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友達と一緒に異世界転生したら、俺だけ30年後の未来でした。 ~伝説の勇者と魔法使いは親友で、魔王は討伐されている!?~  作者: 菊池 快晴@書籍化決定
オストラバ王国

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第36話:宣戦布告

――街に轟音が鳴り響く、1分前


クルムロフ城の広い玉座の間の中心に魔王とその部下が集まっている

 魔王は部下からヴェルネルと呼ばれ、30年前と同じ姿をしていた。


 城の内部や城外には数日前までクルムロフ城に住んでいた王族や騎士の死体が無残にも転がっていた。


 ヴェルネルは真剣な眼差しでそこにいる人物達に向かって声をかけた。


「イフリート、お前はヴルダヴァ街、セーヴェルはメルニク街、ユークはスラニー街

僕とシンドラはコアを見付ける」


「御意」


 イフリートが


「了解しました」


 セーヴェルが


「おっけっー!」


 ユークが


「どこへでも」


 シンドラと呼ばれた女性は答えた。特徴的な黒い両耳がピンと伸びていて誰よりもしっかりと頷いた。肌の色は浅黒く、黒いドレスの様な服を着ている。ここにる誰よりも高い魔力を有していた。

 ルチルと同じ種族の様にも見え、瞳の奥には黒い意思が感じ取れる。



――街に轟音が鳴り響く、30秒前



「シンドラ、窓を」


 ヴェルネルにシンドラと呼ばれた女性は目を瞑って両手をその場で翳した。ルチルを遥かに超える魔力を集中させると

次元を歪ませ、同時に4つの転移の窓を開いた。



――街に轟音が鳴り響く、5秒前



「これは僕から世界への宣戦布告だ」


 ヴェルネル、シンドラ、イフリート、セーヴェル、ユークが窓を潜ると同時に

各地域に轟音が鳴り響いた。




 ◇ ◇ オストラバ王国、ヴェルネルの別荘 ◇ ◇ 



「な――なん――じゃ!?」


「こ――れ――何の音っ――」


「一体――」


 ヴルダヴァ事件の同日同時刻。このオストラバ王国でも同じ轟音が鳴り響いた。


 アズライト、ルチル、インザームは驚きで声をあげた。音が鳴りやむと同時に

ルチルが何かを感じ取った。


「アズアズ!……転移窓が出現してそこから魔力が溢れ出てる」


「……ルチル、場所はわかるか?」


「……街の中心……広場の上から縦横無尽に悪意のある魔力が街を駆け回ってる……これは……きっと魔物……」


 ルチルは目を瞑りながら、魔力の感知に集中した。フェア能力と少し違うのは悪意と善意を感じ取れる。嘘を見抜くのもこの能力が関係していた。


「な、なんじゃと!? どういう事じゃ!?」


「わからない……ここまでの数は感じた事がない」


「ルチル。インザーム。二人はここから出ないでください!」


 アズライトはそう言うと、扉を開けて外へ出た。 視界の先に魔物が縦横無尽にオストラバ王国を駆け回っていた。

 国民は逃げ惑い見たこともない景色が広がった。


 このオストラバ王国は長年の間、敵対する国や魔物の侵入を一匹たりとも許した事はなかった。アズライトはすぐに気持ちを切り替え

剣に魔力を込めた。


 目の前にいるサイクロプスとオークを数秒と掛からず倒すと、迷わず街の中心へ向かった。ありとあらゆる魔物がオストラバを破壊して廻っていたが

アズライトは視界に入った魔物を全て見逃す事なく駆逐した。



――城内に侵入してきているという事はルチルと同じ能力者か?



「光よ、その存在を示せ!閃光エクレール


 アズライトの掌から複数の光が飛び出ると、蛇のように這いながら光は魔物の頭に直撃して息絶えた。インザームが使用していた光魔法を一目見ただけで完璧に模倣していた。


「――あれか」


 街の中心の遥か上空に転移窓があった。ルチルのそれと似ているが、それよりも遥かに禍々しい魔力が感じ取れる。

 その窓から多くの魔物が溢れ出ていた。


 しかし、オストラバ王国の各兵士や騎士も魔物の侵入にいち早く気づき、既に大勢が戦闘に参加していた。


「アズライト様! 帰国していたのですか! 心強いです!」


 若い男の一人の兵士がアズライトの事を知っている様で戦いながら声をかけた。


「一体何が――起きているかわかるか?」


「わかりません――あいつら、突然侵入してきました――」


――あれはやはり、ルチルと同じ


 遥か上空にある転移窓を見ながらアズライトは禍々しい魔力を感じ取った。ルチルのそれよりはるかに高い魔力を放っている。


 そして更に転移窓からオストラバ王国を恐怖に陥れる魔力を持つ魔物が出現した。


――あれは……


「ひ、あ、あ、あ、あ、あれは……」


 兵士が上空の魔物を確認すると驚きと恐怖で悲鳴をあげた。


 30年前、地獄の番犬と言われヴェルネルとレムリが現れるまで誰も倒す事が出来なかった三つ首犬の魔物ケルベロス。

 死の森を根城にしていた巨大な蛇のワーム。コカトリスの始祖と言われる鶏の巨大生物メガコカトリス。


 3匹は禍々しい魔力を放ちながら金切声をあげながら地面に降りた。幸い転移窓は3匹の魔物を最後に閉じていった。


 アズライトは驚く事なく剣を構えると深く深呼吸をして魔力を集中させた。その瞳に恐怖は一切ない。やるべき事をただするだけだ。


「伝説級とこんな形で出会うとは――君は離れておくんだ!」


 アズライトは兵士にそう言いながら、言葉を吐き終わると同時に、地を蹴り3匹の伝説級の魔物に距離を詰めた。ケルベロスは三つ首の口から火と雷と氷の息吹の魔法を放った。

アズライトは魔力を通わせた剣でそれを切り裂きながら捌き切ると、高く跳躍してケルベロスの首を一つ切断しようと振り下ろした。


「――まずは一つ」


 アズライトの剣が見事突き刺さりケルベロスの首を一つ切断する事に成功した。 ケルベロスは悲鳴と共に残った首で雷と氷の息吹をあたりかまわず喚き散らかしたが、それもアズライトは回避した。

 しかし、アズライトが体制を崩した隙を狙うように蛇のワームとメガコカトリスが一度浴びれば絶命してしまうほどの魔力を帯びた毒を間髪入れずに吐いた。


 その時、アズライトの耳に聞きなれた声が届いた。


「光の精霊よ、彼を守り給え。魔法マジック障壁ウォール!」


 毒が直撃する前に高密度の魔法障壁がアズライトの周囲を360度覆った。 毒は弾け飛ぶと地面に落ちて焼ける様な音と共に地面を抉った。3匹の魔物は更に強い魔力を漲らせたが

同時に光の魔法が横から更に飛んできて、ケルバロス残った二つの目に突き刺さった。


「今じゃ! アズライト!」


 アズライトはその言葉に反応して再び距離を詰めると、光の筋が走ったようにしか見えない速度でケルベロスの首の二つをほぼ同時に切断した。

 ケルベロスは首から血を噴き出しながら倒れた。


 アズライトが後ろを振り向くと、浮遊したルチルとそしてインザームが立っていた。


「ルチル……あなたもここへ来てはいけない!」


 アズライトは動揺していたが、それでもインザームの名前は出さなかった。エルフであるルチルはこの王国に滞在する事は許可されているが

魔法を使う事は固く禁じられている 例え有事の時であっても、何かしらの罰は下るだろう。


「ルチルも戦う」


「悲鳴を無視できる程、ワシは臆病者ではない」


「……援護を頼みます」


 アズライトは再び前を向くとメガコカトリスと蛇のワームに対して距離を詰めた。二体の魔物は鋭い爪と舌と嘴で目には止まらぬ攻撃を繰り出したが、アズライトはそれを体操選手の様に

無駄なく綺麗に躱した。


「ギャ……ギャーーーース!」 蛇のワームが毒をまき散らし、メガコカトリスが鋭い羽を刃の様に飛ばした。まるで大雨の様に無数の攻撃がアズライトに降り注いだ。


 だが、アズライトは怯まず躱す事もなく、ただ真っすぐ距離を詰めた。ルチルを誰よりも信頼していた。

 ルチルは再び魔法障壁と物理障壁を間髪入れず詠唱してアズライトの周囲に展開させ伝説級の魔物の攻撃を全て防いだ。


 インザームも光魔法を詠唱して、今までにない数の光が掌から勢いよく飛び出すとワームとメガコカトリスに直撃した。


「さすがは勇者御一行のインザームですね」


 アズライトはそう囁きながら、当時のヴェルネルに勝るとも劣らない剣速でワームとメガコカトリスの首を落とした。2匹は同時に悲鳴をあげて倒れると

ぴくりと動かずに息絶えた。


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