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「ねぇ、マルク。お父様たち酷いわよね」

「そうだね。ぼくたちはこんなに仲がいいのに」

「そうよ。破棄する理由なんてないわ。しかも、私が何も聞いてないみたいな言い方して……」

「セレナはばかじゃない。だからあの言い方はひどいよね」

「本当にマルクが分かってくれて嬉しい」

「ぼくはいつだってきみのみかただよ」







 走り去ったセレナを追いかけてきた双方の両親は、座りこむセレナの背中を眺めてため息をついた。


「どうしてこうなってしまったのかしら」


 セレナの母が言う。


「セレナは子供のように話を聞いてくれないからな。これでは本当の事を話せない」


 セレナの父がため息まじりに言った。

 そこへマルクの父親が口を挟む。


「言うべきなのでしょうか」

「それは……」

「マルクは5年も前に亡くなったのに……」


 そう。マルクは5年前病で死んだのだ。

 それからセレナの心は成長しないままになってしまった。同じ成長しないのであろう、幻のマルクと共にいるために。



 ひとりぼっちで何事かをつぶやき続けるセレナの背中を全員で見つめた。

 婚約破棄は、マルクが死んだときにマルクの両親とセレナの両親とで話し合ってきめた。セレナのためのはずだった。

 けれど。


「真実を知ったら悲しむわ」

「だが、知らなければ前に進めない。永遠にこのままは可愛そうだ」


 マルクの両親は沈痛な面持ちで言った。

 セレナの両親もまた頷く。

 4人にできることは、何もなかった。






「ねぇ、マルク。私マルクのこと大好きよ」

「ぼくも。だいすきだよ。セレナ」




 二人を残して季節は変わっていく。

 子供のままの二人を残して……。

 


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