表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正法眼蔵  作者: Eliphas1810
92/94

正法眼蔵 四禅比丘

第十四祖、龍樹祖師、言、

仏弟子中、有、一比丘、得、第四禅、生、増上慢、謂、

得、四果。


初、得、初禅、謂、

得、須陀洹果。


得、第二禅、時、謂、

是、斯陀含果。


得、第三禅、時、謂、

是、阿那含果。


得、第四禅、時、謂、

是、阿羅漢。


恃、是、自、高、不、復、求、進。

欲、命、尽、時、

見、有、四禅中陰相、来、

便、生、邪見、謂、

無、涅槃。

仏、為、欺、我。


悪邪見、故、

失、四禅中陰、

便、見、阿鼻泥梨中陰相、

命、終、即、生、阿鼻泥梨中。


諸比丘、問、仏、曰、

阿蘭若比丘、命、終、生、何所?


仏、言、

是人、生、阿鼻泥梨中。


諸比丘、大驚、

坐禅、持戒、便、至、爾、耶?!


仏、如、前、答、言、

彼、皆、因、増上慢。

得、四禅、時、謂、

得、四果。


臨、命、終、時、

見、四禅中陰相、

便、生、邪見、謂、

無、涅槃。

我、是、羅漢。

今、還復、生。

仏、為、虚誑。


是時、即、見、阿鼻泥梨中陰相、

命、終、即、生、阿鼻泥梨中。


是時、仏、説、偈、言、

多聞、持戒、禅、未得、漏尽法。

雖、有、此功徳、此事、難、可、信。

堕獄、由、謗、仏。

非関、第四禅。


この比丘を称して四禅比丘という。

または、無聞比丘と称す。

四禅をえたるを四果と僻計せることをいましめ、また、謗、仏の邪見をいましむ。

人、天大会、みな、しれり。

如来、在世より今日にいたるまで、西天、東地、ともに、是にあらざるを是と執せるをいましむとして、四禅をえて四果とおもうがごとし、とあざける。

この比丘の不是、しばらく、略挙するに、三種あり。


第一には、みずから四禅と四果とを分別するにおよばざる無聞の身ながら、いたずらに師をはなれて、むなしく阿蘭若に独処す。

さいわいに、これ、如来、在世なり。

つねに仏所に詣して、常恒に、見仏聞法せば、かくのごとく、あやまり、あるべからず。

しかあるに、阿蘭若に独処して、仏所に詣せず。

ついに、見仏聞法せざるによりて、かくのごとし。

たとえ仏所に詣せずというとも、諸大阿羅漢、所にいたりて、教訓をうくべし。

いたずらに独処する、増上慢のあやまりなり。


第二には、

初禅をえて、初果とおもい、

二禅をえて、第二果とおもい、

三禅をえて、第三果とおもい、

四禅をえて、第四果とおもう。

第二のあやまりなり。

初、二、三、四禅の相と、初、二、三、四果の相と、比類に及ばず。

たとうること、あらんや?

これ、無聞のとがによれり。

師につかえず、くらきによれる、とがなり。


優婆毱多、弟子中、有、一比丘。

信心、出家、獲得、四禅、謂、為、

四果。


毱多、方便、令、往、他所。

於、路、化作、群賊。

復、化作、五百賈客。

賊、おどす、賈客、殺害、狼藉。

比丘、見、生、怖、即便、自、念、

我、非、羅漢。

応、是、第三果。


賈客、亡後、有、長者女、語、比丘、言、

唯、願、大徳、

与、我、共、去。


比丘、答、言、

仏、不許、我、与、女人、行。


女、言、

我、望、大徳、而、随、其後。


比丘、憐愍、相望、而、行。

尊者、次、復、変作、大河。

女人、言、

大徳、可、共、我、度。


比丘、在、下流。

女、在、上流。

女、便、堕、水、白、言、

大徳、済、我。


爾時、比丘、手、接、而、出、

生、細、滑、想、

起、愛欲心、

便、自、知、

非、阿那含。


於、此、女人、極、生、愛著、将、向、屏所、欲、共、交通、

方、見、是、師、

生、大慚愧、

低頭、而、立。

尊者、語、言、

汝、曾、自、謂、

是、阿羅漢。


云何、欲、為、如此、悪事?


将、至、僧中、

教、其、懺悔、

為、説、法要、

得、阿羅漢。


この比丘、はじめ生、見のあやまりあれども、殺害の狼藉をみるに、おそれを生ず。

ときに、われ、羅漢にあらず、とおもう。

なお、第三果なるべし、とおもう、あやまり、あり。

のちに、細、滑の想によりて愛欲の心を生ずるに、阿那含にあらず、としる。

さらに、謗、仏のおもいを生ぜず、謗、法のおもい、なし、聖教にそむくおもいあらず。

四禅比丘には、ひとしからず。

この比丘は、聖教を習学せるちから、あるによりて、みずから、阿羅漢にあらず、阿那含にあらず、としるなり。

いまの無聞のともがらは、阿羅漢は、いかなり。ともしらず、仏は、いかなり。ともしらざるがゆえに、みずから、阿羅漢にあらず。仏にあらず。ともしらず、みだりに、われは、仏なり。とのみ、おもい、いうは、おおいなる、あやまりなり。

ふかき、とが、なるべし。

学者、まず、すべからく、仏は、いかなるべし。とならうべきなり。


古徳、曰、

故、知、

習聖教者、薄知、次位、

縦、生、逾濫、

亦、易、開、解。


まことなるかな、古徳の語。

たとえ生、見の、あやまり、ありとも、すこしきも仏法を習学せらんともがらは、みずからにも欺誑せられじ、他人にも欺誑せられじ。


曾、聞、


有、人、自、謂、

成仏。


待、天、不暁、謂、

為、魔障。


暁、已、不見、梵王、請、説法、

自、知、

非、仏。


自、謂、

是、阿羅漢。


又、被、他人、罵、之、

心、生、異念、

自、知、

非是、阿羅漢。


乃、謂、

是、第三果、也。


又、見、女人、起、欲想、

知、

非、聖人。


此、亦、良、由、知、教相、故、乃、如是、也。


それ、仏法をしれるは、かくのごとく、みずからが非を覚知し、はやく、あやまりをなげすつ。

しらざるともがらは、一生、むなしく愚蒙のなかにあり。

生より生をうくるも、また、かくのごとくなるべし。

この優婆毱多の弟子は、四禅をえて、四果とおもうといえども、さらに我、非、羅漢の智あり。

無聞比丘も、臨、命、終のとき、四禅の中陰、みゆることあらんに、我、非、羅漢としらば、謗、仏の罪、あるべからず。

いわんや、四禅をえて、のち、ひさし。

なんぞ、四果にあらず。と、かえりみ、しらざらん?

すでに、四果にあらず。としらば、なんぞ、あらためざらん?

いたずらに僻計にとどこおり、むなしく邪見にしずめり。


第三には、命、終のとき、おおきなる、あやまり、あり。

そのとが、ふかくして、ついに、阿鼻地獄におちぬるなり。

たとえ、なんじ、一生のあいだ、四禅を四果とおもいきたれりとも、臨、命、終のとき、四禅の中陰、みゆることあらば、一生のあやまりを懺悔して、四果には、あらざりき。とおもうべし。

いかでか、仏、われを欺誑して、涅槃なきに、涅槃あり、と施設せさせたまう。とおもうべき?

これ、無聞のとがなり。

このつみ、すでに、謗、仏なり。

これによりて、阿鼻の中陰、現じて、命、終して阿鼻地獄におちぬ。

たとえ四果の聖者なりとも、いかでか如来におよばん?

舎利弗は、ひさしく、これ、四果の聖者なり。

三千大千世界、所有の智慧をあつめて、如来をのぞきたてまつりて、ほかを一分とし、舎利弗の智慧を十六分にせる一分と、三千大千世界、所有の智慧とを格量するに、舎利弗の十六分の一分に、およばざるなり。

しかあれども、如来、未曾説の法をときましますをききて、前後の仏説、ことにして、われを欺誑しまします、とおもわず。

波旬、無、此事。と、ほめたてまつる。

如来は、福増をわたし、舎利弗は、福増をわたさず。

四果と仏果と、はるかに、ことなること、かくのごとし。

たとえ舎利弗、および、もろもろの弟子のごとくならん、十方界にみちみてらん、ともに、仏智を測量せんこと、うべからず。

孔、老に、かくのごとくの功徳、いまだ、なし。

仏法を習学せんもの、だれが、孔、老を測度せざらん?

孔、老を習学するもの、仏法を測量すること、いまだ、なし。

いま、大宋国のともがら、おおく、孔、老と、仏道と、一致の道理をたつ。

僻見、もっとも、ふかきものなり。

しもに、まさに、広説すべし。

四禅比丘、みずからが僻見をまこととして、如来の、欺誑しまします、とおもう、ながく仏道を違背したてまつるなり。

愚痴のはなはだしき、六師、等に、ひとしかるべし。


古徳、曰、

大師、在世、尚、有、僻計、生見之人。

況、滅度後、無師、不得禅者。


いま、大師とは、仏世尊なり。

まことに、世尊、在世、出家、受具せる、なお、無聞によりては僻計、生、見のあやまり、のがれがたし。

いわんや、如来、滅度後、後五百歳、辺地、下賤の時、所、あやまり、なからんや?

四禅を発せるもの、なお、かくのごとし。

いわんや、四禅を発するにおよばず、いたずらに貪名愛利にしずめらんもの、官途、世路をむさぼるともがら、不足、言なるべし。

いま、大宋国に寡聞、愚鈍のともがら、おおし。

かれらが、いわく、仏法と、孔子、老子の法と、一致にして異声にあらず。


大宋、嘉泰中、

有、僧、正受。

撰進、普燈録、三十巻、曰、

臣、聞、孤山智円之言、曰、

吾道、如、鼎、也。

三教、如、足。

足、一、虧、而、鼎、覆、焉。


臣、嘗、慕、其人稽、其説。

乃、知、

儒、之、為、教、其要、在、誠意。

道、之、為、教、其要、在、虚心。

釈、之、為、教、其要、在、見性。

誠意、也、

虚心、也、

見性、也、

異名、同体。

究、そのするところ帰、無、適、而、不、与、此道、会。

云云。


かくのごとく、僻計、生、見のともがらのみ、おおし。

ただ智円、正受のみには、あらず。

このともがらは、四禅をえて、四果とおもわんよりも、そのあやまり、ふかし。

謗、仏、謗、法、謗、僧なるべし。

すでに、撥無、解脱なり、撥無、三世なり、撥無、因果なり。

莽莽蕩蕩、招、殃禍、うたがい、なし。

三宝、四諦、四沙門果、なし、とおもいし、ともがらに、ひとし。

仏法、いまだ、其要、見性にあらず。

七仏、西天二十八祖、いずれのところか、仏法、ただ見性のみなる、とある?

六祖壇経に見性の言あり。

かの書、これ、偽書なり。

付法蔵の書にあらず。

曹谿の言句にあらず。

仏祖の児孫、まったく依用せざる書なり。

正受、智円、いまだ仏法の一隅をしらざるによりて、一鼎三足の邪見をなす。


古徳、曰、

老子、荘子、尚、自、未識、小乗、能著、所著、能破、所破。

況、大乗中、若、著、若、破。

是故、不、与、仏法、少、同。

然者、

世間、愚者、迷、於、名、相、

濫禅者、惑、於、正理、

欲、将、道徳、道、逍遥之名、斉、於、仏法解脱之説。

豈、可、得、乎?


むかしより、名、相にまようもの、正理をしらざるともがら、仏法をもって荘子、老子にひとしむるなり。

いささかも、仏法の稽古あるともがら、むかしより、荘子、老子をおもくする、一人、なし。


清浄法行経、曰、

月光菩薩、彼称、顔回。

光浄菩薩、彼称、仲尼。

迦葉菩薩、彼称、老子。

云云。


むかしより、この経の説を挙して、孔子、老子、等も、菩薩なれば、その説、ひそかに仏説に、おなじかるべし、といい、また、仏のつかいならん、その説、おのずから仏説ならん、という。


この説、みな、非なり。


古徳、曰、

準、諸目録、

皆、推、此経、以、為、疑偽。

云云。


いま、この説によらば、いよいよ仏法と、孔、老と、ことなるべし。

すでに、これ、菩薩なり。

仏果に、ひとしかるべからず。

また、和光応迹の功徳は、ひとり三世諸仏、菩薩の法なり。

俗塵、凡夫の、所能にあらず。

実業の凡夫、いかでか応迹に自在あらん?

孔、老、いまだ応迹の説、なし。

いわんや、孔、老は、先因をしらず、当果をとかず。

わずかに一世の忠孝をもって、きみにつかえ、家をおさむる術をむねとするなり。

さらに、後世の説、なし。

すでに、これ、断見の流類なるべし。


荘、老をきらうに、小乗、なお、しらず。

いわんや、大乗をや?

というは、上古の明師なり。


三教一致というは、智円、正受なり、後代、澆季、愚闇の凡夫なり。

なんじ、なんの勝出あればか、上古の先徳の所説をさみして、みだりに、仏法と、孔、老と、ひとしかるべし、という?

なんだちが所見、すべて、仏法の通塞を論ずるに、たえず。

負、笈して明師に参学すべし。

智円、正受、なんじら、大小両乗、すべて、いまだ、しらざるなり。

四禅をえて、四果とおもいしよりも、くらし。

かなしむべし、澆風のあおぐところ、かくのごとくの魔子、おおかることを。


古徳、曰、

如、孔丘、姫旦之語、三皇五帝之書、

孝、以、治、家、

忠、以、治、国、

輔、国、

利、民。

只、是、一世之内、不渡、過、未。

未、斉、仏法之益、於、三世。

豈、謬、乎?


まことなるかな、古徳の語。

よく、仏法の至理に達せり。

世俗の道理に、あきらかなり。

三皇五帝の語、いまだ、転輪聖王のおしえに、およぶべからず。

梵王、帝釈の説にならべ論ずべからず。

統領するところ、所得の果報、はるかに、劣なるべし。

輪王、梵王、帝釈、なお、出家、受具の比丘におよばず。

いかに、いわんや、如来に、ひとしからんや?

孔丘、姫旦の書、また、天竺の十八大経におよぶべからず。

四韋陀の典籍にならべがたし。

西天、婆羅門教、いまだ、仏教に、ひとしからざるなり。

なお、小乗、声聞教にひとしからず。

あわれむべし、震旦、小国、辺方にして、三教一致の邪説あることを。


第十四祖、龍樹菩薩、曰、

大阿羅漢、辟支仏、知、八万大劫。

諸大菩薩、及、仏、知、無量劫。


孔、老、等、いまだ、一世のうちの前後をしらず。

一生、二生の宿通あらんや?

いかに、いわんや、一劫をしらんや?

いかに、いわんや、百劫、千劫をしらんや?

いかに、いわんや、八万大劫をしらんや?

いかに、いわんや、無量劫をしらんや?

この無量劫をあきらかに、てらし、しれること、たなごころをみるよりも、あきらかなる諸仏、菩薩を、孔、老、等に比類せん、愚闇というにも、たらざるなり。

みみをおおうて、三教一致の言をきくことなかれ。

邪説中、最邪説なり。


荘子、曰、

貴賤、苦楽、是非、得失、皆、是、自然。


この見、すでに西国の自然見の外道の流類なり。

貴賤、苦楽、是非、得失、みな、これ、善悪業の感ずるところなり。

満業、引業をしらず。

過去、来世をあきらめざるがゆえに、現在にくらし。

いかでか、仏法に、ひとしからん?

あるが、いわく、

諸仏、如来、ひろく法界を証するゆえに、微塵、法界、みな、諸仏の所証なり。

しかあれば、依正二報、ともに、如来の所証となりぬるがゆえに、山河大地、日月星辰、四倒三毒、みな、如来の所証なり。

山河をみるは、如来をみるなり。

三毒四倒、仏法にあらず、ということ、なし。

微塵をみるは、法界をみるに、ひとし。

造次顛沛、みな、三菩提なり。

これを大解脱という。

これを単伝直指の祖道となづく。


かくのごとくいうともがら、大宋国に稲麻竹葦のごとく、朝野に遍満せり。

しかあれども、このともがら、だれ人の児孫ということ、あきらかならず。

すべて、仏祖の道をしらざるなり。

たとえ諸仏の所証となるとも、山河大地、たちまちに凡夫の所見、なかるべきにあらず。

諸仏の所証となる道理をならわず、きかざるなり。

なんじ、微塵をみるは、法界をみるに、ひとし、という。

たみの、王に、ひとし、と、いわんがごとし。

また、なんぞ、法界をみて、微塵に、ひとし、と、いわざる?

このともがらの所見を仏祖の大道とせば、諸仏、出世すべからず、祖師、出現すべからず、衆生、得道すべからざるなり。

たとえ生、即、無生と体達すとも、この道理にあらず。


真諦三蔵、云、

震旦、有、二福。

一、無、羅刹。

二、無、外道。


このことば、まことに、西国の外道、婆羅門の伝来せるなり。

得通の外道、なしというとも、外道の見をおこすともがら、なかるべきにあらず。

羅刹は、いまだ、みえず。

外道の流類は、なきにあらず。

小国、辺地のゆえに、中印度のごとくにあらざることは、仏法をわずかに修習すといえども、印度のごとくに証をとれる、なし。


古徳、曰、

今時、多、有、還俗者、畏憚、王役、入、外道中。

偸、仏法義、

竊、解、荘、老、

遂、成、混雑、迷惑、初心、孰、正、孰、邪。

是、為、発、得、韋陀法之見。


しるべし。

仏法と、荘、老と、いずれが正、いずれが邪をしらず、混雑するは、初心のともがらを迷惑する。

いまの知円、正受、等、これなり。

ただ愚昧のはなはだしきのみにあらず。

稽古なきのいたり、顕然なり、炳焉なり。

近日、宋朝の、僧徒、ひとりとしても、孔、老は、仏法におよばず、としれるともがら、なし。

名を仏祖の児孫にかれるともがら、稲麻竹葦のごとく、九州の山野にみてりというとも、孔、老のほかに、仏法、すぐれ、いでたり、と暁了せる一人、半人あらず。

ひとり先師、天童古仏のみ、仏法と、孔、老と、ひとつにあらず、と暁了せり、昼夜に施設せり。

経論師、また、講者の名、あれども、仏法、はるかに、孔、老の辺を勝出せり、と暁了せる、なし。

近代、一百年来の、講者、おおく、参禅学道のともがらの儀をまなび、その解会をぬすまんとす。

もっとも、あやまれり、というべし。

孔子の書に生知者あり。

仏教には、生知者なし。

仏法には、舎利の説あり。

孔、老、舎利の有無をしらず。

一にして混雑せん、とおもうとも、広説の通塞、ついに、不得ならん。


論語、云、

生、而、知、之、上。

学、而、知者、次。

困、而、学、之、又、其次、也。

困、而、不学、民、斯、為、下、矣。


もし生知あらば、無因のとが、あり。

仏法には、無因の説なし。

四禅比丘は、臨、命、終の時、たちまちに謗、仏のつみに堕す。

仏法をもって、孔、老の教に、ひとし、とおもわん、一生のうちより謗、仏のつみ、ふかかるべし。

学者、はやく、仏法と、孔、老と、一致なり、と邪計する解をなげすつべし。

この見、たくわえて、すてずば、ついに、悪趣に堕すべし。

学者、あきらかに、しるべし。

孔、老は、三世の法をしらず、因果の道理をしらず、一洲の安立をしらず。

いわんや、四洲の安立をしらんや?

六天のこと、なお、しらず。

いわんや、三界九地の法をしらんや?

小千界しらず。

中千界をしるべからず。

三千大千世界をみること、あらんや? しること、あらんや?

震旦一国に、なお、小臣にして帝位にのぼらず。

三千大千世界に王たる如来に比すべからず。

如来は、梵天、帝釈、転輪聖王、等、昼夜に恭敬、侍衛し、恒時に、法を請したてまつる。

孔、老に、かくのごとくの徳、なし。

ただ、これ、流転の凡夫なり。

いまだ出離、解脱の道をしらず。

いかでか、如来のごとく、諸法実相を究尽すること、あらん?

もし、いまだ究尽せずば、なにによりてか、世尊にひとし、とせん?

孔、老、内徳、なし、外用、なし。

世尊に、およぶべからず。

三教一致の邪説をはかんや?

孔、老、世界の有辺際、無辺際を通達すべからず。

広をみず、しらず。

大をしらず、みざるのみにあらず。

極微色をみず。

刹那量をしるべからず。

世尊、あきらかに極微色をみ、刹那量をしらせたまう。

いかにしてか、孔、老に、ひとしめたてまつらん?

孔、老、荘子、恵子、等は、ただ、これ、凡夫なり。

なお、小乗の須陀洹に、およぶべからず。

いかに、いわんや、第二、第三、第四の阿羅漢に、およばんや?

しかあるを、学者、くらきによりて、諸仏にひとしむる、迷中又深迷なり。

孔、老は、三世をしらず、多劫をしらざるのみにあらず、一念、しるべからず、一心、しるべからず。

なお、日、月天に比すべからず。

四大王、衆天におよぶべからざるなり。

世尊に比せば、世間、出世間に、迷惑するなり。


列伝、云、

喜、為、周大夫。

善、星象。

因、見、異気。

而、東、迎、之、果、得、老子。

請、著書、五千有言。

喜、亦、自、著書、九篇、名、関令子。準、化胡経。

老、過、関、西。

喜、欲、従、聃、求、去。

聃、云、

若、欲、志心、求、去、当、将、父母、等、七人頭、来。

乃、可、得、去。


喜、乃、従、教、

七頭、皆、変、猪頭。


古徳、云、

然、俗典、孝儒、尚、尊、木像。

老聃、設、化、令、喜、害、親。

如来、教門、大慈、為、本。

如何、老氏、逆、為、化原?


むかしは、老聃をもって、世尊にひとしむる邪党あり。

いまは、孔、老、ともに、世尊にひとし、という愚侶あり。

あわれまざらめやは?

孔、老、なお、転輪聖王の、十善をもって世間を化するに、およぶべからず。

三皇五帝、いかでか、金、銀、銅、鉄、諸輪王の、七宝、千子、具足して、あるいは、四天下を化し、あるいは、三千界を領せるに、およばん?

孔、老は、いまだ、これにも、比すべからず。

過、現、当来の諸仏、諸祖、ともに、父母、師僧、三宝に孝順し、病人、等を供養するを化原とせり。

害、親を化原とせる、いまだ、むかしより、あらざるところなり。

しかあれば、すなわち、老聃と、仏法と、ひとつにあらず。

父母を殺害するは、かならず、順次生業にして泥梨に堕すること、必定なり。

たとえ老聃、みだりに虚無を談ずるとも、父母を害せんもの、生、報をまぬがれざらん。


伝燈録、云、

二祖、毎、歎、云、

孔、老之教、礼術、風規。

荘、易之書、未尽、妙理。

近、聞、達磨大士、住止、少林。

至人、不遠。

当、造、玄境。


いまのともがら、あきらかに信ずべし。

仏法を震旦に正伝せることは、ただ、ひとえに、二祖、参学のちからなり。

初祖、たとえ西来せりとも、二祖をえずば、仏法、つたわれざらん。

二祖もし仏法をつたえずば、東地、いまに、仏法、なからん。

おおよそ、二祖は、余輩に群すべからず。


伝燈録、云、

僧、神光、者、曠達之士。

久、居、伊洛。

博覧、群書。

善、談、玄理。


むかし、二祖の、群書を博覧すると、いまの人、書巻をみると、はるかに、ことなるべし。

得法、伝衣ののちも、むかし、われ、孔、老之教、礼術、風規とおもいしは、あやまりなり、としめすことば、なし。

しるべし。

二祖、すでに、孔、老は、仏法におよぶこと、あらず、と通達せり。

いまの遠孫、なにとしてか、祖父に違背して、仏法と一致なり、というや?

まさに、しるべし、邪説なり、と。

二祖の遠孫にてあらば、正受、等が説、だれが、もちいん?

二祖の児孫たるべくば、三教一致、ということなかれ。


如来、在世、有、外道、名、論力。

自、謂、

論議、無、学、等者。

其力、最大。


故、曰、論力。

受、五百、梨昌、募、

撰、五百、明難、

来、難、世尊。

来至、仏所、而、奉、問、仏、云、

為、一究竟道?

為、衆多究竟道?


仏、言、

唯一究竟道。


論力、云、

我等、諸師、各、説、

有、究竟道。

以、外道中、各、

自、謂、是。

毀訾、他法。

互、相、是非、故。

有、多道。


世尊、其時、已、化、鹿頭。

成、無学果。

在、仏、辺、立。


仏、問、論力、

衆多道中、誰、為、第一?


論力、云、

鹿頭、第一、也。


仏、言、

其、

若、第一、

云何、捨、其道、

為、我弟子、

入、我道中?


論力、

見、

既、慚愧、低頭、帰依、入道。


是時、仏、説、義品、偈、曰、

各各、謂、究竟、

而、各、自、愛著、

各、自、是、

非、他。

是、皆、非、究竟。

是人、入、論衆、弁明、義理、時、

各各、相、是非、勝負、懐、憂苦。

勝者、堕、慢、坑。

負者、堕、憂、獄。

是故、

有智者、不堕、此二法。

論力、汝、当、知、

我諸弟子法、無、虚、亦、無、実。

汝、欲、何所、求?

汝、欲、壊、我論、

終、已、無、此所。

一切知、難、明。

還、是、自、毀壊。


いま、世尊の金言、それ、かくのごとし。

東土、愚闇の衆生、みだりに仏教に違背して、仏道とひとしき道あり、ということなかれ。

すなわち、謗、仏、謗、法となるべきなり。

西天の鹿頭、並、論力、乃至、長爪梵志、先尼梵志、等は、博学の人たり。

東土に、むかしより、いまだ、なし。

孔、老、さらに、およぶべからざるなり。

これら、みな、みずからが道をすてて、仏道に帰依す。

いま、孔、老の俗人をもって、仏法に比類せんは、きかんものも、つみ、あるべし。

いわんや、阿羅漢、辟支仏も、みな、ついに、菩薩となる。

一人としても、小乗にして、おわるもの、なし。

いかでか、いまだ仏道にいらざる孔、老を、諸仏にひとし、と、いわんや?

大邪見なるべし。

おおよそ、如来、世尊、はるかに、一切を超越しましますこと、すなわち、諸仏、如来、諸大菩薩、梵天、帝釈、みな、ともに、ほめたてまつり、しりたてまつれるところなり。

西天二十八祖、ともに、しれるところなり。

おおよそ、参学のちからあるもの、みな、ともに、しれり。

いま、澆運の衆生、宋朝、愚暗のともがらの、三教一致の狂言、もちいるべからず。

不学のいたりなり。


正法眼蔵 四禅比丘

建長七年乙卯、夏安居日、以、御草案本、書写、畢。    懐弉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ