自分の気持ち
一条くんに告白されてから1ヶ月がたった。
未だに返事はできてないけれど、焦らなくていいって一条くんは言ってくれた。
私はその言葉に甘えてしまっている。
この1ヶ月で一条くんのことは大分知れた気がする。
隣の席だから話す機会はたくさんあるし、自分のことを知ってもらおうと話しかけてくれる。
それで分かったことは一条くんは優しい人だということ。
あれは一条くんが転校してきた次の日の話だ。
「ねぇゆかちゃん!俺にこの学校のこと案内してくれない?」
「案内?」
「そう!俺まだ全然この学校のことわかんないし、ゆかちゃんとも仲良くなりたいからさ」
「確かに分からないと不便だよね!いいよ」
そんなことがあって私は一条くんに学校の案内をした。
まぁ案内と言っても普通に校舎を見て回っていただけなんだけど。
一条くんはその間も周りから注目されていて、手を振ったりしていた。
「ゆかちゃんって好きな人とかいないの?」
そう突然聞かれた。
「急だね...いないけど」
「よっしゃ!じゃあ余計俺に惚れてもらわなきゃ」
そうガッツポーズをしながら少し照れたような笑顔は眩しかった。
それからも一条くんは会話を途切れることなく話を振ってくれた。
私を楽しませようとしてくれたのがすごく伝わったんだ。
一条くんはきっと私なんかには見合わない素敵な人だ。
それでもどんなに考えても自分の気持ちが分からないし答えが見つからない。
「ゆかちゃーん?」
「あ、ごめん!またぼーっとしちゃってたね」
「うーん、まだ返事悩んでる?」
「うん...告白なんて初めてだからちゃんと考えなきゃって思うともう分からなくなっちゃって」
「そうだよね。恋って難しいよね...でもゆかちゃんが思うままに行動したらいいと思うよ。」
「思うまま、か...」
「うん。その人との関係を変えたいって思ったり、些細なことでキュンとしたり...そういうのが恋だと思う」
本当に琴葉ちゃんは私のことを考えてくれてる。
そして私が自分では気づけないようなことに対してアドバイスをしてくれる。
琴葉ちゃんの言葉を聞いて少し自分の気持ちに気づけたような気がする。
(自分の本当の気持ちを伝える...それは少し怖いけどやらなきゃいけないよね)
「ねぇゆかちゃん!気分転換しよ!」
「気分転換?」
「そ!わたし行ってみたいとこがあったの!」
「どこ?」
「それは行ってからのお楽しみ!」
そう言って琴葉ちゃんが私の腕をひっぱって廊下に連れ出す。
「ね、ねぇ!かばんとか置きっぱだよ?」
「大丈夫!何もいらないから!」
そのまま階段をおり、私たちは外に出た。
連れてこられた場所は学校のグラウンドだった。
今は放課後でいろんな部が部活をしている。
「つきました!陸部!」
目的地は陸上部の練習場だった。
「琴葉ちゃんまさか...」
「そう!瞬くんのかっこいい姿見て元気だそ!」
瞬は中学高校と陸上部だ。
確かに瞬が走っている姿を見るのは中学ぶりかもしれない。
高校に入ってからは大会とかなかなか行けてないし、放課後もすぐに帰るように言われていたから。
だから高校生になった瞬の走っている姿を見たいとは思っていた。
「.....にしてもすごい人!」
練習場には瞬を見に来たであろう人達で溢れかえっていた。
毎日こんな中で練習しているのだろうと思うと素直に尊敬をする。
「本当に人気だね〜!あ、ここから見れそうだよ!」
ちょっとした隙間があったので私たちはそこから陸部の練習風景を見ることにした。
(あ、瞬だ...これから走るのかな?)
頑張れ〜と念を込めて見ているとふと瞬と目が合う。
瞬は一瞬びっくりした顔をしながらもこちらに手を振って笑った。
その瞬間、瞬ファンたちはみんな悲鳴をあげた。
「眩しすぎる...」
「あんなの直視できない...」
とか言っている。
(どんだけ人気なんだこの子は!てかなぜこの人だかりで私に気づいたの!?センサーでもついてるのか...)
なんて思いつつもこっそり手を振り返す。
「弟くんさすがだね...あんなすぐゆかちゃんに気づくなんて!普段は全くギャラリーのほう見ないって有名なのに」
「そうだったの!? てか一条くんも陸部みたいだね?」
「え!ゆかちゃんに陸部アピールしてた気がするけど、もしや聞いてなかった?」
「ほんとに?聞いてなかったかも...」
(一条くんよ、ドンマイ...)
そんな話をしていると瞬が走り出した。
その姿は本当にかっこよく、弟なのに見惚れてしまう。
(久しぶりに見たけど相変わらず速いしかっこいいなぁ)
運動している弟の姿はいつもの数倍はかっこよく見えてしまう。
普段はやる気がなさそうに猫みたいにくっついてくる弟なのに走っている姿は別人のようだ。
走り終わってタイムを確認した瞬はすぐに私の元にきた。
「姉貴、びっくりした。ちゃんと見ててくれた?」
「急にごめんね!見たよ!めちゃめちゃかっこよかった!!」
「来てくれて嬉しいよ。姉貴のために走ったからもっと褒めて」
そう言うと撫でてと言わんばかりに頭をさしだしてくる。
「まったく...。瞬頑張って偉いね、ほんとにかっこよかったよ」
こんなみんなの前ではさすがに恥ずかしいが、結局私は弟を甘やかしてしまう。
お願いされたらそれに応えようとしてしまうのだ。
(なんでこんなにずっと甘え上手に育っちゃったんだろう...)
瞬の頭を撫でていると瞬は気持ちよさそうに
「ありがとう姉貴」
と言った。
そして私の手を1回ぎゅっとして部活に戻って行った。
「どう?元気出た?」
「それはもちろん!琴葉ちゃん連れてきてくれてありがとう」
新鮮な弟の姿を見れてゆかは大満足だった。
「あと、わたし返事が分かった気がするよ」
そうゆかは一条くんの姿を見て言った。
一条くんはゆかの方を見て必死に手を振っている。
その横では瞬がそれを阻止しようとしているが...。
「そっか。その答えはまたゆかちゃんが返事できてから聞くことにするよ」
「本当にたくさんアドバイスしてくれてありがとうね。琴葉ちゃんと友達になれて幸せ」
そう言うと琴葉は少し顔を赤くして
「ちょっと〜照れるでしょ!」
とゆかをぽかぽか叩いた。そして...
「まぁ私もゆかちゃんと友達になれて世界一幸せだけどね!!」
と言ったのだった。




