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最初の集落

ここから三人称。

 村の出口を抜け、アルは山道を駆けていく。

 聞こえるのは自分の短く荒い息遣いと、木の葉が体を擦る音。

 一心不乱、獣のごとく、山道を下る。

「アル!」

 自分を呼ぶ声。

 見ると、自分ほどの速さではない何かが、山道を降りてくるところだった。リンだった。息を弾ませ、自分の目の前まで降りてくる。

「リン……なんで?」

「これ……」

 そう言ってリンは、一差しの剣を差し出した。鞘に収まった、綺麗な業物。屋敷に行く前に、アルが小屋でリンに渡したものだ。

「これは……」

 リンが差し出した剣。それを手に持つが、しかししっかりと受け取る事はしなかった。

 アルにとってこれは、完全に彼女に渡したはずだった。もしも、自分が帰って来れなかった時のために、彼女に渡したもの。彼女がその後、どんな選択をしようと、生きていけるように。

「リン」

 アルが返そうとしたその時、ガサリ、と草むらが揺れる。それは小動物が立てた音だったが、二人に警戒心を取り戻させるには十分だった。

「とにかく、ここを離れよう」

 剣を受け取り、リンの手を引いて、村を離れる。

 短い間であったが、もう二度と戻らないだろう、とアルは思う。



 山のふもとから一番近い集落までは、一本道だった。

 一面の草原に生えているのは、せいぜい腰までの高さの植物で、遠くの方まで見渡せる。そう遠くない場所に、人家が立ち並ぶ集まりが見えた。

「もし、ヤシロ村の人間に遭遇する事があったら、俺から逃げるように全力で離れて。そして彼らに会ったら、俺に無理やり連れてこられたと、必死に主張するんだ。そうすれば、君は助かる」

 集落までの道のりを歩きながら、アルは解説する。

 できれば追われる身の自分と一緒に来てほしくない、との想いだったが、ここまで着いてきてしまった彼女を無下にあしらうことはできないとも思っていた。

 そんなアルの言葉にリンは、頷くでもなく、ただアルを不思議なものを見るような目で眺めていた。そんなリンを見ていると、人形のような印象を持つ。あまり表情を崩さないところとか、まさにそうだ。

 


 間もなく二人は、最初の集落に着いた。

 そこには年季が入っている家が立ち並び、店もバザーなどが主で、お世辞にも栄えているとは言えない印象だ。

 二人はまず、質屋を探した。

 手持ちの剣を換金し、最低限の資金を用意しなければいけない。

 アルは、リンが今後どうするつもりかは分からなかったが、二人が旅をしても困らないよう、二人分の資金を準備にするつもりだった。

 入り口からそう遠くないところにこぢんまりとした店があったので、二人はそこに入ることにした。

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