第七十五話 リーゼとソル編①
拙い文章、人物、状況情報など色々欠けてると思いますが、よろしくお願いします!
◇◇冒険ギルド・修練場◇◇
ソルは金髪で爽やかなイケメンの天才剣士。人族の男性。Aランク冒険者で実力者。
そのソルがロープをグルグル巻きに逆さ釣りになり、顔が腫れていたのだった。瀕死に近い状態であった。仮にもAランク冒険者の実力者をここまで追い詰める者はどこぞの誰か。
それはすぐわかった。何故ならソルの目の前にいるリュウがファイティングポーズを取っていたのだった。
「もっとやれ・・・。」
「いや、しかし・・・。」
リュウが躊躇う。だが、後ろにいるリーゼが冷酷に「リュウ!続けなさい!!」と言い放った。
「えーい!恨むなよ!!」
リュウがパンチを食らわす。
「ぐっはぁー!!」
ソルがたまらず叫んだ。サンドバッグさながらのフルボッコであった。
「(なんでこうなった・・・?)」
リュウが無抵抗のソルを殴って、良心痛み入りながら、汗をツーッとかく。同時にその経緯から過去を振り返る。
◇◇回想◇◇
「・・・気合い防御を覚える?本気なの?」
リーゼがソルの言葉を確認する。
「あぁ。」
ソルが首を縦に振る。
「人間の防御スキルでは最強の防御を誇るけれど、体得したのは私のお父様とラインゴッド騎士団長だけ。ラインゴッド騎士団長の凄まじい特訓を小さいときに見たことあるでしょう?」
「確かにラインゴッド騎士団長がカインズ師匠に師事し、気合い防御の特訓を受けていたのは見たさ。小便ちびったね。」
過去にラインゴッド騎士団長が気合い防御を覚えるべくカインズに特訓を受けた。幼少時のリーゼとソルがその特訓を目の当たりにした。
ラインゴッド騎士団長がロープをグルグル巻きに逆さ釣りになり、カインズがパンチの嵐を浴びせた。さらに木剣で様々な剣技を浴びせ、さらには健在だった賢者マクスウェルを呼び寄せ、様々な攻撃魔法を浴びせた。
それが数ヶ月続き、ラインゴッド騎士団長は何度も死にかけながらも「気合い防御」スキルを体得したのであった。
よくある死にかけてパワーアップの特訓というわけだが、その代償として、当時はふさふさだった髪が消え、スキンヘッドになったのだった・・・。
リーゼがごくりっと唾を飲む。
「その年で髪が無くなるわよ?それでも?」
ソルは自分の美貌さを知っているが故に一瞬の躊躇いを見せた。だが、すぐさま決意見せる顔する。
「それでもだ。」
「あなたが本気なら・・・協力するのもやぶさかではないわね。となると協力者を呼びましょう。」
そこにリュウが通りかかる。
「あ、ちょうどリュウがいるわね。」
「ん?」
リュウは何がなんだかわからずにソルとリーゼの特訓に付き合うのだった。
◇◇回想終了◇◇
「リーゼお嬢様。」
執事服を着た白髪オールバック老人のセバスチャンが修練場入口にやってきた。何やらリーゼに用事があるようだ。
「あら?何かしら?」
リーゼがセバスチャンの元に行く。逆さ釣りでボコボコになったソルとリュウが残された。
「・・・何故、気合い防御を覚えようと?」
リュウが手を休め、ソルに訊いた。
「・・・魔竜戦に続き、リッチ戦、そしてダーク戦でも死ぬ目に遭ったからな。覇竜・・・リュウがいなかったら、皆を守れずに死んでた。」
「・・・しかし、性急ではないか?お前なら時間をかけていけば、体得出来るだろうに。カインズは長年をかけ、体得した。」
「ダークが魔物と化し、さらなる未知の力を手に入れた。この先、また何か起きるだろう。それならば少しでも強くならねば・・・。」
「俺がいる。焦ることはない。」
「僕はリーゼを守りたいんだ。」
ソルが身の上について語り始める。
「僕は騎士准男爵貴族の末っ子でね。リーゼはさらに格上の騎士伯爵貴族。」
「本来なら関われる身分ではなかったのだが、昔にカインズ師匠は身分問わずに子供向けの剣術教室を開き、そのときにリーゼに会った。当時のリーゼはなかなか男勝りだった。」
「カインズ師匠の指導で僕もリーゼもめきめ腕を上げた。僕は天才ゆえに木剣の子供相手に誰にも負けなかった。リーゼにもね。リーゼの負けん気の表情は痛快だったね。」
「だがね・・・。カインズ師匠の引率でジランド王国近隣にて一角兎の魔物と初実戦を行ったのさ。」
※一角兎は頭に角がつき、勢いをつけて攻撃する魔物。角さえ気を付ければ簡単に倒せる。
「初めて真剣を持ち、対峙するとどうしたことか、足が震えてな・・・。怖くなったんだ。」
「リーゼが震える僕の前に出て、一角兎を倒したんだ。守られてしまった。悔しさと共にリーゼの後ろ姿に見惚れた。」
「成長するにつれ、騎士男爵貴族の末っ子だった僕は平民か冒険者の選択を迫られた。当然、冒険者を選んだ。カインズ師匠のように活躍して貴族に返り咲こうという考えがあった。」
「リーゼは騎士伯爵貴族の女性だから、どこか嫁ぐんだろうなと思ってたら、冒険者になって驚いたな。」
「すると好意が溢れてな。色々と関わりを持とうとした結果、嫌われてしまっているな。はっはっはっ。」
ソルのボコボコ顔から歯をキラッとさせた。ここまで聞いたリュウが笑う。
「本当に嫌いだったら、こんな協力などしないさ。リーゼは強く器量が良い。俺が人間だったら、間違いなく惚れていたのかもしれんと感じる。」
「リーゼは相手が本当のお前でも・・・。」
ソルがそう言いかけた時にセバスチャンと話終えたリーゼが溜め息をつきながらやってきた。
「貴族としての仕事が入ったわ。ソル、その顔ならちょうどいいわね。」
「え?」
ソルのボコボコ顔にちょうどいいとはなんだろうと思う。
「リュウは勉強としてついて来なさい。」
「俺も?」
「騎士貴族男爵家でしょ。貴族としての勉強よ。」
「あ、あぁ・・・。」
「その顔を見ると自分の立場を忘れていたのね。」
リュウ自身も忘れかけるが、騎士貴族男爵家なのだ。こうして思いがけないところで貴族として初仕事を勉強することとなった。
◇◇とある騎士貴族家◇◇
「戦争見舞金です。」
リーゼが戦争見舞金入り封筒をそっと差し出す。その封筒はバシッと落とされた。
「私の夫も大事な後継の一人息子も死んだのよ?!」
夫も自分の息子も戦争で亡くしたせいかヒステリックになる騎士貴族家のヒステリック母上。
「騎士貴族たるものは前線に立ち、国を守る役目。誠に感謝しております。」
リーゼとソルが同時に頭を大きく下げる。
「私たちの家はここで終わりよ!?どうしてくれるのよぉぉぉぉ!!」
みっともなく泣き叫ぶ騎士貴族家のヒステリック母上。
「騎士貴族としての家の存続について救済策はあります。是非ともご相談頂けたらと思います。」
「今更、養子を取れだの、他家に嫁げだのなんて年齢的に無理でしょうが!?」
どうやら騎士貴族としての家の存続についての救済策とは養子や他家に嫁ぐなどのものがあるようだが、ヒステリック母上の年齢を考えると難しいものがある。
ヒステリック母上が怒りのあまりに物を投げつける。それをソルが庇う。
「僕の顔を見てください。」
「ひっ・・・。」
ヒステリック母上がソルのボコボコ顔に怯む。
「僕はAランク冒険者のソルです。」
「あ、あのイケメン天才剣士の?う、うそ?こんなゴブリン顔だったの?」
ソルが心の中でショックを受けつつも表情は崩さない。
「この僕でさえこうなったのです。それほどの戦争でした。ご理解ください。」
「・・・・。」
ヒステリック母上の言葉が無くなる。今がチャンスと捉えたリーゼはまとめに入る。
「ではご自愛くださいませ。」
リーゼとソル、その背後にいたリュウがその場から立ち去る。
その後も何件も回ると同じような場面に遭遇した。
「僕の顔がこんな形で役立とうとは思わなかったよ。」
ソルのボコボコ顔が意外と役に立ち、揉め事があっても沈静化できるようだ。
「これも貴族として、メンタルケアの仕事なら俺は無理だ。辞めたいぞ。」
リュウが人間の感情剥き出しの罵詈雑言の場面に遭遇し、げんなりした。ただでさえドラゴンのリュウにメンタルケアなどと高度な仕事を求められるのは厳しいものがあった。
「やらせないから、大丈夫。ただ貴族として知っておいてほしいと思ったからよ。」
「その言葉、信じるぞ。」
ソルがうーんと腕組みする。
「騎士貴族の家を回ってみたが、不満が噴出している。」
「えぇ、騎士貴族は戦争の前線に立つ義務があるのだけれど、感情は別物になるわね。」
「それに国政貴族は騎士貴族を顎に使っている。対立が起きやしないか・・・。」
リーゼとソルは何か見えているのか、その先行きを理解したかのように話し込む。
「(なんだなんだ?また何か起きるのかまた何か起きるのか?そうなんだな?!)」
二人の見えている先にリュウだけついていけず、たまらず聞く。
「つまりどういうことだ?」
「あ、ごめんなさい。わかりやすく言うと国政貴族と騎士貴族の対立からジランド王国の先行きを案じているのよ。」
「・・・人間同士の揉め事が起こると言うことか?」
「あくまでも可能性の話。貴族の中には黒い腹積もりを持つ者もいる。」
リュウは脳裏に騎士貴族伯爵であり、冒険ギルドマスターのフトッチョが思い起こされる。
「でもあれこれ可能性を考えても仕方がないわ。それよりも・・・。」
あくまで可能性の話。起きていないことをあれこれ話しても時間の無駄とばかりに話題を切り替えるリーゼ。
「・・・リュウ。このあと付き合ってくれる?」
「まだ何かあるのか?」
「うーん。リュウで行けるかしら・・・。保険にソルも来てくれる?」
「僕もか?」
リュウとソルが「?」と疑問マークを浮かべる。
「アンジェーナ姉様に呼ばれているの。」
リーゼに連れられ、アンジェーナのいる大豪邸のきらびやかな門の前に立つ。
「戦争見舞金が必要とは思えない家だな?」
「あ、違うわよ。」
てっきり罵詈雑言の場面をまた見るのかと思い込んでいたが、違ったようだ。
「ん?何用で?」
貴族としての仕事でなければ見当つかないリュウの質問にリーゼが恥ずかしそうにする。
「私の縁談の話なの・・・。」
「なんだってー!」
ソルが驚く。縁談と聞いたリュウはますますわからなくなる。
「(リーゼの縁談の話に何故、俺たちも?)」
リュウの疑問を余所にリーゼたち大豪邸に入り、アンジェーナと対面するのであった・・・。
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