妖精息子2の49
「――ふむ。水蒸気による攻撃か。なかなかおもしろい」
そのなかに浮かぶのは当然、金長髪の美丈夫だ。
「たしかに、余が素手であったならば通用しえたかもしれぬな。たしかに電磁場だけで爆発の衝撃を防ぐのはむずかしい……が、今の余には『これ』がある」
手にあるのは鋼線……コイルだ。
「この四角い塔には、多くの鉄筋が含まれている。それを引き寄せ、余の身を守る壁としたのよ」
足元の校舎建材がごっそり引き剥がされていた。
「そもそも余が支配権を持つ力……コチラのことばで言う『電気』は、各王子が持つ特性の中でも特にすぐれたものだ」
鼻高く
「操作の応用範囲も多い。地の王子が支配権を持つ『重力』などと比べても、使いやすさで優位だ。おまえたちコチラ生まれが持つ卑小なそれとは、比べるまでもない」
息もたえだえな様子のぷーすけを
「水の高温化に力を使い果たしたか、おろかものめ。コチラ生まれの王子のうちでも、おまえの『火』なる特性は興味ぶかかった。余の能力に似ているように思えたのでな。が、所詮その程度か。
物質の温度操作というからには、分子の振動運動に関わる権限であろうが、その分子まわりをとびかう電子の支配権を余に抑えられては手が出まい。分子の振動など、立ちどころに押えこめられる」
あざけると
「それと貴様」
オンディーのほうを見ると、ふたたび電撃をふるう。
水の壁をつくって守る水の精。イオンをまったく含まない純水は、電気を通さないと思えたが……
強く長く続く電撃に水壁は熱せられ、しまいにはぶくぶくと音を立て
「――クッ!」
はげしい電気ショックに耐えきれず、水妖は吹き飛ばされる。
「オンディー!」
子に駆け寄る大田原教諭らを、見下して
「ふん。純水の壁を用意したぐらいで、余の電撃を防ぎきることができると思ったか、あさはかな。いかに純粋な水分子をそろえたとて、余が本気になって電圧を高めれば、分子の電離・分解などいくらでもおこなえる。水と火、二体ぐらいが手を組んだところで余にとってはなんら脅威にはならん」
そう言うと、立ちこめる水蒸気を見上げた雷の王子は
「そうだ……せっかくだから、おまえたちに似合いの死を迎えさせてやろう」
顔を笑み曲げると、羽を広げて空中に浮かび
「おまえたちのおろかさは、多大な水蒸気を生じさせたことにもあらわれている。そんなことをすれば、これが出現するのは自明だ」
その頭上高く立ち上がるのは、巨大な積乱雲だった。
ゴロゴロと、放電にともなう音がする。




