ゲームの持ち主
「同じクラスの、長谷川くんよね」
「え、オレこんなやつ知らねぇけど」
早紀は眉を寄せると
「あんた、学校サボるから」
「だって、退屈」
欠伸をする瑠架を見て
「僕は、長谷川秀一。大神瑠架君だよね……一度、話してみたいって思ってたんだ」
「おい、委員長。これって人望ってやつか?」
「あんたに、そんなものがあったとはね……長谷川くん、こいつに関わるとろくなことないわよ」
忠告する早紀に
「こうやって、嫌味言われたり、同じクラスの子に無視されたりしてるのに、マイペースだしすごいよね!!」
秀一は、眼鏡のレンズ越しの瞳を輝かせる。
「え、褒めてる?」
首を傾げる瑠架に
「間違いなく、あんたの図太さは褒められてるわ」
そう言って、早紀は鞄から小型ゲーム機を取り出す。
「ねぇ、これ貴方のかデータ確認してみて」
「これ、バケモノ・ハンターじゃないか。僕もちょうどなくして……」
セーブデータを確認して
「どこにあったの? てっきり、失くしたとばかり」
カセットも小さいから見つからないと思っていた、と秀一。
(名前あああ、ってセンスなかったわね)
「昨日の事件現場だ。お前、何か見てないか?」
オレたち犯人探してるんだ、と瑠架。
「勝手に仲間にしないで欲しいわ」
「委員長は、細かいなぁ」
「家でゲームやると、親が煩くて……ちょっと、気分転換に外に出たんだよ。そして、警官の人に早く家に戻るように言われて、運悪く転んで」
あんなことになるとは思わなかった、と秀一。
「あの委員長、それ返してもらってもいい? 徹夜で並んで買ったんだよ」
「……分かったわ」
♦︎♦︎♦︎
「そうそう、Aボタンで攻撃して」
「こ、こうか?」
「うまい、うまい。瑠架は、ゲーム機持ってないの?」
「んー、今度バイト代前借り出来るか頼んでみよう」
仲良く話している瑠架と秀一を見て
「ずいぶん、仲良くなったわね」
早紀は肩を竦める。
「じゃあ、僕の家こっちだから」
「おう」
秀一と別れ
「結局、犯人の手がかりは掴めなかったんだよなぁ」
「でも、死者の書って情報はなかなか貴重だと思うわ。どっちの味方ってわけでもないから、このことは長老様たちに報告させてもらうわ」
明日には焔兄さんと導師の耳にも入るでしょう、と早紀。
「ですよねー」
なんかズルい、と瑠架は思った。
♦︎♦︎♦︎
「全く、お前と来たら勝手な事ばかり……」
「だから、こうして診療所の掃除を手伝ってるじゃん」
床にモップをかけながら、瑠架が答える。
「あのさ、先生。オレ、ゲーム機買いたい」
総司は眉を寄せると
「オセロか? トランプか?」
その返答に
「見た目若くても、やっぱりオッサンだよな」




