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26話 目覚めぬ理由

予約忘れましたので、思い出し即投稿

 報告を聞く毎に、ボストニアから戻ったラフィールは焦っていた。帝国軍を無条件で通すように指示を出したのだが、指示を聞いて素直に関所を通す貴族も居る。だが第一王子派の貴族達は全くもって指示を無視していた。


 アリスは憲兵達によって学園の救護室に運ばれていた。エリザベートが寄越した医者やメイド達に囲まれている状態だ。

 そして当然誰もが解っていた。既に国王の権力は無く、第一王子派閥の誰もが第一王女かボストニアに取り入る為のパフォーマンスに動いているだけだと。

 だが相手が悪すぎる、これではフォルテシア王国が帝国に対して弓を引いていると思われ兼ねない。更にアリスの元へ行った使いが帰って来ない。


 ラフィールはアリスを王宮に運び入れたかった。と言うのも逆上したラウンズ達が、下手をすればこの場の者達を皆殺しにしかねない。だがこの場にアリスが居れば、一端は落ち着いてくれるかもしれない。そしてランスロットが持つカリキュオンをアリスに持たせれば、アリスは目を覚ます筈だ。


 だがラフィールは知らなかった。既にアリスの元にカリキュオンがある事をだ。そして使いの者は困っていた。


「これを持たせてあげれば良いんです!! そうすればアリス様は目を覚ますと!!」


「ですが誰も持てないんですよ! アリスしかこれを持てないのです! どうやって寝室まで運べばいいのか解らないんです」


「く! 一度王宮へ戻ります!!」


 だが既に帝国軍は目前にまでせまっていた。王宮の物見台からは大量の騎馬隊が怒濤の勢いで迫って来るのが見える程だった。


「何ですって!! 有るのですか!? 既にカリキュオンが!」


「姉上、それはもしかして、アリスがランスロット殿下から渡された杖の事ですか?」


「そうです、それが有ればアリスさんは目覚めます!! もう時間が有りません!」


「ですが殿下、誰も持つ事が出来ないのです。持とうとするとすり抜けてしまって」


「ではやはりそれが本物の!」


「杖が持てなければアリスを持てば良いだろう!! 彼処にはアスラン達がいる! 手伝わせろ!!」


「そ! そうです! アリスを杖の場所までお連れして、手に杖を握らせなさい! 急いで! もう時間が有りません」


「か! 畏まりました!!」



 アリスフィーネを杖の元まで連れて行き、手に握らせろと言う命令が伝わると、すかさず変態部下達が動いた。


「俺が姉御を連れて行く!!」


「流石に兄貴でもこの約だけは譲れねえ!!」


「いや俺が姉御を」

「誰でも良いから早くなさい!!」


 医者がキレた。結局アスランが抱き抱え、部屋まで連れて行き、オリバーがアリスの手を取って、杖を握らせた。


 するとアリスが急に輝きだした。そしてガロードが倒れた時のような、神々しい光がアリスから放たれる。アリスはベッドから宙に浮き上がり、再び天使の羽根をその身に宿す。


「あ‥‥姉御がまた女神になったでやんす!!」


「な、何なんだ? これ‥‥‥」


「姉御!! 目を覚ましてくれ!!」


「姉御!」


 何かうるせえな‥‥‥いや、アホな声が一人足りない‥‥‥ガロード! ガロードだ、ガロードはどうなった! 彼奴は助けられたのか!?


 少しずつアリスの目が開き、アスラン達を見る。


「が‥‥ガロードは、どうした」


「姉御!」


「ガロードは、どうしたって聞いてんだ」


 力の無い、か細い声で、それでも必至に訴えるアリス。それに対し、アスランは答が出せなかった。


「誰でもいい、答えろ」


「ガロードは、生きています‥‥‥」


「そ、そうか‥‥‥よかった」


「姉御‥‥‥すまねえ、生きてはいるんだが‥‥‥目を覚まさねえんですよ」


 やはり駄目だったのか!? いや、生きてるって事は魂はある。この杖を使えばまだ望みはある。俺は何となくだがこのカリキュオンの事が解っていた。


「つ、連れてけ」


「姉御! いくら何でも無理だ!! 姉御の体も酷い状態じゃねえか!!」


 ん? そうか、この世界点滴とかもねえんだっけ? 脱水症状に栄養失調ってところか。まあいい、死にゃぁしねえ。


「うるせえ、早く連れてけ、殺すぞ」


「でもよ!」


「ガタガタ抜かしてねえで早く連れてけ!!」


「その前に、アリス様! 帝国軍がそこまで攻めて来てるのです! それを止められるのはアリス様だけなのです!!」


「はあ? 知るか」


「アリス? な、何を」


「そんなの知るかって言ってんだよ、ガロードの方がさきだ!」


 そこにエリザベートが入って来た。エリザベートは何かあった時の為に、ラフィールに使わされたのだった。


「アリス、友人を助けたいと言う貴女の気持ちはとても嬉しいわ。でも帝国軍を止められるのは」


「何をしてくれました?」


「え?」


「この国が、俺に何をしてくれました? エリザベート様」


「アリス」


「ガロードは俺を庇って一度死んだんですよ。どっち優先かなんて決まってるじゃないですか。いけ! アスラン!」


「お、おう! オリバー! 姉御はまだ手にちゃんと力が入らねえ」


「解ってるよ、杖だろ!」


 もう一人の俺は、この杖を持たないでリバイブをかけた。だがこの杖を持ってやれば、多分上手く行く、と思う。この杖は魔力をかなり大きく増大してくれる。


 ガロードは本当に死んでいないみたいだ。外傷は全て治癒されている。


 寝ている時に俺は朧気ながらこの神聖魔法と言う物の正体が掴めた。何故俺にこの力が備わったのか、その正体がだ。


 多分俺はフィーネ、あのマーメイドだ。そしてさっきのもう一人の俺は、アリス、つまりもう一人の俺、本物のアリス。


 そして俺とランスロットの娘、あれが金髪の俺、アリスの正体だ。


 理屈など解らない、だけど解る。考えるな、感じろの世界だが、それがさっき死にかけてよく解った。愛の結晶と言うか、ランスロットや、沢山の俺を思う気持ちが俺にあれを齎した。


 はあ‥‥‥俺気持ちはまだ男何だけどな‥‥‥どうやら俺の本当の正体は女みたいだ。最近ちょっと怪しいとは思ってたんだけどな‥‥‥だったらもう女である事を最大現に生かすだけだぜ畜生!



「まともに立ってられねえ、横で俺を支えろ、アスラン」


「姉御‥‥‥解りました」


「余計な所触りやがったらぶっ殺すぞ」


「は、はい!」


 アリスの胸の部分にどさくさ紛れに触ろうとしていたアスランの手が腰に引っ込められた。


 今なら出来る、さっきの本物のアリスがやった、あの究極の蘇生魔法。



「大地の母たる大いなる大地母神ガイアよ、我が祈りを聞き、我が願いをかなえたまえ。この者の迷える魂を今一度、この身に宿したまえ。祈りは愛、言葉は愛、大いなる女神ガイアの愛にて、この者に再び命の息吹を!! リバイブ!!」


 再びアリスから天使の翼が生えた。今度はカリキュオンが猛烈な光を放ち、ガロードの上に浮かんだ。アリスの両手には、ガロードの魂が浮かび、そこに七色のオーラがどんどん吸い込まれて行く。


 アリスはその魂をガロードの体に入れた。するとガロードの体がビクンと脈動した。成功だ、もう大丈夫だ。

  あ、やべ、また俺の方が怪しくなって来た‥‥‥


 「姉御!」


「て、てめえ俺を支えとけって言っただろうが!」


「だって姉御浮かび上がっちゃうから」


「うるせえ! 今度は王宮へ連れてけ!」


「無理だぜ姉御、もう寝てねえと」


「ち! 仕方ねえな、王宮まで俺を抱いて行くことを許してやる!」


「ど~んと任せてくだせい姉御!! 俺がしっかりと王宮までお送りしやすぜ!!」


「おい、誰が胸触って良いって言った、殺すぞ!」


「す、すんません!」




 その頃王宮では、遂に辿り着いた帝国軍が、王宮を包囲、王宮内部では、一触即発の状態となっていた。



「我等がここまで殆ど被害を出さず、大人しく来た理由は解っているか?」


「勿論です、ですが」


「私は王に話している、王女の出る幕ではない。私はナイトオブラウンズ、ナイトオブツー、アーサーペンドラゴン。この軍の全権を皇帝陛下より授かっている」


「ア、アリスか‥‥‥」


「そうだ、我等はアリス姫をお迎えに上がった。直ぐに引き渡して貰おう」


「ア、アリスはここにはおらん」


「面白い事を言う、これは双方の国家元首が取り決めた婚姻だ。その姫が何故ここに居ない」


「そ、それは‥‥‥」


「お父様!! いい加減にしてください!! 口車でどうにか出来る状況ではもう有りません!! ダニエルお兄様は何処ですか!? お父様! お父様もダニエルお兄様もこのフォルテシアを潰すおつもりなのですか!?」


 ラフィールは感じ取っていた。このアーサーと言う男、一見落ち着いて話をしているように見えるが、恐ろしい程の怒気をはらんでおり、言葉を慎重に選んで話さなければ、今にもここに居る者達を皆殺しにし兼ねない事を。


 そしてその背後に居る者達、其れ等も恐ろしい程の怒気を放っている。


 間違いない、この者達がラウンズ。どれ程アリスの事を待ち焦がれていたか、それが今この者達からの怒りで推し量れていた。


「懸命な判断だ王女よ、最早我等も我慢の限界。今後貴様を王とは認めない。王女よ、貴女と話す事にしよう。我等が姫は何処だ、そして我等の姫を害した者は何処にいる」


「アリスさんは学園の寮にいます。現在アリスさんの友人となった妹が傍に付いています。上手く行けば既に目を覚まされたかもしれません」


「本当か!?」


「ボストニア女王陛下に方法を聞いたと言えばあなた方ならその意味が解るでしょう?」


「私をそこまで案内しなさい」


 一人の女性騎士が名乗り出た。アーサーの後ろでラフィールを睨みつけていた、ラウンズの一人だ。


「ベディビア、母上を頼む」


 ベディビアと呼ばれた女性は静に頷いた。



「私が案内しよう」


「ライオネット、お願いします。最早この者を父とは思いません、犯人の居場所は私にも解りません。拷問でも何でもして聞き出してください」


「ラフィール!! 貴様!」


「拷問なら俺がしよう」


「ユーウェイン、まだ殺すなよ?」


「解ってるよ、居場所を聞き出すだけだ。指3本位は持ってくれよ?」


「わ! 解った!! 話す! 話す!」


「ち!‥‥‥速えんだよ!! まだ一本も折ってねえ」




 その頃アスランに抱き抱えられ、王宮に向かおうと学園を出た所で、猛烈な勢いで此方に来る馬2頭を見つけた。一人はライオネット殿下、そしてもう一人馬から降りてきた騎士の顔を見て、俺は心臓が止まるかと思った。


「此奴、夢に出て来た子供‥‥‥大きくなってやがる」


「母さん!! 母さん!! わあぁぁぁぁぁぁ!!」


「はあ? 母さんて・・・・」



 その騎士は、俺を母さんと呼び、アスランをぶん殴ってから俺を引き剥がし、俺を抱きしめながら号泣した。名前すらも解らない。だが何故か懐かしい感じも同時に受ける。



 少しすると、今度は能面のような顔をして俺を見た。


「う! ‥‥‥な! 何!? 俺何もしてねえぞ?」


「こんなに弱っている、誰だ、母さんをこんなにした奴は‥‥‥」


 そしてアスランをその恐怖の顔で見つめた。


「いてて・・・え!? 俺?」


「おい、ち、違うぞ!! こいつは俺の部下だ!!」


「母さんは黙ってて」


 すると能面の顔が更に冷気を帯びた恐ろしく冷徹な顔になった。此奴はヤバイ、ランスロットに匹敵するほどヤバイ奴だ。


「おい、お前」


「な! 何すか!?」


「母さんの部下なら直ぐに母さんをこんなにした犯人を捜してこい急げ殺すぞ」


「い! 居場所は見当付いてるんだ! 来てくれ! 俺も彼奴を許せねえんだよ」


「よし、母さん、母さんはこの糞ガキ共と王宮に行っててね。皆母さんと早く遭いたがってるから」


「糞ガキ!!」


「ちょっと待てよ? 解らねえよ、何が何だか」


「糞ガキ、一ミリたりとも母さんに傷を付けたら殺すぞ丁寧に慎重にお連れしろ、静かに抱き上げ絶対に揺らすな」


「わ、解ってるよ!! 言われ無くても!! てか俺一応王子何だけどな・・・」


「おい下僕早く案内しろ」


「うっす」



 行ってしまった‥‥‥何なんだあの騎士は、でも間違いない、あれは夢に出て来た子供が大きくなった姿だ。だけど何で俺が母さん何だ? 意味が解らねえ。


「なあ、アリス‥‥‥お前いつあんなでかい娘産んだ?」


「見りゃ解るでしょ!? 遥かに俺より年上じゃないですか!!」


「確かに年上だな・・・」



 何が何だか全く解らないが、ランスロットに会えば何か解るのか?



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