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第33話


二週間ぶりです・・・

更新、滞っていてすいません・・・

今でも思い出すのは後悔してもしきれない過去。

何度、夢に見ただろう

何度、己の無力さを呪っただろう

けれど、どんなに思ったところで、過去が変わらないことくらい分かっている。

そう、それはもはや過ぎ去ってしまった出来事だからだ


***


その日は雨が降っていた。

肌を刺すような冷たい、冷たい、10月の雨が・・・


「宗谷!」


声は聞えているだろうに、前を歩く男の歩みが止まることはない。

どうしてこの男はこうも頑ななのだろうか。


「お節介が過ぎると嫌われますよ、お兄ちゃん(みしろさん)

「茶化すな。だいたい、いいのか、放っておいて」

「ほんと、シスコンですねお兄ちゃんは」

「シスコンじゃない!それと男にお兄ちゃんなどと呼ばれて喜ぶ趣味は俺にはない!」


穏やかな声だが顔が見えないぶん、不安になる。


「・・・正直に言うと、僕がああなるように仕組んだんです」

「はぁ?」


先ほど見た理沙と東悟(こうけい)のことだと分かったが、宗谷の言っていることを御代は理解できずうなった。


「理沙はお前の彼女だよな」

「えぇ」

「好きなんだよな」

「もちろんですよ、嫌いな人間と付き合うほど僕は物好きではありません」

「なら、どうして東悟と理沙があんな関係になるまで放置したんだ!」

「・・・だから、言ったじゃないですか、僕が仕組んだ、って」


目の前の優しそうな外見からは考えられないほど狡猾な宗谷が浮気の兆候に気づかないはずはない、それなのに妹はあろう事か東悟とも関係を持っていた。

それを目撃したにもかかわらず、宗谷はそれが当たり前のような対応を取る。

御代にはそれがどうしても理解できなかった。


「・・・考えていることはなんとなく分かります。どうして僕が理沙と東悟の関係に気づかなかったのかって事でしょう」

「あぁ」

「気づいてましたよ」

「それが、分からないんだ」

「・・・そうですね・・・強いて言うならば、彼女が寂しがりやだから・・・ということでしょうかね。そして、東悟は優しい。僕はそれを利用したんです」


視線が絡み、宗谷は苦笑した。

そして、次いで発せられた言葉に、御代はざあざあ、と傘に当たって弾ける雨音がどこか遠くから聞えてくる、そんな不思議な感覚に陥った。


「長くないんです、僕」

「・・・」

「スキルス性の膵臓癌。転移もひどくて手の施しようがない。余命は後、もって一年と少し。半年前、そう言われました」

「・・・っ」


穏やかな顔で言われ、御代のほうが戸惑った。


「治療は・・・」

「痛み止めは処方してもらっていますが、抗癌剤治療といったものはしていません」

「どうして・・・治る可能性もあるだろ」

「可能性はごくわずかだそうです。それなら、したいことをして残りの人生を過ごすほうが病院のベッドの上で生きながらえるよりも重要だと、僕は思ったんです。でも・・・・それでも、気がかりなことがあった」

「・・・・それが理沙か・・・」

「そうだとも、そうでないとも言えますね」

「どういうことだ」

「知っていますか。僕はとっても自分勝手な人間なんですよ」

「・・・」

「・・・・・東悟は、ずっと以前(まえ)から理沙のことが好きなんですよ」

「・・・」

「不器用で、馬鹿なんです、僕の弟は。だから、きっと、僕がいなくなっても今と同じように彼女に何も言わないと思ったんです」


宗谷はくすくすと笑う。


「東悟は僕よりも自分は劣っている、そう、思っているんですよ。僕は僕で東悟は東悟なんだから、そんなこと感じる必要なんて何もないのに」

「はっ?」

「引け目を感じているんですよ」

「いったい何が言いたいんだ」

「僕は卑怯なんです。東悟にも理沙にも自分を忘れて欲しくない」

「・・・・」


宗谷の言わんとしていることを察し、御代は顔を顰めた。


「罪悪感というのはどれだけ時間がたとうとも忘れられないものです」

「本当に、えげつない」

「何とでも。過去は風化していく。人間は忘れ去る生き物ですからね。楽しい思い出というものは新しいものにすぐに取って代わられてしまいます。けれど、恐怖や罪悪感といった感情というものは時間が忘れさせてくれるというものでもなければ、忘れようとして忘れられるものではない」

「・・・・つまり、お前は・・・二人に自分を忘れられたくない。忘れないならそれが【負】の感情であってもかまわない。そう言いたいんだな」

「えぇ」

「俺には、その感覚は理解できないな」

「別に理解して欲しいわけではないですよ・・・それに、こうでもしないかぎり、東悟はいつまでたっても僕に遠慮をして、彼自身を偽ったまま、欲しいとも愛しているともいえないでしょう。そうして、行き場をなくした感情はいつか、抱えきれなくなって・・・東悟を壊してしまいそうで・・・僕にはそれが怖いんですよ」

「お前・・・」


最後にポツリと零された言葉、そちらが本音なのだろう。


「宗谷・・・」


優しいのはどっちだよ。

本当に理解に苦しむ。


「お前はそれでいいのか」

「・・・」

「・・・はぁ・・・」


ため息をつく。

どうしてこう、俺の周りはこうも不器用で優しく、己のことに無頓着な人間ばかりなのだろうか。











最近、更新ペースがのろのろ・・・

すいません・・・

それなのに、新連載を始めるという無謀なことをしてしまっています(汗)

異世界転生ファンタジーという新ジャンル・・・

そちらにかまけていたら、こちらの筆は進まないまま・・・という・・・効率悪いです作者・・・(トホホ・・・)


ですが、完結はさせます。

がんばります。

更新は不定期になると思いますが、そこは、どうか、皆様の大海のようなひろーい心でお願いします・・・






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