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番外編07:金切マオと強い勝負下着(挿絵アリ) (3.1k)

「新婚旅行の最初の夜に勝負下着でナニがシたいか迫ったのに、【語学研修】ですかそうですか」

 (by金切(かなきり)マオ@新婚)


………………

…………

……


 新婚の金切かなきりマオは怒っていた。


 【新婚旅行】でチェックインした高級ホテルの客室リビングにて、即効性の睡眠薬を混ぜたワインで倒した夫を見下ろしながら、一人怨嗟を吐き始めた。


「そこは、男なら【ル●ンダイブ】を披露するところでしょう」


 眠っている金切かなきりゴウから、ツッコミは無い。


「【貧乳ひんにゅう】に飛び込んだら痛いとでも思いましたか? 平たすぎて胸筋にしか見えないけど、乳腺は多いからそんなに硬くは無いですよ」


 高校時代に【貧乳ひんにゅう】を病院で検査したところ、胸部に平面状に乳腺が広がっており、機能自体は【高性能】とお墨付きをもらった。


 そして、しばらく荒れた。


「私には時間がありません。でも、今回はいいでしょう。予定を少し変えて、望み通りのとびきりの【語学研修】を用意します」


 金切かなきりマオはほくそ笑んだ。


「地球を3周して、2度死ぬぐらいの【スペシャルコース】ですよ」


…………


 床に倒れた金切かなきりゴウをベッドの上に運び、その隣に座る。

 月の無い夜景を見下ろしながら、深く眠っている夫に話しかける。


「やっぱり【ルパ●ダイブ】はナシです。あれはケガの元です」


 背負って運んだゴウは、それなりに重かった。

 健脚で足は速いが、あの3姉妹のような怪力ではないので、自分と同じぐらいの体格の人間を一人で運ぶのはそれなりにキツイ。こんなのが飛び込んで来たら確かに危ない。


「医者曰く、私の頭には【夢】が詰まっているそうです」


 出国前にマオは検査で頭部MRIを撮影した。

 大脳のあった場所はほぼ空だった。


「人間は、イノシシの突進を振り切ったりできません」


 マオは全速力ならイノシシを振り切る速さが出せる。

 舗装路なら原付を追い越すこともできる。


「人間は、月光浴で怪我が治ったりしません」


 戦場に居た頃は何度も大怪我をした。

 しかし、月の光を浴びると一晩で完治した。

 その特性を活かして、戦場では【おとり】として活躍した。


「気付いてはいたのです。私には【人外じんがい】の何かがあることに」


 自分が【人外じんがい】であることを認めたくはなかった。あの3姉妹に出会うまでは。


「あの3人も同じです。人間の女は、どう鍛えたって3人で500kgも持ち上げたりできません」


 体格とアンバランスな3人の怪力。

 アンナの驚異的な記憶力。

 マナやミナも実は常人離れした一芸を持っている。


「そして、貴方あなたも、私達と同類です。 いえ、同じではないですね。私達よりはるかに強い【何か】を持っています」


 マオはベッドの上で、眠るゴウの顔を見下ろす。

 気持ちよさそうに眠っている。


貴方あなたは、死なない。何があっても生き残る」


 マオは、ゴウの手首を持ち上げて、脈を取りながらため息をつく。


「さっきの睡眠薬、致死量超えてます。何故一気飲みをしましたか?」


 ディナーの時にゴウのワインの飲み方を観察していたマオは、それに合わせて一口で効果が出る量を盛った。しかし、ゴウはそのグラスで一気飲みをしたので、致死量を超えた。


 それでも、脈は安定。寝ているだけでゴウは生きている。


「竹刀でシバかれた時の貴方あなたは、なかなか【ひでぶ】でしたよ」


 3姉妹もまた、ゴウの持つ特異な【何か】に気付いていた。

 常人なら死ぬぐらいの負傷でも、ゴウなら大丈夫だと知っているからこそ、着衣で隠れる部分が【ひでぶ】になるぐらい容赦なくシバいた。


 マオはゴウの傍に横になり、耳元でささやく。


「それだけの力を持ちながら、子供を授かることに躊躇しましたか?」


 ゴウは神槍かみやり親子の事を覚えている。

 そして、彼等があの日あの場所で焼死したことも知っている。

 あれが自分の未来に重なる可能性も理解している。


貴方あなたと違って私は【不死身】ではありません。無事に産めるかは未知数です」


「これは当たり前の事。神ですら逃げられない、女の運命です」


「でも、私や子供がどうなっても、男の貴方あなたは無傷です」


「だから、何があっても、全部背負って生きるのですよ」


 ゴウは全てを背負うのが男の生き方と理解している。

 覚悟をしていたつもりだった。


 しかし、その覚悟を示すべき瞬間に、無意識に躊躇してしまった。

 マオはそれを見逃さなかった。


 コイツ、逃げたな。と。


「背負う覚悟もなく【婚活】をしたなら、それを【甘え】と言うのですよ」


 これは、お見合いの時に言いたかったことだ。

 【結婚】は、命懸けの妊娠出産を女性に強いるのが前提。それを知らない訳は無い。だったら、あの時甘えていたのはどっちだと。それをしっかりと分かってもらうため、自分の言葉で伝える。


「私の子供の居ない世界に愛着はありません。次逃げたら世界は終わりです」


 眠っている夫に【最後通告】を突き付けてから、金切かなきりマオは再び身体を起こす。


「【王】に届くぐらい成長した【最強の男】に抱かれるのは楽しみですわ」


 イタい一言を呟いた金切かなきりマオは、窓の外の夜景を見下ろしながらほくそ笑んだ。


「……コレ。一度言ってみたかった」


 【既婚者】になったらやりたかった事の一つを達成し、充実感に満たされた。


 そして、その【実践】に想いを馳せる。

 それとなく誘うことはできるが、女の方から手は出せない。

 【語学研修】から生還したゴウなら叶えてくれると思ってはいるが、もう一押しする何かが欲しい。


「もっと強い勝負下着を準備しませんと」


挿絵(By みてみん)


「【くま】より強いもの。何がありますかねぇ……」


………………

…………

……


 夫の【語学研修】を離れてエスコートしつつ、【くま】より強い物を求めて世界を彷徨った金切かなきりマオは、ゴウを【ウイグル自治区】に迷い込ませた足で中国山間部のとある村を訪問。

 村の名産品をベースに自分専用の勝負下着をデザインし、職人達に制作を依頼。


 1品物のはずだったが、あんまりなデザインにツボった村の職人達が、ジョークグッズとして外販しようとマオの許可を得て家内制手工業で量産。

 【夜】の加護を持つマオの妄執が宿ったデザインが、量産品にも恐ろしい【呪い】を付与したことで、若い婚活女性に大ヒット。アジア太平洋方面の人口問題解決に貢献したとか。



 めでたし めでたし。


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龍の勝負下着ドラゴンハッスルパンティ

 透過性のある白いシルクジョーゼット生地で作られたジャストウェストでノーマルレッグなパンツの後ろ側に、細い金糸で大きく【ドラゴン】の刺繍が施された、マオのセンスでは最強の勝負下着。

 履き心地と動きやすさ優先の形ながらも、薄くもろい生地に大きな刺繍を施したことで耐久性は劣る。下着としての実用性は皆無であるが、特有の効果を持つことで空前のヒット商品となった。


◇効果

 これを着用して誘惑すると、相手の男に【既成事実】をさせることができる。

 年齢制限18~31歳。使用可能回数は生涯通じて1回のみ。

 31歳が使用時には【崖っぷちボーナス】として懐妊率5倍増しの命中率補正。


◇副作用

 【既成事実】の完遂をトリガに【呪い】が発動。男は【妻子を守る事に人生を捧げる】というヒト科オスの本来の役割に覚醒し、良き夫として優れた父として妻と共に充実した人生を全うしてしまう。


◇使用上の注意点

 【浮気】や【不倫】に該当する関係の男女間で使用すると、イタしている最中に二人揃って【ぎっくり腰】を発症する。

 身動きが取れず救急車を呼ぶしかない程の激しいもので、搬送先の病院で鎮痛剤が効き始めた頃には、病室が【修羅場】になっていたりする。

 ナニかをイタす前に、ソレが許される関係かよく考えることが大事である。

●オマケ解説●

 【ひでぶ】といえばあのアニメ。

 戦場から帰った後にマオは一時期ハマり、自室で【貧乳ひんにゅう】に【北斗七星】を描いて【あたたたたたぁー】をしている姿を、母親に動画で激写されたという【黒歴史】があるとか。


 マオの母親譲りの【貧乳】の秘密。

 乳腺が胸筋の形で発達。個性を越えて奇形の域まで達した生命の神秘。

 硬くはないと言ってはいるが、触られたくはないらしい。

 マンモグラフィはあきらめた。


 死とコンプレックスを乗り越えたマオは、何をするにも迷いはない。

 元からそんな感じだった気もするけど。


 がんばれゴウ。負けるなゴウ。妻から世界を守るため。

 殺されかける事は確定らしいけど、きっと死なない。大丈夫。


 そして、マオのセンスは結婚しても何処か【喪女】のまま。

 強い勝負下着という、常人には理解しがたい謎の概念を爆誕させる。


 強ければいいという発想で、【くま】より強い物を求めて【ドラゴン】に行き着く。

 組み合わせるトップスを作らなかったいうことは、アレ1枚で【完成】らしい。

 地球を3周して全てを背負う覚悟を決めたゴウを、そんなイタタな姿で誘惑したら、泣くまでツッコまれるに違いない。



 ちなみに、出番の少ないあの2人の常人離れした隠し芸。


・マナ(田心姫(タゴリヒメ)):【宝探し】

 欲しいと思ったものを探し出す力。

 その気になれば【沈没船】や【埋蔵金】を探し出すこともできる程のものであるが、本人は絶版になった【トンデモ本】の蒐集しゅうしゅうに活用。

 ミスや不具合や間違いの発見にも応用できるので、経理やプログラミングに高い適性があり、事務員として最強の人財。繁忙期には助っ人としていくつかの会社で事務員のバイトをしていた。

 探し人の居場所も特定できるため、ストーカー化されると地球上から逃げ場が無くなる超危険人物。


・ミナ(湍津姫(タギツヒメ)):【実体把握】

 視覚と無関係に周囲の物体や移動体を完全に把握する力。

 大きい物では非破壊で建屋の内部構造を図面に起こしたり、小さいものでは加工品の寸法や形状を検査したりと、大型車や重機の扱いと合わせて父の本業で重宝された。

 汎用性の高い能力であるが、実体の動きを伴わずに動作するコンピュータが苦手の為、デスクワークには不向き。近所で工事があるときは助っ人として呼び出されるとか。

 暗闇で暗視装置も測距器もナシで全部把握できる能力故に、【銃】を持たせたら【最終兵器】になってしまう超危険人物。


※ポイントクレクレ記述

 女の都合で【男女平等】が進んだのに、妊娠出産があることを理由に特別扱いを求める女の我儘がひどいと思った婚活でひどい目に遭った男が居たら、【ひどい】の証として★1評価をブチこんでもらえると、作者は、相手に命懸けを求めながらそれに報いるぐらいの漢気おとこぎ示せない弱男は、どんな時代、どんな社会でもひどい扱いを受けるよと、結婚生活より学んだ【弱男の滅殺めっさつは女の本能】という真理を説きます。


【ひどい】は最高の誉め言葉!

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