表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者たちの行進  作者: 春香秋灯
男爵家の苦労人
12/67

死人の行進

 貧乏男爵家は、王国から監視される立場となってしまった。これまで、男爵家は妖精憑きが生まれやすいことを隠し通してきた。それが、山のエリカ様が男爵家の血族だと知られ、仕方がない、と当主である父が妖精憑きの記録を国王に見せた。

 妖精憑きが生まれやすく、妖精憑きの所業が事細かに書かれている記録は、国王を戦慄させ、男爵家を野放しにするわけにはいかなくなった。

 幸い、男爵家の者たちも、男爵領に住む平民も、ともかく善人だ。悪いことなどしない。逆に、騙されてばかりなので、国としては、騙す方を取り締まるほかなかった。






 王国に魔法で戻ってきて、一年が過ぎようとしていた。エリカと僕は、帝国で死んだこととなっていた。


 なんでも、亡くなったエリカの後を追って僕が死んだらしい。


 悲恋として、本になり、劇になり、王都では大賑わいだとか。

 当の僕は生きているが、死んだことになってしまったので、平民となった。

 エリカは、一年経ったが、まだ、生きている。

「ロベルトの手が、こんなに黒くなって」

 エリカについた穢れは、綺麗にとれ、かわりに、僕の左腕は真っ黒になった。もうそろそろ、壊死が始まっているというので、肩から切り落としたいのだが、エリカがどうにかしようと止めている。

 男爵家には、穢れをどうにかする方法は、探してみれば、見つかった。穢れを体の一部に移し替え、切り落とす、という方法だ。

 この方法、妖精憑きの力が必要で、今は亡き叔母の娘の力をこっそり借りた。

 腕のいい元騎士の貴族がいるというので、切り落とす手伝いを打診してもらっている。ただ、相手は領地から動きたくないそうなので、なかなかよい返事が貰えない。はやくきてっ!

「帝国のあの皇女ったら、本当にひどいのよ! 私が死んだらロベルトを伴侶にしてあげる、なんていうの」

「エリカが死んだら、僕も死ぬから、そんなことは起きない」

「死んだらダメです。悲しいです」

「わかったわかった」

 辛い事ばかりだったエリカは、それを取り戻すかのように、僕から離れなくなった。

 僕は、名もなき平民となったが、影で男爵領の領地経営を手伝っている。片手で出来ないこともないが、あえて、エリカに手伝ってもらっている。

「あら、リスキスお母様からお手紙だわ」

「………」

 生きているなんて、知らせてもいないのに、一方的に、リスキス公爵から手紙が送られてくる。もちろん、返事はしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ