが愛おしく思えた。同時に本当に可愛く思えたのだ。
「なあ、ランスロット様」
「何だい、アリス」
「ちょっとだけ俺を降ろしてくれ、その後はずっと抱いていていいから」
「どうしたんだい?」
「ガウェイン、俺を抱き上げろ」
「え? うん、母さん」
ランスロッ様は素直に俺をガウェインに渡した。ガウェインは俺を抱き上げた。そして俺はそのままガウェインを抱きしめた。
「済まなかったな、ガウェイン、心配させてよ。でも俺は戻ったから、もう心配する必要はねえ」
「母さん!? もしかして記憶が・・・」
「ああ、お前がよくオネショして怒ったことも思い出した」
「よ、余計な事思い出さなくて良いよ! 母さん・・・母さん!! わぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その後俺は今いるラウンズ達全員に自分を抱き上げさせた。そして皆を強く抱きしめた。皆ひとしきり泣いていた。俺は全てを思い出していた。コイツラを自分の本当の子供だと思って育てていた事も。




