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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
オストラバ王国

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第37話:目的

3匹の伝説級の魔物を難なく倒したアズライトを見ていた大勢の兵士と国民は大声をあげた。目で見える範囲の魔物も駆逐されており

みな、アズライトの戦いを静観していたのだ。


「すげえええええええええ!」 「アズライト様!」 「さすがだ! 伝説級を……こんな簡単に!」


 インザームは、アズライトとルチルの姿にヴェルネルとレムリを重ねた。あの時の二人の様に強くそして素晴らしい心を持ち合わせている。

二人の想いは時代を超えて受け継がれていると


「ヴェルネル。レムリ。お主らの様に素晴らしい人物はこの世界にもまだいる様じゃ」


 しかし、その様子を見ていた数名の兵士がインザームに気が付いた。


「あれ……い、インザームじゃねえのか?……」 「お……おい、ほんとだ」「それによく見るとエルフだ……」


 反逆者のインザームは王国の関係者であれば誰もが知っている最重要人物だ。アズライトが心配していた出来事が今まさに起こりかけていた。

またルチルを保護している事を知っているのはこの王国でも数少なく、それも裏目に出た。


 そんな心配のさなか、追い打ちをかける様にルチルが何かを感じ取ると声をあげた


「アズアズ! とんでもない悪意を持つ魔力が城の内部に現れた!」


「……ルチル。急いで転移窓を!」


「わかった! でも、魔力の瘴気が濃くて作るのに時間がかかりそう……」


 浮遊しながら掌を翳して、次元を歪む程の魔力を集中させた

ルチルがこれほどまでに焦っている姿を見るのはアズライトは初めてだった。それ程の悪意と魔力を感じ取っていた。しかし


「おい、インザーム! お前どうしてここにいる!」

「取り囲め! 絶対逃がすな!」

「お前が犯人か! よくもこの街を!」


 その場にいたオストラバ王国の騎士や兵士や魔法使いが、インザームを取り囲んだ。


「ワシは……見捨てろ!」


 インザームはルチルとアズライトに声をかけたが


「おじいちゃんは関係ない! この街を、私達を守ってくれたんだよ!」


 ルチルは声を荒げて兵士達を説得しようとしたが、逆効果になってしまった。


「エルフが! お前も犯罪者の仲間か!」

「こいつらを捕まえろ!」

「何か構えているぞ! 油断するな!」


 声を荒げて一人の兵士が先早にルチルに剣を振りかざした。それをアズライトが守る様に前に出ると兵士の剣を弾いた。


「な……アズライト様!? あなたは何を!?」


「……すまない。怪我をさせたくはない」


 その場にいた兵士や国民がアズライトの行動に驚きを隠せなかった。騎士の名は剥奪されたとしても

アズライトはシュタイン家としても有名であったからだ。


「出来たよ! アズアズっ!」


 ルチルは城へ続く転移窓を完成させたが、皮肉にも魔物が出現してきた形と酷使していた為に周囲は更に動揺しざわめいた。


「ありがとうルチル。インザーム、今のあなたならこの窓を潜れるはずです。着いてきてください」


「……勿論じゃ」


 アズライトは意味深な事を呟いたが、インザームは躊躇なくアズライトに続いた。最後にルチルが窓に入ると

直ぐに転移窓は閉じて消えた。


 アズライト、ルチル、インザームが転移窓を潜るとそこはオストラバ王国の深い地下室に繋がっていた。

硬く閉ざされた鉄扉の前に男と女が立っている。


――ここはどこだ。


 アズライトも知らない場所であった。


「あなた達は一体何者ですか」


 アズライトは剣を構えながら言った。二人の体から溢れ出る魔力は伝説級の魔物を遥かに超えている。男がゆっくりとこっちを振り向き

その姿にインザームは驚きで声が漏れた。 アズライトは女性がエルフ気が付いて緊張感を漂わせた。


「ヴェル……ネル……」


 ヴェルネルと呼ばれた男はそれに答える様に


「……インザーム、生きていたんだね。嬉しいよ」


「ど……どういう事じゃ!? お主は死んだはずではなかったのか!?」


「死んだ……そうだね。あの時の僕は死んだよ」


 ヴェルネルは理解不能な事を言い放った。


「……あなたがあの、伝説のヴェルネル?……。 ……魔物はあなたの仕業ですか」


 アズライトが聞いた。


「伝説……か。……騒ぎというのは魔物の事か? それなら答えはイエスだ」


 その姿、その言葉、その声、30年前のヴェルネルそのものであった。インザームはまるで亡霊を見ている様な気持ちだった。


「どういう事じゃ!? ヴェルネル、何のために!?」


「正義の為だよ」


 ヴェルネルは悪気もなく言った。


「……外を見たのか!? 魔物のせいで人が死んでおるのじゃぞ!?」


「インザーム、言われなくてもわかってるよ」


「……理解に苦しみますが、あなたは報いを受けるべきです」


 アズライトは理想を抱いていたヴェルネルに失望して怒りをに震えた。母との思い出も全て怪我された気分になったからだ。

 静かに剣に魔力通わせると、ルチルに目配せをした。 それにルチルも気が付くといつでも動ける準備をした。


「シンドラ、まだかい?」


「もうすぐ終わります」


 ヴェルネル淡々と変わらない冷静な表情のまま、二人を無視する様にシンドラに声をかけた。黒いドレスを着て黒い耳をピンと伸ばしたシンドラと呼ばれた女性は地下室にある鉄の扉に両手を置いていた。

結界の解析を行っていた。


「その扉から手を放せ、そして投降しろ」


 アズライトが言った。


「……ヴェルネル、訳を聞かせてくれ! どうしてしまったのじゃ!」


「インザーム。僕は全てを正しい方向に導こうとしているだけだ」


 ヴェルネルの瞳から強い意思を感じた。


「あなたは狂ってる――」


 アズライトは目にも止まらぬ速度で距離を詰め始めた。ルチルは無言でアズライトに合わせる様に魔法障壁と物理障壁でアズライトを360°覆った。

二人が今まで破られた事のない無敵の連携。


 魔物と戦う時のそれとは違い、人と人との闘いは初撃が何よりも重要だとアズライトは多くの戦闘で理解していた。それなのにインザームとアイレと戦う時は油断してしまった。

アイレに負けた事を境にアズライトは二度と手を抜かないと決めた。ごくわずかな時間で魔力を剣に込めると渾身の力でヴェルネルを狙った。



 が。ヴェルネルは帯刀している剣を瞬時に抜き取るとルチルの魔法と物理の障壁を破った上で、赤子の手を捻るかのように、アズライトの剣を弾き飛ばした。


「――なっ!?」

 

 アズライトの剣は回転しながら遠くへ吹き飛び地面に落ちて金属音を鳴らした。


「君の剣には想いが足りてない」


 ヴェルネルは涼しい顔をしたまま、まるで赤子の手をひねるかごとく、伝説級の魔物を難なく駆逐したアズライトの剣をルチルの魔法を破った。 


 その直後、シンドラが鉄の扉を開けた。シンドラは横でヴェルネルが攻撃されたにも関わらずぴくりとも動かずまるで取るに足らない出来事の様に落ち着いている。


「解析完了しました」


「ありがとう、シンドラ」


 ヴェルネルとシンドラは扉の中に入った。奥に玉座が置いてあり、その上に小さな鉄の箱が置かれていた。同時に

未だかつてない程の魔力をその箱から感じる。


――な、なんだあれは……


 アズライトはその箱を初めて見た。見たことも聞いたこともない。


 ヴェルネルの強さは……インザームの目から見ても生前より遥かに増しているように見えた。衝撃で動けずにいる二人の横をインザームが横を通り、ヴェルネルとシンドラの前に立ちふさがった。

 

「ヴェルネル……何をしようとしてるかはわからぬが、お主は間違っておる」


「何が間違ってるかは結果が全てだよ。以前の僕のようにね」


 ヴェルネルは小さな鉄箱を手に持ったまま言った。


「レムリは……レムリは生きておるのか?」


「僕は全てを元に戻す」


 シンドラは両手で掌を翳して、一瞬で転移の窓を開いた。


「行かせぬぞ!」


 インザームが魔力を高めて剣を構えた瞬間にシンドラは魔法を詠唱して黒い煙魔法を放った。

その煙はインザームの手に巻き付くと、まるで重石の様に重くなるとインザームは膝をついた。


「インザーム。あなたならいつか理解してくれるはずだ」


 シンドラが窓に入り、ヴェルネルが窓を潜ろうとした時に


「ヴェルネル! アイレがこの世界へやってきたぞ! ワシは……アイレと一緒にいた。お主を……レムリを探しておったぞ!」


 ヴェルネルはインザームの言葉が耳に入っていないかの様にそのままシンドラと共に窓を潜ってその場から消えた。



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