表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者たちの行進  作者: 春香秋灯
男爵家の苦労人
11/67

聖別された赤ワイン

 新聞では、エリカが行った悪行が詳細に書かれていた。

 血のマリィは、妖精の力を使って、王侯貴族や教会、商人たちの悪行の証拠を集めた。そして、邪魔となる皇帝と、兄弟姉妹を毒杯で排除し、名君と呼ばれる姉を女王とし、恐怖政治を行った。

 毒杯に使われたのは、赤ワインだった。マリィや、女王となった姉が飲んでも、ただのワインだったが、罪ある者が飲むと、毒杯となった。

 そして、悪行の証拠によって捕らえた者たち全てに、マリィは赤ワインを飲ませた。

 もし、罪がなければ、赤ワインだった。

 しかし、全ての罪人は罪があり、毒杯となって死んだ。


 神がかりな制裁に、帝国では、赤ワインの値段が暴落した。


 エリカは、マリィの所業を証拠集めをしないで、歓迎パーティで行った。

 結果、罪ある貴族は毒杯となり、パーティは凄惨なものとなった。


 皇族といえど、育ちは王国である。王国側を批難する者が後をたたなかった。

 ちなみに、王国側もパーティに参加していたが、赤ワインは赤ワインのままだった。


 パーティの日、僕も嫌がらせのように赤ワインを出された。ボトルのお代わりをしてやった。年代物はうまいっ。


 その結果、数日で、帝国各地の聖域は、再び、白く輝いた。

 にもかかわらず、エリカが貴賓室には来ない。きたのは、帝国の筆頭魔法使いだ。

 夜中の、寝静まった頃にやってきた。

「お元気そうですね」

 僕の手に、新しい新聞が持たれているのを見て、苦笑する。あれから、皇女の命令で、何度も取りあげられたが、新しい新聞はすぐ届られる。

「船を用意してあります。今なら、あなた一人、逃げられます」

「エリカは?」

「彼女はもう、助かりません」

「会わせてください」

「逃げてほしい、と願われました」

「会ってから決めます」

「………こちらに」

 皇女に隠れて動いてくれたのだろう。他にも、エリカと一緒に王国から戻ってきた帝国側の侍女や騎士が、味方となって、僕をエリカの元へ案内してくれた。

 エリカは、囚人が捕らえられるような地下牢にいた。

「エリカっ!」

 鉄格子ごしに、倒れているエリカの手をとる。その手は黒く汚れている。

 聖域の穢れは、粛清だけではとれなかった。その穢れをエリカは受けとめた。

「お兄様、どうしてっ」

「置いていくわけないだろう。これから、帝国を出奔して、愛の逃避行をしよう」

「こんなに汚くなったのに? 見ないでください」

「妖精憑きの記録がいっぱいある男爵家だぞ。綺麗にする方法、知らないわけがないだろう。男爵家に行こう」

 嘘だ。そんなものはたぶん、ない。抱きしめたいのに、この鉄格子が邪魔だ。

「何故、エリカをこんな所に閉じ込める。帝国の恩人だろう。すぐに鍵を開けろ!」

「エリカ様が望んでっ」

「連れて帰る。エリカ、エリカ! もう大丈夫だから」

 邪魔な鉄格子がなくなり、やっと、エリカを抱きしめる。

 男爵家から来た使いの者たちが音もなく、僕の傍に跪いた。

「魔法を」

 僕が望めば、大昔から男爵家に伝えられた転送の魔法が発動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ