正法眼蔵 春秋
洞山、悟本大師、因、僧、問、
寒暑到来、如何、回避?
師、云、
何、不、向、無寒暑所、去?
僧、云、
如何、是、無寒暑所?
師、云、
寒時、寒殺、闍梨。
熱時、熱殺、闍梨。
この因縁、かつて、おおく、商量しきたれり。
而今、おおく、功夫すべし。
仏祖、かならず、参来せり。
参来せるは、仏祖なり。
西天、東地、古今の仏祖、おおく、この因縁を現成の面目とせり。
この因縁の面目、現成は、仏祖、公案なり。
しかあるに、僧、問の寒暑到来、如何、回避? くわしく、すべし。
いわく、正当寒到来時、正当熱到来時の参詳看なり。
この寒暑、渾寒、渾暑、ともに、寒暑ずからなり。
寒暑ずからなるゆえに、到来時は、
寒暑ずからの頂寧頁より到来するなり。(「寧頁」は一文字の漢字と見なしてください。)
寒暑ずからの眼睛より現前するなり。
この頂寧頁上、これ、無寒暑のところなり。
この眼睛裏、これ、無寒暑のところなり。
高祖、道の寒時、寒殺、闍梨。熱時、熱殺、闍梨。は、正当到時の消息なり。
いわゆる、寒時たとえ道、寒殺なりとも、熱時かならずしも熱殺、道なるべからず。
寒、也、徹蔕、寒なり。
熱、也、徹蔕、熱なり。
たとえ万、億の回避を参得すとも、なお、これ、以、頭、換、尾なり。
寒は、これ、祖宗の活眼睛なり。
暑は、これ、先師の暖皮肉なり。
浄因、枯木禅師(、嗣、芙蓉和尚、諱、法成和尚)、云、
衆中、商量、道、
這僧問、既、落、偏。
洞山答、帰、正位。
其僧、言中、知、音、却、入正、来。
洞山、却、従、偏、去。
如斯、商量、不、唯、謗涜、先聖、亦、乃、屈沈、自己。
不見、道?
聞、衆生解、意下、丹青。
目前、雖、美、久、蘊、成、病。
大凡行、脚高、士、欲、窮、此事、先、須、識取、上祖、正法眼蔵。
其余仏祖言教、是、什麼、熱椀、鳴声。
雖然、如是、敢、問、諸人、
畢竟、作麼生、是、無寒暑所?
還、会、麼?
玉楼、巣、翡翠。
金殿、鎖、鴛鴦。
師は、これ、洞山の遠孫なり、祖席の英豪なり。
しかあるに、箇箇、おおく、あやまりて、偏、正の窟宅にして、高祖、洞山大師を礼拝せんとすることを炯誡するなり。
仏法もし偏、正の局量より相伝せば、いかでか今日にいたらん?
あるいは、野猫児、あるいは、田庫奴、いまだ洞山の堂奥を参究せず。
かつて仏法の道閫を行李せざるともがら、あやまりて、洞山に偏、正、等の五位ありて人を接す、という。
これは、胡説乱説なり。見聞すべからず。
ただ、まさに、上祖の正法眼蔵あることを参究すべし。
慶元府、天童山、宏智禅師(、嗣、丹霞和尚、諱、正覚和尚)、云、
若、論、此事、如、両家、著、碁、相似。
爾、不応、我著。
我、即、瞞、汝、去、也。
若、恁麼、体得、始、会、洞山、意。
天童、不免、下、箇注脚。
裏頭、看、勿、暑、寒。
直下、滄溟、瀝、得、乾、
我、道、巨鼇、能、俯、拾、
笑、君、沙際、弄、釣竿。
しばらく、著、碁は、なきにあらず。
作麼生、是、両家?
もし両家、著、碁といわば、八目なるべし。
もし八目ならんは、著、碁にあらず。
いかん?
いうべくば、かくのごとく、いうべし。
著、碁、一家、敵手、相逢なり。
しかありというとも、いま、宏智、道の爾、不応、我著、こころをおきて功夫すべし、身をめぐらして参究すべし。
爾、不応、我著というは、なんじ、われなるべからず、というなり。
我、即、瞞、汝、去、也。すごすことなかれ。
泥裏、有、泥なり。
踏者、あしをあらい、また、纓をあらう。
珠裏、有、珠なり。
光明するに、かれをてらし、自をてらすなり。
夾山、圜悟禅師(、嗣、五祖法演禅師、諱、克勤和尚)、云、
盤、走、珠。
珠、走、盤。
偏中正。
正中偏。
羚羊、掛、角、無、蹤跡。
猟狗、遶、林、空、踧蹐。
いま、盤、走、珠の道、これ、光前絶後、古今、罕、聞なり。
古来は、ただ、いわく、盤に、はしる珠の住著なきがごとし。
羚羊、いまは、空に掛、角せり。
林、いま、猟狗をめぐる。
慶元府、雪竇山、資聖寺、明覚禅師(、嗣、北塔、祚和尚、諱、重顕和尚)、云、
垂手、還、同、万仭崖、
正、偏、何必、在、安排。
瑠璃、古殿、照、明月。
忍、俊、韓獹、空、上、階。
雪竇は、雲門、三世の法孫なり。
参飽の皮袋といいぬべし。
いま、垂手、還、同、万仭崖といいて、奇絶の標格をあらわすといえども、かならずしも、しかあるべからず。
いま、僧、問、山、示の因縁、あながちに垂手、不垂手にあらず。
出世、不出世にあらず。
いわんや、偏、正の道をもちいんや?
偏、正の眼をもちいざれば、この因縁に下手のところなきがごとし。
参請の巴鼻なきがごとくなるは、高祖の辺域にいたらず。
仏法の大家を覰見せざるに、よれり。
さらに草鞋を拈来して参請すべし。
みだりに高祖の仏法は、正、偏、等の五位なるべし、ということ、やみね。
東京、天寧、長霊禅師、守卓和尚、云、
偏中、有、正。
正中、偏、
流落、人間、千百年。
幾度、欲、帰、帰、未得。
門前、依旧、草、芊芊。
これも、あながちに偏、正と道取すといえども、しかも拈来せり。
拈来は、なきにあらず。
いかならんか、これ、偏中、有?
潭州、大潙、仏性和尚(、嗣、圜悟、諱、法泰)、云、
無寒暑所、為、君、通。
枯木、生、華、又、一重。
堪、笑、刻、舟、求、剣、者。
至、今、猶、在、冷灰中。
この道取、いささか公案、踏著戴著の力量あり。
泐潭、湛堂文準禅師、曰、
熱時、熱殺。
寒時、寒。
寒、暑、由来、総、不、干。
行尽、天涯、諳、世事。
老君、頭、戴、猪皮冠。
しばらく、とうべし。
作麼生ならんか、これ、不干底、道理?
速、道。
速、道。
湖州、何山、仏燈禅師(、嗣、太平、仏鑑、慧懃禅師、諱、守珣和尚)、云、
無寒暑所、洞山、道。
多少、禅人、迷、所所。
寒時、向、火。
熱、乗、冷、
一生、免、得、避、寒、暑。
この珣、師は、五祖法演禅師の法孫といえども、小児子の言語のごとし。
しかあれども、一生、免、得、避、寒、暑、のちに、老大の成風ありぬべし。
いわく、
一生とは、尽生なり。
避、寒、暑は、脱落、身心なり。
おおよそ、諸方の諸代、かくのごとく鼓、両片皮をこととして頌古を供、達すといえども、いまだ高祖、洞山の辺事を覰見せず。
いかん? とならば、
仏祖の家常には、寒、暑、いかなるべし、ともしらざるによりて、いたずらに乗、冷。向、火。とらいう。
ことに、あわれむべし。
なんじ、老尊宿のほとりにして、なにを寒、暑というとか聞取せし?
かなしむべし、祖師道、廃せることを。
この寒、暑の形段をしり、寒、暑の時節を経歴し、寒、暑を使得しきたりて、さらに高祖、為、示の道を頌古すべし、拈古すべし。
いまだ、しかあらざらんは、知、非には、しかじ。
俗、なお、日月をしり、万物を保任するに、聖人、賢者のしなじな、あり。
君子と愚夫との、しなじな、あり。
仏道の寒、暑、なお、愚夫の寒、暑と、ひとしかるべし、と錯会することなかれ。
直、須、勤学すべし。
正法眼蔵 春秋
爾時、寛元二年甲辰、在、越宇、山奥、再、示、衆。
逢、仏事、面、転、仏麟経。
祖師、道、
衆角、雖、多、一、麟、足、矣。




