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正法眼蔵  作者: Eliphas1810
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正法眼蔵 菩提薩埵四摂法

一、者、布施。

二、者、愛語。

三、者、利行。

四、者、同事。


その布施というは、不貪なり。

不貪というは、むさぼらざるなり。

むさぼらず、というは、よのなかにいう、へつらわざるなり。

たとえ四州を統領すれども、正道の教化をほどこすには、かならず、不貪なるのみなり。

たとえば、すつる、たからをしらぬ人にほどこさんがごとし。

遠山のはなを如来に供し、前生のたからを衆生にほどこさん。

法におきても、物におきても、面面に布施に相応する功徳を本、具せり。

我物にあらざれども、布施をさえざる道理あり。

そのものの、かろきをきらわず。

その功の実なるべきなり。

道を道にまかするとき、得道す。

得道のときは、道、かならず、道にまかせられゆくなり。

財のたからにまかせらるるとき、財、かならず、布施となるなり。

自を自にほどこし、他を他にほどこすなり。

この布施の因縁力、とおく天上、人間までも通じ、証果の賢聖までも通ずるなり。

そのゆえは、布施の能受となりて、すでに縁をむすぶがゆえに。

ほとけの、のたまわく、

布施する人の、衆会のなかにきたるときは、まず、その人を諸人、のぞみみる。


しるべし、ひそかに、そのこころの通ずるなり、と。

しかあれば、すなわち、一句、一偈の法をも布施すべし。

此生、他生の善種となる。

一銭、一草の財をも布施すべし。

此世、他世の善根をきざす。

法も、たからなるべし。

財も、法なるべし。

願楽によるべきなり。

まことに、すなわち、

ひげをほどこしては、もののこころをととのえ、

いさごを供しては、王位をうるなり。

ただ、かれが報謝をむさぼらず、みずからがちからをわかつなり。

舟をおき、橋をわたすも、布施の檀度なり。

もし、よく、布施を学するときは、受身、捨身、ともに、これ、布施なり。

治生産業、もとより布施にあらざることなし。

はなを風にまかせ、鳥をときにまかするも、布施の功業なるべし。

阿育大王の半菴羅果、よく、数百の僧衆に供養せし、広大の供養なりと証明する道理、よくよく能受の人も学すべし。

身力をはげますのみにあらず、便宜をすごさざるべし。

まことに、みずからに布施の功徳の、本、具なるゆえに、いまの、みずからは、えたるなり。

ほとけの、のたまわく、

於、其自身、尚、可、受用。

何況、能、与、父母、妻子?


しかあれば、しりぬ。

みずから、もちいるも、布施の一分なり。

父母、妻子にあたうるも、布施なるべし。

もし、よく、布施に一塵を捨せんときは、みずからが所作なりというとも、しずかに随喜すべきなり。

諸仏のひとつの功徳をすでに正伝し、つくれるがゆえに。

菩薩の一法をはじめて修行するがゆえに。

転じがたきは、衆生のこころなり。

一財をきざして衆生の心地を転じはじむるより、得道にいたるまでも、転ぜん、とおもうなり。

そのはじめ、かならず、布施をもってすべきなり。

かるがゆえに、六波羅蜜のはじめに檀波羅蜜あるなり。

心の大小は、はかるべからず。

物の大小も、はかるべからざれども、心、転、物のときあり、物、転、心の布施あるなり。


愛語というは、衆生をみるに、まず、慈愛の心をおこし、顧愛の言語をほどこすなり。

おおよそ、暴悪の言語なきなり。

世俗には、安否をとう礼儀あり。

仏道には、珍重のことばあり。

不審の孝行あり。

慈念、衆生、猶、如、赤子のおもいをたくわえて言語するは、愛語なり。

徳あるは、ほむべし。

徳なきは、あわれむべし。

愛語をこのむよりは、ようやく愛語を増長するなり。

しかあれば、ひごろ、しられず、みえざる愛語も現前するなり。

現在の身命の存せらんあいだ、このんで愛語すべし。

世世、生生にも、不退転ならん。

怨敵を降伏し、君子を和睦ならしむること、愛語を根本とするなり。

むかいて愛語をきくは、おもてをよろこばしめ、こころをたのしくす。

むかわずして愛語をきくは、肝に銘じ、魂に銘ず。

しるべし。

愛語は、愛心より、おこる。

愛心は、慈心を種子とせり。

愛語、よく、回天のちからあることを学すべきなり。

ただ能を賞するのみにあらず。


利行というは、貴賤の衆生におきて、利益の善巧をめぐらすなり。

たとえば、遠近の前途をまもりて、利他の方便をいとなむ。

窮亀をあわれみ、病雀をやしなうし、窮亀をみ、病雀をみしとき、かれが報謝をもとめず、ただ、ひとえに利行に、もよおさるるなり。

愚人、おもわくは、利他をさきとせば、みずからが利、はぶかれぬべし、と。

しかには、あらざるなり。

利行は、一法なり。

あまねく自他を利するなり。

むかしの人、ひとたび沐浴するに、みたび、かみをゆい、ひとたび飡食するに、みたび、はきいだせしは、ひとえに他を利せし、こころなり。

ひとのくにの民なれば、おしえざらんとには、あらざりき。

しかあれば、怨、親、ひとしく、利すべし。

自他、おなじく、利するなり。

もし、このこころをうれば、草木、風水にも利行の、おのれずから不退不転なる道理、まさに、利行せらるるなり。

ひとえに愚をすくわん、と、いとなむべし。


同事というは、不違なり。

自にも、不違なり。

他にも、不違なり。

たとえば、人間の如来は、人間に同ぜるがごとし。

人界に同ずるをもって、しりぬ、同、余界なるべし。

同事をしるとき、自他一如なり。

かの琴、詩、酒は、人をともとし、天をともとし、神をともとす。

人は、琴、詩、酒をともとす。

琴、詩、酒は、琴、詩、酒をともとし、

人は、人をともとし、

天は、天をともとし、

神は、神をともとする、ことわり、あり。

これ、同事の習学なり。

たとえば、事というは、儀なり、威なり、態なり。

他をして自に同ぜしめてのちに、自をして他に同ぜしむる道理あるべし。

自他は、ときにしたがうて、無窮なり。


管子、云、

海、不辞、水。

故、能、成、其大。

山、不辞、土。

故、能、成、其高。

明主、不厭、人。

故、能、成、其衆。


しるべし。

海の、水を辞せざるは、同事なり。

さらに、しるべし。

水の、海を辞せざる徳も具足せるなり。

このゆえに、よく、水、あつまりて、海となり、土、かさなりて、山となるなり。

ひそかに、しりぬ。

海は、海を辞せざるがゆえに、海をなし、おおきなることをなす。

山は、山を辞せざるがゆえに、山をなし、たかきことをなすなり。

明主は、人をいとわざるがゆえに、その衆をなす。

衆とは、国なり。

いわゆる明主は、帝王をいうなるべし。

帝王は、人をいとわざるなり。

人をいとわずといえども、賞罰なきにあらず。

賞罰ありといえども、人をいとうこと、なし。

むかし、すなおなりしときは、国に賞罰なかりき。

かのときの賞罰は、いまと、ひとしからざればなり。

いまも、賞をまたずして、道をもとむる人も、あるべきなり。

愚夫の思慮のおよぶべきにあらず。

明主は、あきらかなるがゆえに、人をいとわず。

人、かならず、国をなし、明主をもとむるこころあれども、明主の明主たる道理をことごとくしること、まれなるゆえに、明主に、いとわれず、とのみ、よろこぶといえども、わが明主をいとわざる、としらず。

このゆえに、明主にも、暗人にも、同事の道理あるがゆえに、同事は薩埵の行願なり。

ただ、まさに、やわらかなる容顔をもって一切にむかうべし。


この四摂、おのおの四摂を具足せるがゆえに、十六摂なるべし。


正法眼蔵 菩提薩埵四摂法

仁治癸卯、端午日、入宋、伝法、沙門、道元、記。

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