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正法眼蔵  作者: Eliphas1810
87/94

正法眼蔵 帰依三宝

禅苑清規、曰、

敬、仏法僧? 否?


(一百二十問、第一)


あきらかに、しりぬ。

西天、東土、仏祖、正伝するところは、恭敬、仏法僧なり。

帰依せざれば、恭敬せず。

恭敬せざれば、帰依すべからず。

この帰依、仏法僧の功徳、かならず、感応道交するとき、成就するなり。

たとえ天上、人間、地獄、鬼、畜なりといえども、感応道交すれば、かならず、帰依したてまつるなり。

すでに帰依したてまつるがごときは、生生、世世、在在所所に増長し、かならず、積功累徳し、阿耨多羅三藐三菩提を成就するなり。

おのずから悪友にひかれ、魔障にあうて、しばらく断善根となり、一闡提となれども、ついには続善根し、その功徳、増長するなり。

帰依、三宝の功徳、ついに、不朽なり。

その帰依、三宝とは、まさに、浄信をもっぱらにして、あるいは、如来、現在、世にもあれ、あるいは、如来、滅後にもあれ、合掌し低頭して、口にとなえて、いわく、

我、某甲、

従、今身、至、仏身、

帰依、仏、

帰依、法、

帰依、僧、

帰依、仏、両足尊、

帰依、法、離欲尊、

帰依、僧、衆中尊、

帰依、仏、竟、

帰依、法、竟、

帰依、僧、竟。


はるかに仏果、菩提をこころざして、かくのごとく僧那を始発するなり。

しかあれば、すなわち、身心、いまも刹那、刹那に生滅すといえども、法身、かならず長養して、菩提を成就するなり。

いわゆる、帰依とは、

帰は、帰投なり。

依は、依伏なり。

このゆえに、帰依という。

帰投の相は、たとえば、子の、父に帰するがごとし。

依伏は、たとえば、民の、王に依するがごとし。

いわゆる、救済の言なり。

仏は、これ、大師なるがゆえに、帰依す。

法は、良薬なるがゆえに、帰依す。

僧は、勝友なるがゆえに、帰依す。


問、

何故、偏、帰、此三?


答、

以、此三種、畢竟、帰所。

能、令、衆生、出離、生死。

証、大菩提。

故、帰。


此三種、畢竟、不可思議、功徳なり。


仏は、

西天には、仏陀耶と称す。

震旦には、覚と翻す。

無上正等覚なり。


法は、

西天には、達磨と称す。

また、曇無と称す。

梵音の不同なり。

震旦には、法と翻す。

一切の善、悪、無記の法、ともに、法と称すといえども、いま、三宝のなかの帰依するところの法は、軌則の法なり。


僧は、

西天には、僧伽と称す。

震旦には、和合衆と翻す。


かくのごとく称讃しきたれり。


住持三宝。


形像、塔廟、仏宝。

黄紙朱軸、所伝、法宝。

剃髪、染衣、戒法儀相、僧宝。


化儀三宝。


釈迦牟尼世尊、仏宝。

所転法輪、流布聖教、法宝。

阿若憍陳如等五人、僧宝。


理体三宝。


五分法身、名、為、仏宝。

滅諦無為、名、為、法宝。

学無学功徳、名、為、僧宝。


一体三宝。


証理大覚、名、為、仏宝。

清浄離染、名、為、法宝。

至理和合、無擁無滞、名、為、僧宝。


かくのごとくの三宝に帰依したてまつれるなり。

もし薄福少徳の衆生は、三宝の名字、なお、ききたてまつらざるなり。

いかに、いわんや、帰依したてまつることをえんや?


法華経、曰、

是諸罪衆生、以、悪業因縁、過、阿僧祇劫、不聞、三宝、名。


法華経は、諸仏、如来、一大事、因縁なり。

大師、釈尊、所説の諸経のなかには、法華経、これ、大王なり、大師なり。

余経、余法は、みな、これ、法華経の臣民なり、眷属なり。

法華経中の所説、これ、まことなり。

余経中の所説、みな、方便を帯せり、ほとけの本意にあらず。

余経中の説をきたして法華に比校したてまつらん、これ、逆なるべし。

法華の功徳力をこうむらざれば、余経、あるべからず。

余経、みな、法華に帰投したてまつらんことをまつなり。

この法華経のなかに、いまの説まします。

しるべし、三宝の功徳、まさに、最尊なり、最上なり、ということを。


世尊、言、

衆人、怖、所逼、多、帰依、諸山、園苑、及、叢林、孤樹、制多、等。

此帰依、非、勝。

此帰依、非、尊。

不、因、此帰依、能、解脱、衆苦。

諸、有、帰依、仏、及、帰依、法、僧、

於、四聖諦中、恒、以、慧、観察、知、苦、知、苦集、知、永超、衆苦。

知、八支聖道、趣、安穏、涅槃。

此帰依、最勝。

此帰依、最尊。

必、因、此帰依、能、解脱、衆苦。


世尊、あきらかに、一切衆生のために、しめしまします。

衆生、いたずらに所逼をおそれて、山神、鬼神、等に帰依し、あるいは、外道の制多に帰依することなかれ。

かれは、その帰依によりて衆苦を解脱することなし。

おおよそ、外道の邪教にしたがうて、

牛戒、鹿戒、羅刹戒、鬼戒、瘂戒、聾戒、狗戒、鶏戒、雉戒、

以、灰、塗、身、

長髪、為、相、

以、羊、祠、時、

先、呪、後、殺、

四月、事、火、

七日、服、風、

百、千、億華、供養、諸天、所欲願、因、此、成就。

如是等法、能、為、解脱因、者、無有、是所。

智者、所不讃。

むなしく、苦、無、善報。


かくのごとくなるがゆえに、いたずらに邪道に帰せざらんこと、あきらかにみわける、究すべし。

たとえ、これらの戒に、ことなる法なりとも、その道理、もし孤樹、制多、等の道理に符合せらんは、帰依することなかれ。

人身、うること、かたし。

仏法、あうこと、まれなり。

いたずらに鬼神の眷属として一生をわたり、むなしく邪見の流類として多生をすごさん、かなしむべし。

はやく仏法僧の三宝に帰依したてまつりて、衆苦を解脱するのみにあらず、菩提を成就すべし。


希有経、曰、

教化、四天下、及、六欲天、皆、得、四果、不如、一人、受、三帰、功徳。


四天下とは、東西南北洲なり。

そのなかに、北洲は、三乗の化、いたらざるところなり。

かしこの一切衆生を教化して阿羅漢となさん、まことに、はなはだ希有なり、とすべし。

たとえ、その益ありとも、一人をおしえて三帰をうけしめん功徳には、およぶべからず。

また、六天は、得道の衆生、まれなりとするところなり。

かれをして四果をえせしむとも、一人の受、三帰の功徳の、おおく、ふかきに、およぶべからず。


増一阿含経、曰、

有、忉利天子、五衰相、現、当、生、猪中。

愁憂之声、聞、於、天帝。

天帝、聞、之、喚、来、告、曰、

汝、可、帰依、三宝。

即時、如、教。

便、免、生、猪。


仏、説、偈、言、

諸有、帰依、仏、

不墜、三悪道、

尽、漏、

処、人、天、

便、当、至、涅槃。


受、三帰、已、

生、長者家、

還、得、出家、

成、於、無学。


おおよそ、帰依、三宝の功徳、はかり、はかるべきにあらず、無量、無辺なり。


世尊、在世に、二十六億の餓龍、ともに、仏所に詣し、みな、ことごとく、あめのごとく、なみだをふらして、もうして、もうさく、

唯、願、哀愍、救済、於、我。

大悲世尊、

我等、憶念、過去世時、於、仏法中、雖、得、出家、備造、如是、種種、悪業。

以、悪業、故、経、無量身、在、三悪道。

亦、以、余報、故、生、在、龍中、受、極大苦。


仏、告、諸龍、

汝等、今、当、尽、受、三帰、一心、修、善。

以、此縁、故、於、賢劫中、値、最後仏、名、曰、楼至。

於、彼仏世、罪、得、除滅。


時、諸龍等、聞、是語、已、

皆、悉、至心、尽、其形、寿、各、受、三帰。


ほとけ、みずから諸龍を救済しましますに、余法なし、余術なし、ただ三帰をさずけまします。

過去世に出家せしとき、かつて三帰をうけたりといえども、業報によりて餓龍となれるとき、余法の、これをすくうべき、なし。

このゆえに、三帰をさずけまします。

しるべし、三帰の功徳、それ、最尊、最上、甚深、不可思議なり、ということ。

世尊、すでに証明しまします。

衆生、まさに、信受すべし。

十方の諸仏の名号を称念せしめましまさず、ただ三帰をさずけまします。

仏意の甚深なる、だれが、これを測量せん?

いまの衆生、いたずらに各各の一仏の名号を称念せんよりは、すみやかに三帰をうけたてまつるべし。

愚闇にして、大功徳をむなしくすることなかれ。


爾時、衆中、有、盲龍女。

口中、

膖爛、満、諸雑蟲、

状、如、屎尿。

乃至、穢悪、猶、若、婦人根中、不浄。

臊臭、難、看。

種種噬食。

膿血、流出。

一切身分、常、有、蚊、虻、諸悪毒蝿之所唼食、

身体、臭所、難、可、見聞。


爾時、世尊、以、大悲心、見、彼龍婦、眼、盲、困苦、如是、問、言、

妹、

何縁、故、得、此悪身?

於、過去世、曾、為、何業?


龍婦、答、言、

世尊、

我今此身、衆苦、逼迫、無、暫時、停。

設、復、欲、言、而、不能、説。

我、念、過去三十六億、於、百千年、悪龍中、受、如是苦、乃至、日夜、刹那、不停。

為、

我、往昔、九十一劫、於、毘婆尸仏法中、作、比丘尼、

思念、欲事、過、於、酔人、

雖、復、出家、不能、如法、

於、伽藍内、敷施、牀褥、数数、犯、於、非梵行事、以、快欲心、生、大楽、受、

或、貪、求、他物、多、受、信施。

以、如是、故、於、九十一劫、常、不得、受、天人之身、恒、三悪道、受、諸焼、煮。


仏、又、問、言、

若、如是、此中、劫、尽、妹、何所、生?


龍婦、答、言、

我、以、過去業力、因縁、生、余世界、彼劫、尽、時、悪業、風、吹、還、来生、此。


時、彼龍婦、説、此語、已、作、如是言、

大悲世尊、

願、救済、我。

願、救済、我。


爾時、世尊、以、手、掬、水、告、龍女、言、

此水名、為、瞋陀留脂薬和。

我、今、誠実、発、言、語、汝、

我、於、往昔、為、救、鴿、故、棄捨、身命、終、不、疑念、起、慳惜心。

此言、若、実、令、汝、悪患、悉皆、除、いえる


時、仏世尊、

以、口、含、水、灑、彼盲龍婦女之身、

一切悪患臭所、皆、いえる


既得、いえる、已、

作、如是、説、言、

我、今、於、仏、乞、受三帰。


是時、世尊、即、為、龍女、授、三帰依。


この龍女、むかしは毘婆尸仏の法のなかに、比丘尼となれり。

禁戒を破すというとも、仏法の通塞を見聞すべし。

いまは、まのあたり、釈迦牟尼仏にあいたてまつりて三帰を乞、受す。

ほとけより三帰をうけたてまつる、厚、殖、善根というべし。

見仏の功徳、かならず、三帰によれり。

われら、盲龍にあらず、畜身にあらざれども、如来をみたてまつらず、ほとけにしたがいたてまつりて三帰をうけず、見仏、はるかなり、はじつべし。

世尊、みずから三帰をさずけまします。

しるべし、三帰の功徳、それ、甚深、無量なり、ということ。

天帝釈の野干を拝して三帰をうけし、みな、三帰の功徳の甚深なるによりてなり。


仏、在、迦毘羅衛、尼拘陀林、時、釈摩男、来至、仏所、作、如是言、

云何、名、為、優婆塞、也?


仏、即、為、説、

若、有、善男子、善女人、諸根、完具、受、三帰依、是即、名、為、優婆塞、也。


釈摩男、言、

世尊、

云何、名、為、一分優婆塞?


仏、言、

摩男、

若、受、三帰、及、受、一戒、是、名、一分優婆塞。


仏弟子となること、かならず、三帰による。

いずれの戒をうくるも、かならず、三帰をうけて、そののち、諸戒をうくるなり。

しかあれば、すなわち、三帰によりて、得戒あるなり。


法句経、云、

昔、有、天帝、自、知、命、終、生、於、驢中、

愁憂、不已、曰、

救苦厄者、唯、仏世尊。


便、至、仏所、稽首、伏、地、帰依、於、仏。

未起之間、其命、便、終、生、於、驢胎。

母驢、くつわ、断、破、陶家、坏器。

器主、打、之、遂、傷、其胎、

還、入、天帝身中。

仏、言、

殞命之際、帰依、三宝、罪、対、已、畢。


天帝、聞、之、得、初果。


おおよそ、世間の苦厄をすくうこと、仏世尊には、しかず。

このゆえに、天帝、いそぎ世尊のみもとに詣す。

伏、地のあいだに命、終し、驢胎に生ず。

帰仏の功徳により、驢母のくつわ、やぶれて、陶家の坏器を踏破す。

器主、これをうつ。

驢母の身、いたみて、託胎の驢、やぶれぬ。

すなわち、天帝の身に、かえり、いる。

仏説をききて初果をうる。

帰依、三宝の功徳力なり。

しかあれば、すなわち、世間の苦厄、すみやかに、はなれて、無上菩提を証得せしむること、かならず、帰依、三宝のちから、なるべし。

おおよそ、三帰のちから、三悪道をはなるるのみにあらず、天帝釈の身に還、入す。

天上の果報をうるのみにあらず、須陀洹の聖者となる。

まことに、三宝の功徳海、無量、無辺にましますなり。

世尊、在世は、人、天、この慶幸あり。

いま、如来滅後、後五百歳のとき、人、天、いかがせん?

しかあれども、如来、形像、舎利、等、なお、世間に現住しまします。

これに帰依したてまつるに、また、かみのごとくの功徳をうるなり。


未曾有経、曰、

仏、言、

憶念、過去無数劫時、毘摩大国、徙陀山中、有、一野干。

而、為、獅子所逐欲食、奔走、堕、井、不能得、出。

経、於、三日、開、心、分、死、而、説、偈、言、

禍哉。

今日、苦、所逼。

便、当、没、命、於、丘、井。

一切万物、皆、無常。

恨、不、以、身、たべさせる、獅子。

南無、帰依、十方仏。

表知、我心、浄、無己。


時、天帝釈、

聞、仏、名、粛然、毛、竪、

念、古仏、

自、惟、

孤露、

無、導師、

耽著、五欲、自、沈没。


即、与、天八万衆、飛、下、詣、井、欲、問詰。

乃、見、野干、在、井底。

両手、攀、土、不得、出。


天帝、復、自、思念、言、

聖人、応、念、無、方術?

我、今、雖、見、野干形、斯、必、菩薩、非凡器。

仁者、向説、非凡言。

願、為、諸天、説、法要。


於、時、野干、仰、答、曰、

汝、為、天帝、無、教訓。

法師、在、下、

自、処、上、

都、不修、敬、問、法要。

法水、清浄、能、済、人。

云何、欲、得、自、貢高?


天帝、聞、是、大慚愧。

給侍諸天、愕然、笑、

天王、降趾、大無利。


天帝、即時、告、諸天、

慎、勿、以、此、懐、驚、怖。

是、我、頑蔽、徳不称。

必、当、因、是、聞、法要。


即、為、垂下、天宝衣、接取、野干、出、於、上。

諸天、為、設、甘露食。

野干、得、食、生、活望。

非意、禍中、致、斯福。

心、懐、踴躍、慶、無量。

野干、為、天帝、及、諸天、広、説、法要。


これを天帝、拝、畜、為、師の因縁と称す。

あきらかに、しりぬ、仏、名、法、名、僧、名の、ききがたきこと。

天帝の、野干を師とせし、その証なるべし。

いま、われら、宿善のたすくるによりて、如来の遺法にあうたてまつり、昼夜に三宝の宝号をききたてまつること、時とともにして、不退なり。

これ、すなわち、法要なるべし。

天魔波旬、なお、三宝に帰依したてまつりて患難をまぬがる。

いかに、いわんや、余者の、三宝の功徳におきて積功累徳せらん、はかりしらざらめやは?

おおよそ、仏子、行道、かならず、まず、十方の三宝を敬礼したてまつり、十方の三宝を勧請したてまつりて、そのみまえに焼香、散華して、まさに諸行を修するなり。

これ、すなわち、古先の勝躅なり、仏祖の古儀なり。

もし帰依、三宝の儀、いまだかつて、おこなわざるは、これ、外道の法なり、としるべし。

または、天魔の法ならん、としるべし。

仏仏、祖祖の法は、かならず、そのはじめに帰依、三宝の儀軌あるなり。


正法眼蔵 帰依三宝

建長七年乙卯、夏安居日、以、先師之御草本、書写、畢。

未及、中書、清書、等。

定、御再治之時、有、添削、欺。

於、今、不可、叶、其儀。

仍、御草、如此、云。

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