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30 エピローグ

「お嬢様との結婚を許していただけませんか?」


 エンジェル夫妻との形ばかりの挨拶をすませ、家に戻った私達です。

 そしてスピードマンさんは早速お母様に切り出します。

 その時のお母様の顔ったら――ふふふ、いつまでも忘れないでしょう。

 でもお母様はとても喜んでくれて特に反対はされませんでした。

 でもね、


「貴方のような立場ある方が本当にメアリーなんかで宜しいんですの?この娘はとてもあわてんぼうさんでおっちょこちょいなんですもの」


 なんて、言うのはやめてください。

 それを聞いたスピードマンさんがクスクスと笑いだして私はとても恥ずかしかったです……。


 そんなこんなは有りましたが、私の両親の許可はスグに取れました。

 私の両親は、基本私が幸せならそれでいいと思っているのです。


 と、いうわけで私達の結婚への障害は一点へと絞られました・

 そう、スピードマン伯爵の事です。

 私の両親からも、伯爵が結婚に反対しなければ、という但し書きが付いていたのですよ。


 スピードマンさん……いえ、カルロスは是が是非にでも伯爵の許可を取り付ける、と息巻いていましたが、私は内心、『時間がかかるだろうなぁ……』と思っていました。

 全ては伯爵の誤解とはいえ、今の私の印象は最悪なのですから。






§ § §






 カルロスが私にプロポーズをしてくれた数週間後、事態は意外な方向に進みました。

 とある出来事がおきて伯爵の機嫌が良くなり、私達の結婚も「お前の好きにしろ」と言ってくれたというじゃありませんか!


 その出来事とは――なんと、レディ・スピードマンの結婚が決まったのです。

 お相手は何と侯爵様で、伯爵令嬢たるレディ・スピードマンにとっても玉の輿です。

 その事で伯爵は大変に機嫌が良くなり、カルロスと私の事なんてどうでもいいと思われたのでしょう。


 後日、詳しく聞いたところ、その方とレディ・スピードマンは深く愛し合っていましたが、その方は前侯爵の従兄で領地管理をしていたとの事。

 爵位や財産もないため、伯爵の同意を得られそうになくプロポーズを躊躇していたとの事です。

 それが、前侯爵が病にかかり、二十代という若さで無くなったことにより、思いがけず爵位や財産を受け継ぐことになったため、結婚への障害が無くなったというのが真相らしいのです。


 あとは我が家の状況も正しく伝わった事も、伯爵が許可をだした一因になっていると思われます。

 我が家は決して貧乏では無く、お父様は複数の聖職禄を持ち、また村一番の大地主たるエンジェル夫妻との仲も良好で、土地の寄付などを受けているのです。

 そして、私の結婚にも三千金貨相当の財産を持参金として付けてくれるとのお話です。

 大体五十金貨もあれば労働者階級の五人家族が不自由無く暮らせると聞いていますので、それに合わせれば六十年分の生活費となります。


 結婚式はカルロスの教区でやる事が決まりました。

 これには珍しくお父様が強く抗議していました。

 どうもお父様の教区で私の式を挙げさせたかったみたいですが、こればっかりはしかたありませんよね。

 私はいずれ、自身が済むことになるカルロスの牧師館を新しい壁紙やカーテンで、色どりを添えます。

 あ、そうそう、小さな犬も飼い始めました、よちよち歩きで私やカルロスの元を付いて行く小さな犬をみて、私は昔の弟妹を思い出し、おもわずにやけます。

 こうして、私達は一足先に子犬と言う新しい家族を招いたのでした。






§ § §





 そして数か月後、私とカルロスは正式に夫婦となる日がやってきました。

 私は婚礼衣装を纏いしずしずと歩いています。

 これはお母様が昔着たと言う衣装を直した物です。

 本当は新しい衣装を買っても良かったのですが、お母様が「ぜひ、メアリーには私の衣装を着て欲しいわ」とおっしゃったので断わり切れなかったのです。

 でもお母様のみならず、妹たちまで総出で直したこの衣装は素晴らしい衣装に変身しました。


「おねーちゃん綺麗~」


「メアリー、とっても素敵よ」


 などなど、私を褒めているのか、それとも衣装を褒めているのか分からない様な賛美の声が口々に掛けられます。


「新郎カルロス、貴方は新婦であるメアリーを妻として、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、彼女を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くす事を、神に誓いますか?」


「はい、誓います」


「新婦メアリー、貴女は新郎であるカルロスを夫として、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くす事を、神に誓いますか?」


「……はい、誓います」


「では、誓いのキスを神と皆の前で」


 カルロスは私の顎を摘まんで唇を重ねる。

 甘く優しいキス、その唇は熱っぽかった。


「これにて今日、二人は夫婦となった。二人とも今日神に誓いを忘れない事を私は願っている」


 鳴りやまない拍手と歓声、そしてカルロスがコッソリと私に耳打ちする。


「今日ほど、生きていてよかったと思える事はない。少なくとも僕はそう確信しているよ」


「はい、私もです……」


 この後、私はカルロスといくつかの夜を過ごして、どんな暮らしをするのでしょうか?

 でも私には確信があります。

 いつまでも彼を愛していけるだろうと――。

これにて完結です。


ブックマーク、そして何より、読んで戴いた皆さま、31話のお付き合い、ありがとうございました。


この後の予定ですが、しばらく放置していた「クランマスターの異世界冒険生活」を1話だけ更新した後、

「伯爵になんかになりたくなかった……私は『普通?』の伯爵令嬢です!」を完結まで連載していこうと思います

引き続き、他の連載作品の方も読んで戴ければ幸いです。

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