友達連れて来ました
診療所の庭にある東屋で、秀一にゲームの操作を教えてもらう瑠架。
「うちは、遊び場じゃないんだが……」
総司は溜息をつくと
「だが、友達なんて連れてくるの初めてだな」
「ごめんなさい、総司先生。止めようと思ったんだんですが」
あの通り聞かなくて、と早紀は頭を下げる。
「いやいや、早紀ちゃんには世話になりっぱなしだな。電車代、これで足りる?」
一万円札を出した総司に
「こ、こんなに受け取れません」
早紀は、首を横に振る。
「先生、お客さんですよ」
看護師に呼ばれ
「ああ、今行く。まあ、いいから受け取れ」
「……良心が痛むわ」
木の上の方を見上げる老婆に気づき
「どうしました?」
早紀が声を掛ける。
「風で帽子が飛ばされてしまって」
「任せてください」
身軽に木を登っていく。
その様子を見ていた瑠架は
「委員長は、猿だな」
「瑠架、聞こえたら怒られるよ」
秀一は、苦笑い。
そして、診療所の裏から伸びる山道に視線を向ける。
「この山頂に、住んでるの?」
「ああ、地蔵があるとこまでならよく先生の患者がお供え物してくれる」
「なら、そこまでは行けるんだよね」
「行って見るか?」
秀一は大きく頷くと
「うん、興味ある」
「……お前、結構変わってるな」
♦︎♦︎♦︎
地蔵の元まで来ると
「結構、ある、んだね……」
息を切らしながら、秀一が言う。
「ここから先は、獣道だ。しつけのなってない狼もいるからな、気をつけろ」
「なんとなく、神聖な領域って感じはするよ……さすが、アベルがたどり着いた地のことだけはあるワ」
「何言って? そろそろ、帰ろうぜ」
瑠架が踵を返すと
「がっ……」
口元から滴り落ちる鮮血、そして左胸に大きな穴。
「大事なモノ、隠すとしたら心臓かしらネ」
無邪気な、女の子の声。
「お、お前……」
「心臓抜いたってのに、しぶといわネ」
秀一に取り付いている「何か」は、不敵な笑みを浮かべると
「刻印、分かりやすい場所に出すわけないワ」
舌を出すと、ローマ数字のⅠが刻まれている。
「……吸血鬼、まさか秀一が?」
「取り付くなら、カワイイ女の子が良かったナ」
瑠架の意識が遠のく中「何か」は、嘲笑う。
「じゃあ、死者の書はもらって行くネ。あ、もう死んじゃうから意味ないかモ」




