第七十六話 リーゼとソル編②
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!
◇◇応接室◇◇
アンジェーナと対面するリーゼ。その後ろにリュウとボコボコ顔のソルが立っていた。
リュウがアンジェーナを眺める。
ロング金髪でたて巻き髪が付き、きらびやかなドレスを身に纏う女性。リーゼの姉に当たり、名はアンジェーナ・ランドルフ。かのランドルフ王の第三王子に嫁いだ。24歳。
そのアンジェーナがずかずかとリーゼに近寄る。
「顔を見せるようにと何度も言ったでしょう!」
「ちょっと忙しかったのよ。」
アンジェーナの気迫に思わずのけ反るリーゼ。
「セバスチャンから色々、話を聞いてるわ!!ディモール王国との戦争に、魔竜戦。この間のゾンビ軍団との戦争に、リッチ戦。そして首謀者ダーク戦。危機的な状況だったと聞いた時は心臓が止まりかけたわよ!!」
アンジェーナが声を荒げ、捲し立てる。
「騎士貴族に国を守る義務があるけれど、女性には発生しないわ!!それに冒険者はもうおやめなさい!!」
「あなたは小さい時からそう!お父様の影響で冒険者になり、覇竜様を倒すんだ!と息巻いていたわね!!」
「様々な戦いを通してわかったでしょう!あなたが強かろうとも上には上がいるのよ!!もうお父様や兄弟、ジランド王国騎士団にお任せしなさい!!」
リーゼが「はいはい。」と耳を塞ぐ。その態度にアンジェーナが溜め息をつく。
「あなたのために縁談を持ってきたの。さぁ座りなさい。・・・って、あら?後ろの二人は・・・?」
アンジェーナがソルとリュウの存在に気付いた。ボコボコ顔のソルが胸に手を当て、敬礼する。
「アンジェーナ様。ご機嫌うるわしゅうございます。僕はソル・デュミナスです。」
「・・・ゴブリンみたいな顔ね?」
アンジェーナがボコボコ顔のソルに首を傾げる。ソルは再び心の中でグサッとする。
「リュウ、回復魔法をかけてくれないか?」
リュウがやれやれとソルに回復魔法をかけた。これでボコボコ顔が多少戻った。
「あぁ・・・懐かしいわね。幼い頃のリーゼを負かしていた男ね。」
「覚えていただき、恐悦至極でございます。」
「そちらは?」
アンジェーナがリュウを見る。
「リュウだ。リーゼの瞬光の戦乙女チームに入ってる。」
「そういえば光魔法持ちと聞いたわね。」
アンジェーナがリュウを値踏みするかのように眺める。そしてリーゼに向き直る。
「何故、二人を連れてきたのかしら?」
「縁談を断るために。」
アンジェーナとリーゼの間で「・・・・。」と睨み合うかのように目をバチバチした。
「まぁ座りなさい。」
アンジェーナとリーゼが対面に座り、リーゼの後ろにソルとリュウが立つ。
「それでね。いくつかの縁談が来てるの。聞いて頂戴。」
アンジェーナが縁談のリストを読み上げる。
「国政公爵貴族家ウルトの長男ナーガ。国政公爵貴族家ディレンの次男ミルト。国政伯爵貴族家シッスの三男オーステ。」
色々な貴族の名前を挙げる。
「どう?どれも名のある貴族よ。」
「騎士貴族が全然入ってないわね?」
「騎士貴族を入れるとあなたのことだから、倒して断るだろうと思ったわよ。」
そのやり取りにリュウが貴族について思い出す。
ジランド王国は冒険者から貴族になる場合は騎士貴族の序列になる。上から騎士伯爵、騎士子爵、騎士男爵、騎士准男爵。なお騎士男爵貴族までは比較的に自由で冒険家業が兼務可能。そして騎士貴族は有事に前線に立ち、国を守る義務がある。
もう一方で領地を管理し、外交的な分野に属する国政貴族がある。序列で上から国政公爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、准男爵貴族がある。知性が高く、立場は騎士貴族より上だ。
今、アンジェーナが縁談を勧めてるのは騎士貴族より立場の高い国政貴族だ。
「どれも魅力的な縁談ね。」
リーゼが表面的な言葉を返した。アンジェーナが座りながら、前のめりになる。
「いい!?あなたは20歳。ただでさえ行き遅れてるのよ!!縁談が来てるのは私たちのお父様のおかげでもあるのよ!!」
カインズがジランド王国最強の騎士ということもあり、縁を繋がろうと求める貴族が多い。
「私はまだ結婚する気はないわ。」
リーゼが断り、さらに話を続ける。
「まだこの先、何か起きるわ。そのために剣の腕を磨いておきたいのよ。」
ダークの存在を危惧するリーゼ。アンジェーナがワナワナ震える。
「それはお父様たちにお任せしなさい!」
リーゼとアンジェーナがギャーギャーめわきながら押し問答を繰り広げていた。
「(どうしたもんかな・・・。)」
リュウが人間の色恋には関知したくないとばかりにその様子に頬をかく。その中、ソルが前に出た。
「発言をお許し願いたい。」
ぜぇぜぇと息の切れるアンジェーナが一息を入れて「何?」と返した。
「このソル・デュミナスがリーゼ様の縁談を申し入れたく存じます。」
この言葉にリーゼが予想通りなのか驚きはなく、リュウは「(ほぅ。)」と感心した。
アンジェーナが怪訝そうな表情をする。
「・・・あなたは冒険者でしょう?釣り合わないわ。」
「僕はAランク冒険者。カインズ師匠のように活躍し、騎士貴族に返り咲こうと考えております。」
「時間がかかるでしょう?それまで待てないわ。それに騎士貴族や冒険者は簡単に死んじゃうから嫌よ。」
アンジェーナが国政貴族の縁談を推していたのはそれも理由があったようだ。リュウも残された家族を見てきたばかりに不憫に思っていたところだった。
「僕はリーゼ様を想っております。何卒・・・。」
ソルが頭を下げる。アンジェーナが「う~ん。」と考え、リュウの方を見る。
「(・・・俺を見ないでくれ。何と言えば良いのかわからん。)」
「あなたは?リーゼのことをどう思ってるの?」
アンジェーナに話を振られ、リュウが焦る。リーゼの方を見る。
リーゼは金髪碧眼で髪をポニーテール風に束ねて、凛とした顔つき。上半身に鎧を身に付けて、下は動きやすいように耐久性のあるスカートを履いていた。
「(リーゼは強く良い女だ。冒険者をやめ、嫁ぐとなると・・・)」
リュウの心が揺らぐ。
「(・・・困るな。)」
リュウが決意したような表情をした。
「俺は人間のしきたりや考えがわからない。だが、リーゼの身を案ずる気持ちはわかった。それならば俺が守ろう。命を懸けて守ることを約束しよう。」
「リュウ・・・。」
リーゼの頬に赤みが差す。
「二人の話はわかったわ。ならば、セバスチャン!」
アンジェーナが指パッチンすると陰ながら白髪オールバックのセバスチャンが現れた。
「本当は戦闘狂のお父様と戦わせたいところだけど、大怪我していることだしね。だから代わりにこの方と戦ってみせなさい!」
セバスチャンことオルド・ディーラー。トランスロッド家の執事であり、元Sランク冒険者。先の戦争で負傷はない。
「セバスチャン・・・数々の武勇伝はお聞きしております。」
「(久しぶりに戦うな。)」
ソルは不敵な笑みを浮かべ、リュウは思わぬところで旧友との戦いにそれぞれ胸を躍らすのであった。
だが・・・。
「僭越ながらお断りさせて頂きます。」
「そうそう・・・ってなんですって?!」
アンジェーナがまさか断られるとは思っていなかったのか、驚愕の表情する。
セバスチャンはリュウの方を見る。
「私はトランスロッド家の執事。姉妹の仲違いはあまり見たくありませんので、中立の立場を取らせて頂きます。強いて言うなれば、リーゼ様の想いを尊重してみてはどうか?」
どうやらセバスチャンは戦争の影の立役者で恩人でもあるリュウとの戦闘を回避したい思惑から、最もらしい理由をつけた。
「今、王国城でゴタゴタしているのは知っているでしょう?今のうちにリーゼを国政貴族と・・・。」
「お姉様、やはりそんなことになっているの?」
「・・・そうね。一部怪しい動きがあるわね。特に顕著として現れているのは数ある縁談の中にフトッチョがいたの。除外したけれど。」
リーゼがうげぇと嫌な表情を出した。代わりにソルが返事する。
「確か独身ではありましたが、年はかなりお召しになっていたかと・・・?」
「フトッチョがことごとくお父様に楯突くのに縁談申し入れなんて何か企みがあるでしょう。」
リーゼとソルが顔を合わせる。
「まさかあの件が漏れている?」
「多分。でなきゃ、金にがめつい男がここまでしないはずさ。」
フトッチョの名前が上がったことで鈍いリュウにも目的が気づく。
「(・・・心当たりはウルスたち蜥蜴族の住み処である鉱床だが、それはカインズが独占契約する手筈。秘密にしているはずだが、フトッチョに知られてしまったのか?となると娘であるリーゼを取り込もうってハラか?)」
「だから早いうちに縁を見つけ・・・。」
小姑のように縁談を勧めるアンジェーナだが、リーゼは脳裏に前世の自分の言葉がリフレインする。
『歴史を繰り返さないように。欲深い人間が国の中枢にいれば、また同じことが起きるわ。』
その言葉の状況が近付きつづあることをリーゼは認識した。
「ごめん。その話は後でいいかしら。」
アンジェーナは溜め息つく。
「わかったわ。だけど、そんなに待てないからね!」
こうしてアンジェーナの縁談の話は切り上げたのであった。
◇◇場面転換◇◇
「二人ともお疲れ様。」
「貴族って大変なんだな。」
リュウが貴族としての世界を目の当たりにし、気苦労を覚えてしまっていたのだ。
「・・・でも嬉しかったわ。守ってくれるんでしょ?」
「あぁ。約束しよう。」
リーゼがふふふと笑い、リュウもつられて笑う。ドラゴンであるリュウとリーゼとの心がグッと接近したのであった。
「僕を忘れないでくれたまえ。」
「あら、忘れていたわね。」
三人で笑い合うとリュウは自分の家に帰るべく別れる。
リーゼとソルが並び歩く。
「フトッチョの動向を確認しなきゃいけないわね。」
「貴族ではない僕は何も出来ないもどかしさがあるが、いつでも協力は出来る。」
「ありがとう。」
こうしてリュウたちは目に見えない貴族の蠢く悪意に脅威を感じながら、過ごすのであった。
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