3.夜、シルヴィアの独白。
「今日は誘ってくれてありがとう。また、気軽に声をかけてくださいね」
シルヴィアとの昼食を終えて、エレオノーラはそう声をかけてくれた。
少女にとってそれは望外の喜びであり、家へ戻った後も顔のにやけが止まらない。ふかふかベッドに身を横たえて、柔らかい枕に顔を埋める。そうしていないと自身のことながら、気色の悪い声が漏れてしまうような気がしたからだった。
「やっぱり、エレオノーラ様は優しいなぁ……」
そうやって、ひとしきり楽しんでから。
シルヴィアはゆっくりと身を起こし、今日の出来事を思い返すのだった。最初は不安で仕方がなかったが、結果的には声をかけて良かったと思う。入学式の終わりだけでもと考えていたが、昼食の際には助けてもらった。
その時のエレオノーラはまさに、気品ある高潔な貴族そのもの。
少女にとっては憧れと呼んでも差し支えなく、見惚れてしまったのはいうまでもない。
「かっこよかった。うぅ、ホントにすごいなぁ……!」
それを思い出してまた、シルヴィアは枕に顔を埋めるのだった。
しかし今度は数秒ほどで動きを止め、面を上げる。そして、
「でも、だからこそ――」
なにかを決意した表情で、こう口にするのだった。
「わたしが、エレオノーラ様を守らないと」
そう言って、彼女は窓の前に移動して空を眺める。
満天の星空の中心に、ぽっかりと穴をあけるように綺麗な満月が浮かんでいた。まだ時の経過を示す満ち欠けは、始まっていない。
シルヴィアはそれを意味ありげに見ながら、最後にこう呟くのだった。
「季節が一巡りする、その時まで。今度こそ――」
身の丈以上に思える覚悟を込めるように。
「『今度こそ、必ず助け出してみせます』からね」――と。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
オープニングはここまで。
次回から、第1章が始まります。
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