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早期 《世界の裏2》

本日二本め!

天使たちは一言でいえば、美しかった。


大理石の顔…身に包む金銀、あらゆる宝石がふんだんに使われた甲冑…そして、背中から生える純白の翼



その内の一柱、とりわけ巨大できらびやかな甲冑をつけた天使が




「Irub isasih "Ma" oy(久しぶりだな…魔女よ)」


なにか聞き取れない言葉で話しかける


「お前らにケツを振っている人間どもはいないのかい?」

セイラムは小ばかにする



「Fofofo! Nana iawoy ianari (ふぉふぉふぉ、あのような脆弱な奴らなど不要)]


「なら好都合だ」



セイラムは指をパチンと鳴らす




天使の後方に同じように魔法陣を召喚する



先ほどの天使たちの魔法陣は光属性だが…これは



「Osuk! DLO!(おのれ!闇か!)」 




魔方陣から無数の腕が現れ、弱い天使を片っ端から取り込み始める





「丁度魔界の奴等が腹を空かせているんだ!いい餌になるだろうよ」


セイラムはせせら笑う




「Era uod uoran narish ! (雑魚がどうなろうと構わぬ)」


リーダー格の天使が翼を広げる…天を覆うようなその大きさ…数は8対16枚




「これは当たりだ!智天使(ケルビム)か!お前の光輪(ヘイロウ)頂くよ!」



今度は、セイラムは手を叩き、突如、空間転移をする



先程セイラムがいた場所に巨体な剣が突き刺さっていた



「そこは危ないぞ!」

セイラムがしてする




魔方陣が開き、天使を優に超える大きさの口が現れる



天使は間一髪避ける





セイラムと智天使(ケルビム)が戦っている間




ミスカも闘っていた



「契約者は嫌いだよ!」


敵が放つ攻撃を水晶の楯で防ぎ、一人ずつこれまた水晶の重槍(ランス)で、一人ずつ突き刺す



ミスカは全身を水晶の甲冑を身に付け、これまた水晶の翼を顕現させる





こちらの敵は人間だが、全員天使と契約している。


全員光属性と身体能力が大幅に増幅されている



「何より厄介なのが…一部憑依されているな…」

ミスカは忌々しそうに呟く



契約者は霊次的な存在と契約した肉体を持つもの達である。彼らは霊次的存在から力を貰い振るう。



そんな彼らの奥義が、霊次的存在を体内に宿し、融合することである



「まぁ、彼らは取り込まれたのが正解なのだけど…」


ミスカは重槍(ランス)から原素(マナ)の塊を放つ




「そんな重い武器を振り回していいのかね?」

一人の騎士がミスカの背中に斬りかかる



「だから?」



ミスカは騎士の背中にいた



「近接が苦手でも、高速で移動できれば、変わらないわよ?」



斬りかかる直前、翼に魔力を送り、圧縮噴射して、高速移動する



「だから死ね!」


殺す






「私たちは、貴方達のような、力がないから差し出すのような真似はしないわ!私たちは力がある!知恵がある!だから自らの力で、新たな力を勝ち取る!」




最後の一人を殺す




「故に、旧き者は、我々は代償者ではなく、交換者と呼ぶ」





「我ら、魔女は、等価交換の法則にのっとり、力を振る」

セイラムが智天使(ケルビム)を自分の掌から発生させた青白い鎖で拘束する




「Tuk eraw ijah ad(くっ、我が…この様とは…)」

智天使(ケルビム)は必死に体を動かすが…



「落ち着け!」

セイラムは更に鎖を締め付ける



「早速だが、お前の光輪(ヘイロウ)頂くぞ!」


セイラムの腕が液状化し、無数の触手となって智天使(ケルビム)光輪(ヘイロウ)に触れる



「Uooooo」

苦しそうに身をよじる


セイラムは触手を光輪(ヘイロウ)に絡めとり、どんどん浸食する



全てを浸食し、触手を引っ込めて腕を戻すと、掌には黄金色に輝く金の輪があった



智天使(ケルビム)を見ると…その姿はもう天使とは言えなかった。


身に包んでいた金銀の甲冑、嵌め込まれた色とりどりの宝石は輝きを…光を失い。顔を含め、皮膚としての役目を果たす大理石はボロボロ崩れ、調和のとれた美しい顔の下は、醜悪な…まるでひどい火傷を負い、ジュクジュクに腫れた顔を曝す。



「Fofofo! eraw etisoat om eamo ah adum ad. Otik unis. “ IYVON”on ikibitim ed. ALLELUJAH! “IYVON”(フォフォフォ、我を倒したところでお前は逃げられない…必ずや、浄化される。女神の手によって…女神に祝福あれ!)」




後方に巨大な穴が開き、先程召喚された獣の口が再び現れ智天使(ケルビム)に食らいつく。



「ああ、ちなみにソイツは先程喰いそびれて、凄いイラついてるから…もう聞いてないか」




グチュグシャボリッ



巨大な口は少なくない肉塊を溢しながら、咀嚼する。




巨大な口は新たなる獲物を求めようと乗り出すが…



「餌やりはもうおしまいだ。戻れイグ(・・)



巨大な口はうめき声をあげながら穴の中に引き込まれる




「さて、終わったが…んッ?」




「ねぇ、セイラム!」


どさり、ミスカが一人の女性を乱雑に落とす




「この子がどうしたの?」



「彼女の刻印(ルーン)を見て」



セイラムは背中を見ると、そこには複雑な術式が描かれた魔法陣が刺青のように浮かんでいた。



「へぇ~、これは中々レアな刻印(ルーン)だ。こいつの契約主は座天使(スローンズ)だ。守りに特化した上級天使だ」

セイラムは舌なめずりする


「しかも、驚くことなかれ!これを倒したのは!なんと!アーカム君なのよ!」

ミスカは嬉しそうにはしゃぐ



「それはホント!」

セイラムはアーカムを探すと、



いた!



木の幹にもたれかかって、スヤスヤ寝ていた。



セイラムは慈愛に満ちた笑みを浮かべ、アーカムの頭をなでる



アーカムはくすぐったそうに顔を歪める





「さて、仕事をするか…」




セイラムは気絶している女性を起こす



「うっ…私は…ッ、あのガキッ!…ッ!お前らはッ!失敗したのか…」

女性は目を覚まし、理解した瞬間、絶望の色を浮かべる



「さて、早速やりますか」

セイラムは胸から金色色に輝く黄金の輪を取り出す



「それは…」

女性の顔は真っ青を通り越して蒼白となっている



「普通の契約者はピンと来ないと思うが…光の眷属と契約したお前たちならわかるよなぁ」

セイラムはイヤラシイ笑みを浮かべる



黄金の輪…すなわち、光輪(ヘイロウ)が光を放ち、小さな魔法陣と変貌する



「お前たち契約者は、神の眷属や悪魔、精霊と契約するとき、力の源である魔法陣を体に残す…まるで、入れ墨のようにな…お前らは体に浮かぶ魔法陣を刻印(ルーン)と呼ぶ」


セイラムは一旦息を吐き


「私が発動した刻印(ルーン)は他者の刻印(ルーン)を一時的に奪う物だが…私はそれを改良して、永久的に奪うことが出来るようにした」



「yヤッ、止めて!」

女性は逃げ出そうとするが…


勿論捕まる



「さて、始めようか」



セイラムは刻印(ルーン)を発動する



「うっ、うぁあああああああ!」


女性は背中を掻きむしる



刻印(ルーン)とは、契約者と契約主との一方的とはいえ、魂を介した契約だ。本来は土足で踏み込まれていいもんじゃない。拒絶反応として猛烈な熱を発する」


女性が悶える姿を見てイヤらしい笑みを浮かべるセイラム


「まぁ、感じるのは君だけどね」



そして、息絶える



セイラムの手には黄金色に輝く輪が握られていた。



「許可なく永久に奪われる事は恥だ。命を持って償えか…それにしても、綺麗な魂だなぁ。こいつは貴重な材料になりそうだし、中々いい体してる。これも材料にしよう」



終始観察していたミスカがやってくる

「それどうするの?」



光輪(ヘイロウ)を指差す


「そう言えば、お前たち魔女は私の職業をあまり知らないみたいだな。こいつは商品として売るため加工するんだよ」


セイラムは手を叩き、禍々しい扉を顕現させる。前回出した工房に続く入り口だ


魔界商人(・・・・)という名は有名だが、何を売っているのか…それは殆どの奴等は知らないでしょう。魔女の奥義である魔導具の販売だよ。けど、私が売ってるのは、禁制品だよ」



門をくぐり


「ミスカ…君には正式な助手になってもらおう。私が売る魔導具の材料は、この光輪(ヘイロウ)、そして持ち主の肉体、原素石(オーブ)、魂がノーマル品用、スペシャル品は君たち魔女の肉体と魂が使われる。」



ミスカは、かつての自分の同僚が拷問される姿を思い出すが…



「それは…いいですね!」

恍惚とした顔で言う



だから彼女はSランク入りを果たしたのだ…狂人として…



そして二人で作った作品は黄金色に輝くネックレスだ…中心にはかつての持ち主の魂が宿った赤いルビーが煌めく



「あぁ、美しい…これは誰に売るの?」

ミスカは目を、輝かせる



「さぁな、運命が導いてくれる。お前には商売の方法も教える。こいつの代金は3つ、一つは光輪(ヘイロウ)、一つは原素石(オーブ)、そして本人が持つ原素(マナ)だ。それ以外は基本お断りだが、たまに例外がある」


セイラムは商品をくるくる回し…



「こいつは、アーカムにあげよう。この材料を持ってきたのはアーカムだしな。しかも、初めて敵を倒したじゃないか!記念品だ」



二人は元いた場所に戻り、未だに眠っているアーカムの首にそっとかける




二人はアーカムの寝顔を見て微笑み…






ああ、真実とはなんと残酷なのだろう…



アーカム少年が如何にして、敵を打ち倒したのか…





そして





今見てる夢が如何に



おぞましい物であるのか…




二人は決して知ることはないだろう。




誰が言ったのだろう…




知らないことは幸せだと…





さぁ、逃げ惑え!



我から逃げてみせよ!

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